風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

宴のあと

2017-10-24 02:29:21 | 時事放談
 蓋を開けたら、自民党は公示前勢力をほぼ維持する284議席、公明党と併せて改憲発議に必要な3分の2に相当する310議席を僅かに超える313議席を獲得し、盤石だった。もっとも日経記者の振り返り記事を読んでいると、安倍首相周辺の話として、希望の党への民進党合流は想定外だったし、希望の党が民進党を丸ごと呑み込む観測が出ると、首相は「信じられない」と眉をひそめ、首相官邸には悲観的な空気が漂ったらしい。言わば電撃解散することによって野党の焦りを誘い、焦った野党が結束するとの観測によって却って自民党が良い意味での緊張感を保ち、しかし小池都知事の失言もあって野党の足並みが乱れることで、自民党を利するに至った・・・ということか。
 結果だけ見れば、昨年の英国BREXIT国民投票や米国大統領選挙、また最近のフランス、ドイツ、オーストリアの選挙結果と比較して、日本の政治の安定は際立っている。朝日・毎日・東京三紙やその系列テレビ局からさんざん「もり・かけ」疑惑を糾弾されながら、大したものである。もっともこうした海外主要国の政情不安を見て日本国民は安定を求めたとも言えるし、「北朝鮮の核開発など不安定な国際情勢の中で、自民党以外に信頼できる政党がなかった」(英ガーディアン紙)あるいは「北朝鮮の脅威が安倍首相を『救った』」(韓国・中央日報)などと言われるような安全保障環境が追い風になっているのは間違いないし、古くは民主党(当時)の「政権交代。」に対する国民の失望が今なお尾を引き、野党(反自民)が党勢を回復出来ていないことにも助けられているのだろう。現に、2012年、2014年、そして今回と、過去三度の選挙で、与党(自民+公明)の獲得議席数は殆ど変わらず、あくまで野党同士が潰し合い、2012年のときの民主党(57)、日本維新(54)、みんな(18)、日本未来(9)、共産(8)といった内訳が、今回、立憲民主(公示前15→55)、希望(同57→50)、共産(同21→12)、維新(同14→11)という分布に変わっただけである。
 このあたりは共同通信の出口調査にも表れていて、無党派層の内、過去三回の選挙で与党(自民+公明)への投票率は殆ど変わっていない。
 朝日新聞デジタルは、今回の衆院選を、政権批判票の受け皿となる野党が分散したのが大きな特徴と総括し、全289選挙区の内、78%の226選挙区で「野党分裂型」となり、与党183勝、野党43勝と与党側の大勝に終わったと振り返っている。現象としてはその通りだろう。だからと言って、もし「立憲民主、希望、共産、社民、野党系無所属による野党共闘」が成功していればという仮定のもと、これら選挙区で野党系の得票を単純合算すると、63選挙区で勝敗が入れ替わり、与党120勝、野党106勝になっていたはずだと、負け惜しみの分析をするのは如何なものか。まるで各政党の違いを超えて「野合」を煽るかのような想定は奇異だし、「野合」の一党が同じ支持を集められるか疑問だし、実際に過去に野党が一枚岩になったこともない、ちょっと現実的ではない恨み節だ。「反・自民」、「安倍政権打倒」のためにはなりふり構っていられないということだろうか。なんだか対立を煽るばかりで空しくなる。
 今回の選挙でも、まともな政策論争はなかった。急ごしらえの希望の党のベーシックインカムとか内部留保課税といった雑な議論にはとても信頼を寄せるわけにはいかなかった。選挙戦術としてどの党もバラマキを言うばかりで不毛だった。安倍首相にとって残り1年の任期を4年に更新することが出来てよかったと言えるのかも知れないが、野党のメンツが多少は変わったくらいで対立の構図は変わらない、ということは、また論争にならない非難合戦や印象操作が蔓延るのだろうか。このために700億円とも800億円とも言われる大金が費やされたのかと思うと、なんだか空しくなる。せめて、後から振り返って、あのとき解散・総選挙をしていてよかったと言えるような状況になればよいのだが・・・いやそんな緊迫した状況が来ても困るのだが・・・
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