風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

新型コロナウィルス

2020-02-07 00:17:57 | 時事放談
 日本では、新型コロナウィルス対策のおかげなのか、在来型インフルエンザの患者数は例年になく低調に推移しているらしい。新型に対する日本政府の対応は、どう贔屓目に見ても他国に比べて生ぬるい感じがするが、新型も在来型も含めて、国民はもともとマスク着用に慣れているし、潔癖症だし、街は概ね清潔だし、一致団結していると言うべきか、うつさないでねとお互いに牽制し合っているのか、現場レベルでは整然と対処しているように見える。権威主義国家・中国による隠蔽疑惑は拭えないが、新型の重症度は在来型とそれほど変わらないのではないかという観測も出てきた。それもあってか、緊急事態条項を盛り込む憲法改正といった本質的な議論は今なお全くと言ってよいほど盛り上がらない。
 アメリカやイギリスをはじめとする旧・大英帝国圏のファイブ・アイズは、リスク管理は最悪を想定するという基本に沿って粛々と断固たる対応をとっており、さすがだ。それに引き換えお隣の韓国では、大統領府ホームページに設けられた国民請願掲示板に、中国人の出入り禁止を求める請願が既に67万も寄せられたそうで、地続きの恐怖という歴史的な記憶と、激しやすい国民性から、分からなくはないが、文在寅政権と与党は中国を忖度し、あらぬことか日本の原発の汚染水放出を連日のように問題視している始末だ。この期に及んで現実感覚がなく、なお日本を政治利用することには呆れてしまう。さすがに保守系の朝鮮日報は社説で次のように批判した: 「金正恩氏の総選挙前の訪韓が水の泡と消えると、今度は習近平主席の訪韓にしがみついている。そのため、中国から来る(外国人の)入国制限を拡大すべきだという専門家らの要求を『政治的』と非難する。国民の健康より(選挙で)票を得ることを優先している人たちは果たして誰なのか」(李正宣氏」コラムによる)。
 問題はやはり中国だ。以前のブログでは、国内における一党独裁の強権とは対照的に統治の脆弱性から被害が拡大するリスクと、権威主義的性格による情報隠蔽や対外的なシャープパワー発動によりWHO公表を含め情報空間が歪められ適切な対策を誤らせるリスクについて触れた。話は脱線するが、実は最近、知り合いの元・自衛隊幹部から、(安全保障上の)中国リスクってなんや? と真顔で聞かれた(その方は関西出身ではないが、くだけた調子を表現するために敢えて関西弁にしてみた 笑)。世間は皆、分かっているようで分かってないんとちゃうか、てな調子である。実際にある共通の知人にこの疑問をぶつけると、はたと困って、中国と対立するアメリカに右に倣えしているのかなあと苦し紛れに呟くしかなかった。元・自衛隊幹部は軍事的脅威を意識しているはずなので、その点から検証してみる。中国は多数の中距離ミサイルを日本にも向けているが、実際にそれを使うことは俄かに想像できない。海洋進出が盛んで、南シナ海を軍事基地化しつつあるが、だからと言って中国の艦艇が他国船舶の航行を邪魔するとか通行税をとるとか空母打撃群で威嚇するとかいった実害は出ていない。東シナ海の尖閣海域では既成事実を積み重ねることに精を出しているが、今のところ強奪する覚悟はなさそうだ。せいぜい沖縄独立を煽ったり、台湾を陥れたりする可能性はあるが、じゃあそれで第一列島線が破られて、中国の艦艇が太平洋に自由に出ていくことに、どんなリスクがあるのだろうか。中国の空母打撃群が練度をあげるには、恐らくまだ20年から30年はかかるだろう。いや、そもそも軍事費が増大していることが脅威だと言いたい人がいるかも知れないが、そんな抗議を見越したかのように、過去20年以上、対GDP比率は増えておらず、見事に一定である(SIPRIなどの統計によると)。一人っ子政策をやめたとは言え、人民解放軍の若者たちを損耗するとすれば、社会問題を惹き起こす(端的に、老後の面倒を見てもらおうと思っている親御さんたちが黙っていない)。結局、今回の新型コロナウィルスへの対応に見られるように、内政の脆弱性からパンデミックや環境問題ひいてはグローバルなサプライチェーンが分断されて世界経済にネガティブな影響を与えかねない不安定要因か、あるいは共産党の統治を護るがための社会監視やシャープパワーによる言論空間の歪みによる不自由や窮屈さくらいではないだろうか。香港の若者たちを引き合いに出すまでもなく、それはそれでリスクであり大いなる憂鬱であるが・・・。いや、もしかしたら14億の民が5Gひいては全ての技術を独占し、経済的な繁栄まで独占するかも知れない・・・
 閑話休題。習近平指導部はパンデミック阻止に向け強権的な手法を強め、やおら病院を建設したのは異様だったし、指導部への批判の矛先を逸らすために、公表されているだけで400人以上の地方政府幹部らを処分したのも、異形の大国の面目である(習近平国家主席の足を引っ張るために意図的にコロナウィルスをばら撒いたという陰謀説があるが、権力闘争の色彩を帯びてくると、図星だったのかと思いたくなる 笑)。習近平国家主席としては、最近、アメリカが仕掛けているような、技術開発や生産のサプライチェーンにおける中国外し(デカップリング)あるいは中国離れが、アメリカによらずして、このパンデミック・リスクによって起こることを警戒しているのかも知れないが、この異様な対応によって異形の大国ぶりが際立つことに、果たして意識は働かないのだろうか・・・
 そんな中、日本の姉妹都市などからの支援に対して、中国で感謝の声が上がっているのを聞くと、ほっとする。日本も勿論パンデミックを警戒しなければならないが、ガバナンスの弱い国々への影響がなお心配だ。

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