風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

ゆりこはゆりこでも・続

2017-10-22 17:42:00 | 時事放談
 折角なので、立憲民主党にも触れておきたい。昨日のブログの議論から「排除」したのは(笑)、枝野幸男氏が「私はリベラルであり、保守である」などと、政治スタンスを説明するのに独自の紛らわしい言い方をして混乱させるからだ。枝野氏やそこに集まる面々は、「保守」の小池氏から排除されたように(日本的な意味での)「リベラル=革新」と見られており、「保守」ではないが、何故そんな世間の評価に盾突いて、しかも対立する概念を取り込んで敢えて人々を煙に巻くのだろうか。二つ問題があるようだ。
 一つは、枝野氏が言う「リベラル」は、今日の日本的な意味ではなく、本来の欧米的な意味でもなく、彼独自の解釈で雑に扱われている。HUFFPOSTに掲載されたインタビューによると、「そもそも概念論として、リベラルと保守は対立概念ではない。かつての(自民党の)大平正芳さんや加藤紘一さんは『保守だけどリベラル』と言っていました。あえて言うと、私の立ち位置はその辺だと思います」と、大平さんの時代=冷戦時代の「リベラル」概念?を持ち出してくる。ではその「リベラル」をどう定義するかと問われて、「多様性を認めて、社会的な平等を一定程度の幅で確保するために、政治行政が役割を果たすという考え方です。これは、かつての自民党そのものです。だから、保守とリベラルは対立しないんですよ」などと彼独自の解釈を加えて、紛らわしい。
 もう一つ、枝野氏が言う「保守」は、同じインタビューの中で「歴史と伝統を重んじて急激な変化を求めない。積み重ねた物を大事に、ちょっとずつ世の中を良くしていく考え方ですよね」と答えているのは、まあいい。そして今の自民党は「保守」かと聞かれて、「安倍さんの自民党は保守ではないですよ。これこそ、革新ですよ。申し訳ないけど(自民党の)安倍さんも(希望の党の)小池さんも保守ではない」と言われると、またしても混乱する。枝野氏が大事にしたい「保守の伝統」を問われて、「『和を以て尊しとなす』。まさに日本の歴史と伝統といったときに、一番古い、そして一貫している日本社会の精神です。『和を以て尊し』だから、多様性を認めているんですよ。日本は数少ない多神教文明ですからね。唯一絶対の価値ではないんです。日本社会は、もともとリベラルなんです」とも答えて、分かったような分からないような話になる。ポイントは何を「保守」するか、端的にどの時代の日本を「保守」するかの違いだろうと思う。枝野氏の主要な政策主張(護憲や反・安保法制)と突き合わせて考えれば、彼が守りたい日本は、戦後70年に積み重ねられた護憲を基礎とする(今日の日本的な意味での)「リベラル」な時代のようだ。他方、安倍氏の自民党が守りたい、あるいは取り戻したい日本は、GHQ改革によって骨抜きにされ、沖縄の米軍基地をはじめとして、今なお占領統治が続くかのような戦後を克服した、自主独立で誇りある「普通の国」としての日本であろう。歴史観の違いが絡むが、「保守」政党である自民党が、現行憲法改正を唱えるという、一見、矛盾した綱領をもつのは、日本の置かれた特殊事情による。そのため枝野氏の目には、安倍政権の進む方向が戦前の軍国主義復活と映り非難の対象となるのだろう。
 枝野氏ご本人は「リアリスト」を自任されるが、先ずは理念として、それぞれの時代背景の違いを現実的に明確に捉えられておらず、環境認識に甘さがあるように思うし、次にそれに応じた現実的な政策課題についても、時代毎に難しさがあると思うが、それが彼からは感じられない。明治という帝国主義の時代背景のもとで埋没することなく欧米にキャッチアップするために欧化の涙ぐましい努力を重ねた時代(その果てに欧米との衝突の大東亜戦争があった)に比べ、戦後は米ソが対峙し核戦争の恐怖に怯える高度の緊張のもと、日本は却って戦争に巻き込まれずに平和でいられるという逆説的な状況にあり、戦後復興から高度経済成長を遂げる時期とも重なり、誰もが豊かさを実感できるいう、ある意味で日本史上まれに見る幸運な時代だった。戦争を多少なりとも経験し戦後の「民主的」教育を受けた高齢者世代にとって、それを懐かしみ大切にしたい気持ちは良く分かるし、枝野氏の訴えに一定の効果があるのも認める。しかし冷戦が終わってイデオロギーの軛を離れ、グローバリゼーションが進展するや民族主義が勃興し、お隣では中国という異なる国家観や秩序観をもつ国が経済大国のみならず政治・軍事大国としても台頭し、ポスト・モダンから逆行するような難しい時代に入った。中国共産党大会の習近平演説を聞いていると、これから今世紀半ばに向かって米中が緊張し、国際情勢は益々不安定化するのは明らかだが(中国が分裂でもしない限りは)、そこで今の憲法を堅持し一国平和主義を貫けるとするのはナイーブに過ぎるように思うし、もとより日本が軍事大国化する必要はないしその財力もないが、それだけに、力による現状変更を厭わない相手に、欧米的な自由・民主的な価値観だけで欧米及び近隣アジア諸国と連携しつつ平和的に対抗していくのはそう生易しいことではない。そんな環境のもとで日本人の安全と暮らしをどう守っていくのかという観点から、枝野氏の話を聞く限り、観念的でレッテル貼りの議論(これはかつての左翼のお家芸だ)に終始し、とてもリアリストとは思えない。
 八幡和郎氏は、立憲民主党の面々を見たある人が「菅内閣残党」だと形容された話を引用されていた。当時、菅直人首相(今は最高顧問)、枝野幸男官房長官(代表)、福山哲郎官房副長官(幹事長)、辻元清美総理補佐官(政調会長)、長妻昭厚労大臣(代表代行)・・・八幡氏は、この中の一人と福島原発への対応について話したとき、ヘリコプターで福島へ飛んで現場で問題に取り組んだことを正しかったと胸を張っていたことを思いだし、その学習能力のなさを心配されている。有権者たる日本国民はそれほど忘れっぽいことはあるまいとも思うが、どうも世論調査を見ていると些か心許ない。先日、菅元首相の演説に通りがかったが、前回の選挙のときよりも明らかに人だかりがあった。
 アメリカでも、リベラル(=民主党)や保守(=共和党)の支持者はせいぜい各3割で、今や無党派層が4割と最大派閥になっているようだが、日本でも、第二次安倍政権以降、自民と反自民がそれぞれ4割弱と2割強で、無党派層が4割と最大派閥になっている(Real Politics JapanのPML Indexなどを見ていると)。この無党派層が、比例代表でどんな投票行動を示すか、議席シェアという結果だけでなく、投票率そのものや、希望や立憲民主の支持率など、興味深いところだ。
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