息をするように本を読む

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ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

最後の記憶

2012-06-26 10:51:22 | 著者名 あ行
綾辻行人 著

主人公・森吾の母は若年性のある痴呆症で記憶を失っていく。
彼女はひたすらバッタを恐れ、雷におびえる。
チキチキチキ……
耳に残る音。
森吾はその謎を探ろうとする。

この作品は著者が実験的に書いたものであるという。
なるほど、他の作品に比べてちょっと毛色が違う気がする。
謎解きには物足りずホラーとも違うような。

ゆがんだ時間とあるはずのないものと。
覚えておきたいものが次々と消え去る中、残るのがすさまじい恐怖
というのは、なんともつらいことだ。
そういう意味でこの架空の痴呆症も設定も怖さを増長している。
もしかして遺伝性なのではないか?と恐れる主人公の姿にも
わからないものへの冷たい恐怖がにじみ出る。

謎は意外にあっさりで、ええっ?という感じ。
がっかりしたという人はこれが原因だな。
壮大な物語を期待すればするほど、それでいいのかと思うだろう。
しかし、これはこれと思うとよく組み立てられた物語だ。

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