保健福祉の現場から

感じるままに

医師偏在と都道府県のガバナンス

2016年12月26日 | Weblog
メディウォッチ「地域中心で医師偏在対策などを決定すべき―厚労省・ビジョン検討会」(http://www.medwatch.jp/?p=11769)。<以下引用>
<(1)地域が主導して医療・介護・生活を支える(2)個人の能力と意欲を最大限発揮できるキャリアと働き方を実現する(3)高い生産性と付加価値を生み出す―。厚生労働省に設置された「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」は22日、中間的な議論の整理の中で、こういった3つのビジョンを示しました。また、地域・診療科の医師不足解消の前提として「医師偏在の解消」が不可欠であるとし、今後は10万人規模で行っている働き方調査の結果などを踏まえて、まず医療機能の存在状況の「見える化」を行う方針なども提示。地域単位で医師偏在対策に取り組む方向なども示しています。10万人規模の「働き方調査」などをもとに、医療機能の「見える化」をまず実施 ビジョン検討会は、「医師従事者の需給に関する検討会」による、「医師の働き方・勤務状況などの現状を把握するための全国調査を行う」「新たな医療の在り方を踏まえた医師の働き方ビジョン(仮称)の策定を行う」といった中間まとめに沿って設置されました。当初は、年内に「医師の偏在対策」をまとめる予定でしたが、ビジョン検討会が出した結論を踏まえて、改めて医師需給の推計などを行うことになりました。こうした過程やビジョン検討会が非公開で開催されている点などには、社会保障審議会・医療部会などで強い批判が出されています。ビジョン検討会は年度内に意見の取りまとめを行う予定ですが、今般、中間的な議論の整理を行っています。そこでは、(1)地域が主導して医療・介護・生活を支える(2)個人の能力と意欲を最大限発揮できるキャリアと働き方を実現する(3)高い生産性と付加価値を生み出す―という3つのビジョンを提案する考えを示しています。(1)では、「地域医療構想を踏まえ、地域(都道府県など)が中心となってリソースである医師や看護師などの医療従事者の需給・偏在対策を決定する」ことを打ち出し、地域では ▼地域での医療・介護ニーズや必要なマンパワーやリソースの定量的な調査・分析の定期 的な実施 ▼地域での医師養成や医療資源配分の主導を、専ら大学医局のみに依存しないよう、ガバナンスと政策実行能力を早急に開発すべく具体的な施策(特に、地域医療を分析し、 実効的な政策を推進できる社会医学やマネジメント能力に長けた人材の育成)を講ずる―、国では ▼必要な権限の委譲 ▼人材育成や必要な財政的支援、ミニマムスタンダードの設定、マクロ的な資源調達、都道府県間の資源配分の適正化、全国的に必要な調査・分析―などを行うよう求めています。さらに、▼プライマリ・ケアの確立 ▼医師のみならず、看護師や介護職等を含めたプライマリ・ケア人材の育成と確保 ▼看護師・薬剤師・介護人材など業務範囲拡大などによる柔軟なタスク・シフティング、タスク・シェアリング―の重要性も指摘したほか、患者・住民が予防・治療に積極的に参画していくことも求めています。(2)では、▼多様な生き方・働き方を阻害する制度的制約を取り除き、年齢・性別に依らず個々人の能力と意欲に応じた選択肢を用意し、疲弊しない体制の下でやりがいをもって切磋琢磨できる環境 ▼若手・中堅医師の本質的な動機付けとなっていると考えられる「専門性の追求」を存分に行える環境―などを整備することを掲げました。さらに(3)では、「エビデンスの蓄積・分析・活用によって更なる医学の進歩と知見の拡大・深化を促す」と同時に、「非専門的労働や情報技術で代替可能な業務を抽出して置き換えを進める」方針を打ち出しています。一方、当面の課題とされている「医師偏在」対策については、「地域・診療科の医師不足」を解消するための前提であることを強調。その上で、▼身近で広範な医療の機能は全国各地で容易にアクセスできるようにする(プライマリ・ケアの確保、情報技術の活用、チーム医療の推進、人材の重点的な育成や地域ごとの規制の特例など) ▼高度な医療の機能については、機能の集約と成果の見える化、モニタリング、情報公開―が必要と指摘し、まず「医療の機能の存在状況の『見える化』を進める」考えを明確にしています。このため、現在10万人規模で実施されている「働き方調査」の結果を踏まえるほか、▼都道府県などが、大学医局、関係団体などと協議しながら、効果的に取組を進められるよう、医師養成、確保にかかる制度的な環境整備を進める ▼グループ診療の推進等のサービス提供体制の強化 ▼情報技術の活用を促進する ▼診療報酬、地域医療総合確保基金など経済的手法や規制的手法の効果を精査した上で、どう組み合わせるべきかを検討する―などの具体的な提案も行っています。また「一律な制度設計ではなく、なぜ偏在が発生しているのかについて地域や医療機関ごとに要因を精査し、都道府県等の地方自治体が地域の状況に応じて自律的に対策を組み合わせて活用できる」ようにすることが重要と強調しています。今後は、上記の「働き方調査」結果を踏まえた上で、関係者(医療従事者や職能団体、自治体担当者、住民など)の意見も聞きながら、年度末に向けて取りまとめに向けた議論を進めていく予定です。>

