哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

スピノザ(『人生は愉快だ』)

2009-01-19 05:27:27 | 哲学
 確か経済学者の宇沢弘文氏は、最後はスピノザを研究したい、とどこかで書いていた気がする。

 ものの本によると、アムステルダムの裕福なユダヤ人家庭に生まれたスピノザは、若い頃にユダヤ教会から破門されて全てを失い、そこから人間の幸福というものを考えていったという。

 池田晶子さんの早い時期の著作『考える人』でも、スピノザをテーマとした文章がある。汎神論者スピノザはデカルトに真っ向反対して、人間の自由意志を微塵も認めないという。人がコギトを徹底すれば何かしら非-人間な無機的な宇宙の気配を帯びる。そこに救済の観念はない。神即自然、一方で我即自然、ならば神=我ということではないか。


 『人生は愉快だ』では、徹底的に合理的に考えたスピノザに、仏陀を重ね合わせている。極端にいえば、宇宙はただある、それだけではないか。永遠で必然の宇宙的秩序のなかで、有限の個々の事物は、無限の存在の一態様に過ぎない。大海に生起する一種の波浪のようなものだと。


 池田さんは『考える人』でも『人生は愉快だ』でも、スピノザの項の最後には小林秀雄氏風に、『エチカ』の最後の言葉「とにかくすぐれたものは、すべて希有であるとともに困難である」を持ってきている。認識と人生が一致していた人にのみ可能な言葉という。こういう人には、ものが見えすぎるほどに明瞭なのであろう。