風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

中国の国柄

2015-12-25 01:35:54 | 日々の生活
 韓国のことに触れたから、中国についても思いつきで書いてみる。
 産経新聞・中国総局(北京)特派員の矢板明夫氏が「ザーサイ指数」なるものを紹介しており、大変面白く拝見した。中国の各地方政府が発表する経済数値には捏造されたものが多く、公式データだけでは正しい経済状況を判断できないため、ザーサイ(搾菜)の各地の消費量から、その地域の出稼ぎ労働者を推測し、景気状況を判断するというのである。実に大陸的な大らかさと言うべきか、中国的ないい加減さと言うべきか、とにかく微笑ましい話である。これぞ中国の面目と言うべきであろう。

(引用)
 いまの中国には計2億6000万人の農民工と呼ばれる出稼ぎ労働者がおり、そのほとんどは建設業か製造業に従事しているといわれている。仕事があれば同じ地域に出稼ぎ労働者が一気に集中するが、仕事が減ればすぐに別の場所に移る。単身赴任の男性が多い農民工が最も好む食べ物の一つがザーサイだ。
 各地のスーパーで70グラムの袋入りのザーサイは約1元(約19円)で売られている。一袋があれば、昼と夜の2回のご飯のおかずにもなるので、収入の少ない農民工にとって有り難い存在となっている。ある都市でのザーサイの消費量が急増すれば、その地域に農民工が殺到し、景気が良くなっていることを意味する。
(引用おわり)

 景気を判断する指数としては、津上工作室の津上俊哉氏や富士通総研の柯隆氏をはじめとして、つい半年くらい前までは「李克強指数」を引用される方が多かったが、少なくともお二人はごく最近になって転向され、否定し始めておられるようだ。「李克強指数」は、現首相の李克強氏が遼寧省トップだった2007年に、アメリカの大使に対して、同省のGDP成長率など信頼できないので、経済状況を見るために、省内の「鉄道貨物輸送量」、「銀行融資残高」、「電力消費」の推移を見ていると語ったことがエコノミスト誌に掲載され、広まったものだ。鉄道輸送貨物の55%は石炭で、これに石油や鉄鉱石など他の鉱産物を加えると、鉄道輸送貨物の74%が鉱産物で占められるため、鉱業の動向を捉えるのであれば意味があり、当時、石炭が主力産業の遼寧省の景気を見るためであれば分からないでもないが、今、中国経済全体を見ようとするには無理がある。同じような意味合いで、銀行融資残高も、中国の銀行はそもそも国有セクターばかりに融資し、民間企業は余り相手にしないことから、経済全体を見るには無理がある。電力消費も、最近の中国において電力を大量に消費する第二次産業の割合が低下し、第三次産業の割合が上昇する産業構造の転換の中では、経済全体を見るにはやはり無理がある。
 先の矢板氏コラムは、かれこれ50年前、当時の周恩来首相も、各地から報告される経済指標に関する数字を信用せず、独自の方法でチェックしていたという話を引用されている。当時の北京には水洗トイレがなく、市内の全てのトイレから回収される糞尿は、馬車やトラックで肥料として農村部に運び出されるため、周首相(当時)は毎日、必ず市外に出る糞尿の量をチェックし、その数字から北京市民が十分に食えているかどうかを判断していたというのだ。そして、「ザーサイ指数」が重要視されている今の中国は、50年前と余り進歩していないようだと皮肉たっぷりに結んでおられる。
 日下公人さんは、およそ世界の国は三階建てか四階建てで、古代・中世・近代・現代が積み上がっているが、中にはどれかが欠落した国があると持論を展開される中で、中国は古代と中世はあるが近代がない、しかも中世があったと言っても古代が長く、古代の価値観から突然、西欧列強の侵略を受けて、近代の価値観の洗礼を浴びたが、毛沢東が全てを壊してしまった、残ったのは古代的な価値観だけで、小平が中世の商売人を復活させ、露骨な拝金主義になっていると、実にユニークな分析をされている。中国のネット産業は意外に進んでいるが、人々の行動様式は古代かせいぜい中世のままなのかも知れないと、ふと思った。実に奥深い国だ。
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