息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

タイガーと呼ばれた子

2012-10-04 10:46:31 | 著者名 は行
トリイ・L・ヘイデン  著

前作『シーラという子』から7年。
トリイは教職を離れセラピストとして仕事をしている。
長い行方不明の期間を超えてようやく出会ったシーラは14歳になっていた。

宝物のようだった過去の時間をシーラは全く覚えていないと言う。
ショックを受けたトリイだが、彼女との関係を取り戻したいと考え、
夏休み中に自分が働くクリニックで開催するサマー・プログラムで
手伝ってもらうことを提案する。

少しずつ幼い頃のことを思い出したシーラ。
「あんたのおかげで、あたしの人生はよけい悪くなったんだよ」という
言葉をトリイにぶつける。
何も知らずにどん底にいた少女に、学ぶこと、読書、愛されることを教え、
そして学年が終わると去っていったトリイ。
確かに学校に通うところまで生活は改善したが、その後父親が逮捕され、
シーラは10もの里親のもとを転々とする。さらに悪いことにはそこで
性的虐待が行われた。
一度手にした幸せを失うことは、知らなかったときの何倍も辛い。
シーラは記憶を薄れされることで、生き延びてきたのだろう。
そして、彼女は実の母に捨てられた事実を、トリイに去られた事実と
混乱させていた。

人並みはずれて優秀で、容姿にも恵まれているシーラ。
それなのに、それを活かす場所は与えられず、今は髪をオレンジに染めて
パンクファッションで威嚇している。

ただ生きていくだけのために、たった14歳の少女が歩いてきた道の過酷さ。

トリイは悩む。そして奪ったものよりさらに多くを与えることを選び、
彼女を助けようとする。
シーラとの関係が築かれていく過程は困難で感動的だ。
シーラは成長した。彼女はもはや手を差し伸べられるだけの幼い子ども
ではない。情緒障害児に寄り添いサポートする力を得た。

またしても父親の逮捕から養護施設を転々とすることになったシーラ。
ようやく彼女と再会できたトリイは、彼女の将来も考え始める。
奨学金のこと、大学で学べること、シーラの頭脳を生かすための
さまざまな方法を提案するトリイ。
しかし彼女はハンバーガーショップで働くことを選んだ。

これはまさしくシーラがトリイという母役から巣立った瞬間だった。
もったいない、もっといい道があったのでは、というのは大人の論理。
この旅立ちは素晴しい価値があるものなのだ。

のちにシーラは支店の店長になり、地域最年少のフランチャイズオーナーに
決定したと書かれている。
貧困のどん底で育ち、最低限のライフラインすらない状況から、
我が身をやしない、成功するところへ進んだのだ。

シーラの母は14歳で彼女を産んだ。著者は母が15歳の時の子であるという。
未熟な親から始まった苦悩の連鎖。
しかし彼女たちはそこから抜け出し、幸せを勝ち取ったのだ。

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