風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

アメリカの暴動を嗤う中国

2020-06-04 23:42:00 | 時事放談
 アメリカ・ミネアポリスで黒人男性が白人警察官による暴行で死に至り、その事件に対する抗議の声が、アメリカ内では暴動に発展し、世界にも影響が広がっている。With コロナのストレスで助長されている側面があるとは言え、捨て置けない話だ。だからと言って、単純な人種差別問題だけだと言い切れるわけではなさそうだ。
 アメリカの人種差別が構造的な問題であるのは確かだ。黒人による暴動だけでなく、ごく日常の風景として、私がアメリカに滞在していた1990年代後半でも、西海岸ではアジア人が多く、幸いにも不快な思いをしたことはなかったが、東海岸、しかもボストンという由緒ある古い街では、私たちが住んでいた郊外であっても、公園で遊んでいた家内と息子に対して嫌悪感を示して近づこうとしない白人親子がいたりして、不快な思いをしたことは一度ではない。
 他方、銃社会のアメリカでは、駐在員の心得として、仮にHold-upを要求されたとき、財布を出そうとして、胸ポケットなりお尻ポケットなりに無造作に手を突っ込もうものなら、銃を探ろうとしていると誤認されて撃たれる恐れがあるから、先ずは指で財布の在り処を示すにとどめるべし、などと説教されたものだ。実際に撃たれた日本人がいたものだから、冗談では済まなかった(笑)。海外旅行者でも、そのような話を聞いたことがあるのではないだろうか。更に駐在していた頃の話で、夕食に向かう途中、出張者のレンタカーが警察に呼び止められたため、私も事情説明を助けようと車を停めて近づこうとしたところ、その警察官に銃を向けられて、思わず立ち止まり、Hold-upしたことがある。
 すなわち、アメリカの警察官にとって、職務は日本以上に命懸けである現実にも目を向ける必要があるように思う。黒人男性に対する行き過ぎた暴力があったとすれば許されるものではないが、銃社会の警察官が置かれた立場には十分に同情する余地があるのもまた事実なのだ。
 さらに今回の暴動に関して、日本のメディアは、デモが暴徒化したと紋切り型で報じていたが、私は暴徒がデモに乗じて暴れただけではないかと思っていた。ところがCNNにしてもNYタイムズやワシントン・ポストにしても、リベラルで反トランプの立場なものだから、トランプ大統領の制圧に対して批判的で、暴徒がいるなどの実相は伝えられず、これらの報道を拾うばかりの日本のメディアからは、当然のことながら、暴徒がいるという話は聞こえて来ず、デモが暴徒化したとばかり報じられる仕儀となる。
 ところが、今朝の日経には珍しく「米デモ、過激派が煽動か」とのタイトルが国際面に踊っていた。極左にせよ極右にせよ、過激派団体がSNSで暴力を煽動したり、州を跨いで都市部で組織的に略奪を行ったりする手口が分かってきたということである。
 およそデモには、本来の目的のほか、政治利用しようとする者や便乗して利益を得ようとする者がいるものだ。韓国の慰安婦問題では、旧・挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)、新・正義連(日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯)の幹部が、慰安婦問題を政治問題化し利用してきた実態が、かつての慰安婦の方からの告発で、明らかにされつつある。沖縄基地問題では、わざわざ遠征する活動家や市民運動家の存在がかねて指摘されて来た(沖縄の問題なのに、大阪弁だったりして)。しかも沖縄の主要メディア2社はリベラルで、アメリカのデモ同様、その実相が報じられることは期待できそうにないという、似たような状況にある。
 デモには諸相があり得ること、利用しようとする者もあれば便乗しようとする者もあり、暴徒化するのを単に嫌悪することなく、またそのためにデモによる正当な要求を貶めることなく、丁寧に解きほぐしていく必要がある。その意味でも、中国の官製メディアがアメリカの暴動を大々的に報じ(香港の昨年のデモ「大乱」のことは報じないくせに)、アメリカが香港のデモを支持しながら国内のデモを批判するのをダブルスタンダード(二重基準)と決めつけ、今般の香港への国家安全法導入を正当化するのに利用しようとしているのは噴飯ものである。ロイターですら「中国非難する米国の偽善、抗議デモが超大国失墜にとどめ」とタイトルし、アメリカのデモへの対処と香港のデモへの対処を同列に論じているが、デモを利用したり便乗したりするような多様な存在はとても認められない、ある意味でクリーンとも言える抑圧された中国社会と、移民が多く多様な価値観や貧富の差が存在し、過激派すらも跋扈する自由なアメリカ社会との違いを一緒にするべきではないだろう。

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