哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

死刑

2012-02-20 22:50:50 | 時事
元少年の死刑確定が今日のトップニュースだ。このニュースの話題のされかたは、これまでの死刑判決とはかなり異なる。なぜなら、これまでの慣例的な取扱いでは死刑とはならない可能性が高いものについて、無期懲役を差し戻してまでして死刑になったからだ。テレビメディアの報道も、被告人の被虐待などの経歴を伝え、暗に疑問を投げかけているようだ。


池田晶子さんはかつて死刑囚と往復書簡を行い、雑誌に連載した。その死刑囚は、確か池田晶子さん逝去の後に処刑されたはずだ。その死刑囚は、まだ死刑判決が出る前だったようだが、池田晶子さんの書物を読んで、「何かがわかった」らしい。それで池田晶子さんに手紙を書いたそうだ。


「続けて、原典『ソクラテスの弁明』を読み、「はっきりとわかった」。「ただ生きることではなく、善く生きることなのだ」。だから、判決が死刑であっても控訴せず、このまま善く生きることで死んでゆけると、書いてある。
 これに対して、私は異を唱えたのである。もしも本当に善く生きる気があるのであれば、自分が知り得た真理と幸福を、他人にも知らしめるべきではないだろうか。したがって、「控訴せよ」。」(『死と生きる 獄中哲学対話』「あとがき」より)


死刑囚が、まさに死を間近に感じたときに「善く生きる」ということを考えることができたという、この逆説は感慨深い。今回の元少年は、あるいは今執行を待っていてしかも当分執行されることがないことがわかっている(刑務所内ではわからないか?)多くの死刑囚は、果たして残った時間をどう生きるべきと考えているだろうか。

ただあえて敷衍すれば、生きとし生けるものはすべていずれ死ぬのだから、我々も執行を待っていていつ執行されるかわからない死刑囚と同じようなものである。そのように考えれば、死刑囚として残る時間をどう生きるかということも、決して他人事ではないかもしれない。