息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

困ってるひと

2012-10-24 10:01:32 | 著者名 あ行
大野更紗 著

本当に困っているのだ。それもはんぱなく。
しかも怖しいことに現在進行形。もちろん悪化方向へである。

のどかな田舎町で育った優等生が一念発起して上智大学へ進学。
勉学に励むうちにミャンマー(ビルマ)支援というテーマを見つける。
文字通り猪突猛進、国境の難民キャンプへ通い活動する日々。
ポジティブで過酷な環境だってへっちゃらで前向きで努力家。
世の中を変えたい、変えるつもりでいたのに。
希望に満ちて大学院進学。一時休学してタイへと旅立ってみたら。

突然の難病が彼女をおそう。
病名がはっきりするまで実に9ヶ月間ものたらい回し。
わかったのは自己免疫に関わる「筋膜炎脂肪織炎症候群」「皮膚筋炎」。
でもこれって難病なのだ。
わかったからといって治療法はわからない。どうしていいかわからない。
なのに嵐のように襲いかかる劇的な症状の数々。
とにかく想像を絶する。

そしてもっと想像を絶するのが、手続き難民。
100m歩くのも命懸けの病人が、あの書類とこの証明を揃えて手数料を払って
自ら手続きする、という過程を経なければなにひとつ制度を利用できない。
彼女は東京一人暮らしだった。両親ははるか東北の不便な地にいる。
ある時期まで友人たちに甘えまくったという。そして失ったものも多かった。
これは切ない。
ちょっとした買い物や手続き、できることなら経済的なサポートや相談も、
カバーできるような制度があったらどんなにいいだろう。
小さなことなら学生ボランティアでも可能ではないのか。
そんなものが一切この日本には存在しないと知ったのは驚異だった。

暮らす、ということには些細で膨大なたくさんのことがくっついている。
それは普段は何も考えることなくクリアできるようなことなのだが、
こんなアクシデントが突然ふりかかったとき、どうすればいいのか。
おまけに生活費のことまで考えるとなると、大げさでも言葉のあやでもなく
死んだほうが楽というものだ。

彼女は賢く強い。
自力でなんとかしなければ、と腹をくくり、彼女は退院して一人暮らしを敢行する。

読んでいて苦しくなる、辛くなることばかり。
しかも何ら解決することなく終わるのに。
それでも1000の言葉で励まされるよりも支えられる。
世界中のみんなと一緒に生きようという強い思いが伝わってくる。


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