哲学とワインと・・ 池田晶子ファンのブログ

文筆家池田晶子さんの連載もの等を中心に、興味あるテーマについて、まじめに書いていきたいと思います。

言葉によって考えるのではない

2010-12-25 11:51:15 | 哲学
 前回挙げた本(『ことばと思考』)を書店で手に取った理由は、表題のような池田晶子さんの謂いが念頭にあったからである。もともと池田さんのこの言葉に初めて触れたとき、あまりよく理解できなかった。「言葉は命」と言っている池田さんが「言葉によって考えるのではない」というのは、一瞬矛盾に感じたからだ。それまでは普通に、言葉によって考えるものと思い込んでいた。



「以前から述べているように、考えるのは理性によって考えるのであって、決して言葉によって考えるのではない。理性によって考えたその考えを、表現する際に言葉を用いるのであって、考えているその現場には言葉は存在していない。」(『ロゴスに訊け』「哲学の真髄は逆説にあり」より)



 考えるその現場に言葉が存在しないというその状況は、例えば、池田さんの思考の過程を記録した『リマーク』を見ると少しわかる。本だから書かれているのは言葉であるが、その意味するところの輪郭があいまいだったり、言葉では表現できないところを図で書かれてあったりして、言葉によらない思考の片鱗が見られる。

 言葉によって思考しているわけではないとしても、認知した内容や思考した結果を表現する際には言葉は必要である。認知は入口であり、表現は出口であるとすると、母国語の影響を受けるのは、結局入口と出口の問題で、思考自体は言語の影響は受けないということになるのであろう。