哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

近藤道生氏「私の履歴書」

2009-04-17 07:56:57 | 時事
 今月日経新聞に掲載されている掲題連載は、月半ばまで太平洋戦争の話であった。しかも日本軍隊内部の理不尽な話が多くあり、著者としては強い無念の思いで書いていたのだろう。

 例えば、著者と親しかったという学徒出陣で哲学に造詣が深かった京大生が、上官からスパイ容疑のインド人夫婦の処刑を命じられたが、それはその妻と上官との噂があった中での命令であった。しかし命令は絶対であり、従わなければならなかったが、戦後この件の戦争犯罪人としてその京大生は絞首刑になったという。

 似た話は多くあるのだろう。確か「アンボンで何が裁かれたか」という映画でも同じテーマが扱われていた。

 実際に自分が上の京大生の立場だったとして、命令を拒否しえたか、というとどうであろう。その時代の雰囲気までは今想起できないが、やはりかなり困難であろうと思う。しかし戦時中に、軍隊ではないが日本国政府の命令に逆らった人物がいる。6千人のビザの杉原千畝氏である。ユダヤ人が大使館に押しかけた時に、本国にビザを発給してよいか打診したが不可の返事、しかし杉原氏はビザを発給した。そのときの胸のうちは常人には計り知れない。

 話は変わるが、警察内部の不正を現職警察官ながら告発し、その後不当な処遇を受けたとして裁判に勝った仙波敏郎氏が定年退官となり、このたび本が出版された。現代においても、組織に抗うのは簡単とはいえないなか、巨大組織に一人で闘った人物がいることをしっかり覚えておきたい。