風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

コロナ禍疲れ

2020-03-12 00:02:16 | 時事放談
 東日本大震災から早くも9年になるとは感慨深い。復興はまだ道半ばで、復興五輪のどこが復興だという地元の方のお気持ちには配慮しなければならないし、安倍さんには五輪誘致のために利用した側面はあっただろうが、公平を期するなら、他方で何としてでも復興を、との思いで十字架を背負う意図もあったであろう側面にも目を向けるべきだと思う。
 それはともかく、あのとき、「共感疲労」なる症状が話題になった。被災に遭われた方々だけでなく、被災地に入る医療関係者やボランティアなどの間で、相手の境遇に心を寄せて考え過ぎるあまり、自分のエネルギーがすり減ってしまう状態である。そして今は、新型コロナウイルスの感染拡大に関して、デマを含む情報の洪水に日本中が振り回されているようなところがあって、「コロナ疲れ」あるいは「コロナ鬱」という、気分の落ち込みや意欲の減退を訴える声があがっているらしい。専門家は「抑うつが高まると、不眠、過眠や食欲不振、過食などの身体症状が伴ったり、酷くなるとイライラして落ち着かなくなったり、自分を責める気持ちが高まることもある」という。今は誰もが当事者であり、行動を自粛しながら多かれ少なかれ先が見えない不安を抱えている。そんな中、大規模イベント自粛をもう10日程度継続するよう要請があったのは、予想されていたこととはいえ、小出しにされたようで、良い気分ではない。
 不安になってばかりいても仕方ないので、第三者的に観察してみる。こうした特殊な状況下では、反応や対処の仕方にここぞとばかりにそれぞれの個性が如実に表れるものだ。
 先ずは中国である。
 新しい感染症の命名は、WHOが2015年に発表したガイドラインによれば、差別や偏見を避けるため特定の地名などを結びつけないことと定められており、今回もそうなった。ところが、対応が迅速で的確だと世界的に評価が高い台湾では、今もなお「武漢肺炎」という言葉が使われている。中国にとっては、反中感情が煽られるようで面白くなかろうが、漢字文化圏にとっては分かり易いし、台湾の気分にも合うことだろう。数日前にはアメリカでも、新型コロナウイルスの流行への対応に関し中国政府が収めた成功について尋ねられたポンペオ米国務長官は、「あなたが中国共産党に賛辞を送るのは嬉しいが、こうした事態を惹き起こしたのは、武漢コロナウイルスだということを忘れてはいけない」と述べて、中国の神経を逆撫でした(笑)。
 他方、こうした命名の由来もあり、また韓国やイタリアやイランや日本をはじめ、遅れて感染拡大にあたふたする国々もあって、中国はあらぬことか自信を持ち始めているばかりではなく、新型コロナウイルスは中国で発生したとは言えないとまで主張し始めているのは、プロパガンダの中国の本領発揮である。3月1日付の環球時報は、新型コロナウイルスの発生地が不確実なのに(中国に)汚名を着せるべきなのかと疑義を呈する記事を掲載したらしいし、その前日には、発源地が中国ではなく(インフルエンザ患者が増えている)米国である可能性すら提起したらしく、厚かましいにもほどがある。
 そんな中国であるから、中国人留学生の目に、日本は緊張感がなさ過ぎると映るようで、日本の緩さを怖がる人もいるらしいし、中国のメディアでは「日本の“仏系”防疫」などと揶揄されているらしい。5年前に雑誌『non・no』が究極の草食系男子として「仏男子」なるワードを使ったことに因むものだという。こうして今回ほど、一党独裁の強権発動によって初動の遅れを挽回するべくなりふり構わず感染拡大を抑え込みにかかった全体主義国・中国に対し、非常事態に対処する法令がないこともあって私権の制限には慎重で、経済動向や東京オリパラに配慮しつつ、後手後手になりながらも国民の行動自粛を「指示」できずに飽くまで任意の「要請」とし、国民はその空気を察して粛々と政府「要請」に従った民主主義国・日本の動きが対照的に見えたことはなかった。
 そんな日本でも、4月に予定されていた習近平国家主席の国賓での訪日が延期と決まるや、重石がとれたように中国発の入国者に対する日本入国制限措置を発表したのは、遅きに失し、やはり中国に忖度していたんじゃないかと思わせたが、正確には忖度ではなく、誘った日本から断るわけにはいかない外交儀礼に忠実だっただけなのだろう。もっともこの非常事態に際してノーマルなマインド・セットでいたことは責められるべきだと思う。
 次は韓国である。
 日本が韓国からの入国制限を強化したことを「不当な措置」と決めつけ、「非友好的なだけでなく非科学的で、速やかな撤回を強く求める」と、韓国外相が在韓日本国大使を呼んで直接抗議し、相互主義の美名のもとに相応の措置をとって報復した。毎度の日韓問題の政治問題化である。既に100ヶ国以上から似たような仕打ちを受けていた腹いせを日本にぶつけたもので、見るに見かねたWHOから、政治的な争いをするのではなく人命救助に集中するべきだと注意される始末だ。
 次にアメリカ。
 カリフォルニア沖で乗員・乗客に新型コロナウイルスの感染症状が出ていることが明らかになったクルーズ船「グランド・プリンセス」(あの「ダイヤモンド・プリンセス」の姉妹船)への対応を巡って、当初、国土安全保障省の高官は、上院委員会の公聴会で、全ての乗員を隔離収容する施設がないことを明らかにした。「ダイヤモンド・プリンセス」のケースでは船内の感染拡大を防げず、お粗末だと散々こき下ろしたのはアメリカのメディアだったが、言わんこっちゃない。
 最後に日本。
 専門家会議のミッションがいまひとつはっきりしない。医学の専門家の立場から、方針策定や対外情報発信すべきと思うが、そうなっていない。それで厚労相や安倍さんが説明に立つと、対応が遅いことには後手後手だと批判され、遅まきながら小中高一斉休校を要請したことには実効性があるのかとか専門家の助言があったのかなどと疑義を呈され、実り多いものではない。本来、経済・社会情勢をも勘案し、総合的に政治判断するものだと思うが、日頃、信頼を失ってきた安倍さんには何かと世間の風当たりが強い。このご時世に安倍政権支持・不支持の分断が一段と激しくなっているように見えるのは、ちょっと嘆かわしい。PCR検査が制限されてきたことについても、国賓の迎え入れや東京オリパラと絡めて、不当に感染者数を抑えているのではないかと邪推されてきた。そんな世間に充満した不満を察したのか孫正義さんがPCR検査を100万人に提供したいという内容を呟くと、医療態勢が整っていないことなどを理由に医療現場に混乱を招くなどと波紋を広げているそうだから、状況は徐々に理解されつつあるようだ。どうやら感染しても8割方は軽症であり、検査したところで正確性に欠け、治療しようにも今のところ特効薬もワクチンもなく、従って重症化しない限りは検査に殺到せずに先ずは自宅療養するのが現実解であり、医療のリソースは重症者に振り向ける、のが良いようだ。
 実際に落ち着くには至っていないが、専門家会議が「一定程度、持ちこたえている」と言うように、昨年までのインフルなどと比べれば、かなり抑制されているように見える。まだ緊張を緩めるわけには行かないが、くれぐれも「コロナ疲れ」することがないように・・・

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