風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

現状変更と現状維持

2020-02-08 01:17:49 | 時事放談
 昨晩、ああは言ったものの、ずっと心に引っかかっていて、一晩、よく眠った上で(笑)、訂正の意味を込めて、中国の何が脅威かと言って、パワー・バランスの観点からすれば「現状変更」そのものが脅威なのだろうと、あらためて言いたい。
 例えば中国にしてもロシアにしても、日本や韓国がミサイル防衛システムを導入すると言うだけで過敏に反応し、いちいち文句をつけるのは、自らの攻撃態勢が探知されるという懸念もさることながら、そもそも相手(日本や韓国)が攻撃力じゃなく防衛力を増すだけで、相手の加点にはならなくても、自ら(中国やロシア)の攻撃力が減殺されるという意味で自らの減点になり、相対的に相手が軍拡するのと同等の効果がある。従い、過去20年以上、最低6%以上の経済成長を遂げてきた(それに合わせて軍事力を強化して来た)中国は、それだけで(すなわち軍事費の対GDP比率は変わらなくても、絶対額が増えている限りにおいて)脅威には違いないのだ。その中国が、南シナ海で「現状変更」中なのは周知の通りだし、東シナ海で海域侵入を既成事実化しつつあると言う意味では「現状変更」を企図しているのは間違いないし、一帯一路で周辺環境を「現状変更」しつつあるのも、もはや疑いようがない。これこそがそもそも「パワーが台頭する」ことの意味なのだろうと、恥ずかしながら再認識した次第である。中央アジアやアフリカや太平洋島嶼国や中南米には弱小国が多く、中国がその経済力によって簡単に影響力を行使し得る国々であるが、国連総会では一国一票の発言権を持つ「主権国家」であり、それを援助によるにせよ恐喝によるにせよ債務の罠によるにせよ、味方につける意味は決して小さくはない。
 「現状変更」しないこと、すなわち「現状維持=status quo」することに価値があるという、何でもないことの重要性に気がつくと、たとえば北朝鮮を巡って米・中・露が対峙する朝鮮半島が現状のまま凍結されてきたこと、今なおそれに変わりがないこと、今後どうするかまともな議論がなされていそうにないことのもつ意味がよく分かる。また、核不拡散(NPT)体制を巡っても、持てる者(P5)の地位が固定化するという大きな欠点はあるものの、持てる者の義務として削減努力も謳われており、現状で凍結する、これ以上悪化させない、ということのもつ意味がよく分かる。
 そんな不安定な東アジア環境にあって、日本は国のありようとして基本的にソフトパワーをこそ強化し、世界を味方につけるべきだと、あらためて感じた。これなら文句の言われようがない?であろう。その内実は、圧倒的な技術力と文化力である。日米同盟は、残念ながら不動産王のトランプ大統領には評価されていないようだが、有識者の間では、アメリカにもたらされる重要な価値の一つとして、技術力をもつ日本を引き留める、すなわち敵方に渡さないという隠されたコンセンサスがあり、日本人はそれを自らの価値として肝に銘じるべきだろう(が、今日のブログでは余談である)。

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