M3「医師偏在、「プライマリ・ケア」と「地域」で解消 ビジョン検討会、「中間的な議論の整理」を公表」(https://www.m3.com/news/iryoishin/488875?dcf_doctor=true&portalId=mailmag&mmp=MD161223&dcf_doctor=true&mc.l=197365517)。<以下引用>
<厚生労働省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(座長:渋谷健司・東京大学大学院医学系研究科国際保健政策学教室教授)は12月22日の第7回会議で、「目指すべきビジョン」として、「地域が主導して、医療・介護と生活を支える」を掲げた上で、医師偏在の解消に向け、プライマリ・ケアの確保や、大学医局ではなく都道府県が中心となり取り組むことなどを盛り込んだ「中間的な議論の整理」を取りまとめた。「地域が主導して、医療・介護と生活を支える」というビジョンでは、地域ごとに住民と患者の「価値」は多様であることから、地域医療構想を踏まえ、都道府県等が中心となり、医師などの需給や偏在対策を決定することを提言。国は、必要な権限を委譲し、人材育成や財政的支援を行う立場になる。同ビジョン実現に向け、細分化した専門診療科では対応できない地域の多様なニーズに応えるため「国際的にそん色ない水準で我が国の医療の基本領域としてプライマリ・ケアを確立」を打ち出したことが特徴だ。現在検討されている新専門医制度では、19番目の基本領域として総合診療専門医を位置付ける方針。「中間的な議論の整理」では触れていないが、2017年度内にまとまる予定の最終報告で、同専門医と関係が打ち出されるか否かが注目される。そのほか、若手医師が「専門性の追求」を行う環境を整える際には、大学医局や都市部に偏らないようにすることも求めるなど、新専門医制を意識したと見られる記述が幾つかある。ビジョン検討会は、厚労省の「医師需給分科会」の議論のたたき台になるだけに、どんな医師の需給・偏在対策を打ち出すかが注目されている。「中間的な議論の整理」では、「たとえ医師供給数が十分であっても、医師偏在が解消しなければ、地域・診療科の医師不足は基本的には解消しない」と指摘。その上で、「経済的なインセンティブや物理的な移転の強制的手段のみに依存することなく、地域が主体となって、医師の意欲と能力を喚起し、能動的な関わりの結果として是正される方策を模索」と提言している。その際、大学医局ではなく、都道府県が主導し、偏在対策に取り組むよう求めている。もっとも、その具体的な方策までは踏み込んでいない。2017年1月末か2月初めにまとまる予定の「医師の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」で、「見える化」し、現場の医師や職能団体の意見、行政の担当者、住民などを聞き、議論を深めるとしている。渋谷座長は、「今回は、あくまで中間的な議論の整理」と断った上で、「過去7回の検討会でかなり具体的な意見が出ている。しかし、医師偏在の解消に当たって、何が本当に障壁なのか、我々が頭で考えていることが本当に合っているのかなど、調査結果のほか、関係者や関係団体の意見などを踏まえて、具体的な内容に収れんさせていきたい」と述べ、現状を正確に把握した上で今後の議論を行い、制度設計を進める方針を示した。なお、2016年6月に閣議決定した「骨太の方針2016」では、「医療従事者の需給の見通し、地域偏在対策等について検討を進め、本年内に取りまとめを行う。特に医師については、地域医療構想等を踏まえ、実効性のある地域偏在・診療科偏在対策を検討」と記載されていた。厚労省医政局医事課長の武井貞治氏は、「今回、医師の地域偏在について議論し、検討したことは事実。中間的な形だが、今回このような形で取りまとめを行ったことは、骨太の方針が要求していることについて、一定の取り組みをしたと考えている」と説明した。3つのビジョン打ち出す 「中間的な議論の整理」は、「問題意識」「目指すべき基本哲学」「目指すべきビジョン」「ビジョンを踏まえた医師の需給・偏在対策についての考え方」「今後の進め方」の5章建て。「目指すべきビジョン」は、3つのビジョンに整理している。(1)地域が主導して、医療・介護と生活を支える、(2)個人の能力と意欲を最大限発揮できるキャリアと働き方を実現する、(3)高い生産性と付加価値を生み出す――だ。(1)では、前述の通り、地域医療構想を踏まえ、都道府県等が中心となり、医師や看護師等の医療従事者の需給や偏在対策を決定することを提案。プライマリ・ケアを基盤とする医療体制の構築を目指していることも特徴だ。看護師、薬剤師、介護人材等の業務範囲の拡大等によるタスク・シフティング、タスク・シェアリングの推進も掲げた。(2)では、「年齢、性別によらず、個々人の能力と意欲に応じた選択肢を用意し、疲弊しない体制の下でやりがいを持って切磋琢磨できる環境整備を推進」を打ち出した。その実現に向け、グループ診療、兼職、柔軟な派遣運用のほか、医療機関の管理者の意識改革や人材マネジメント、勤務時間等の労働環境の見える化・改善、診療報酬などの制度的な対応が必要だとした。医療従事者と医療機関等のマッチングを行うできるシステムの構築なども求めた。新専門医制度を意識し、若手医師らが「専門性の追求」を存分に行う環境を整えるため、「大学医局や都市部に偏らないように、それぞれの専門領域に該当する症例の多い医療施設を、複数施設での組み合わせも含めて地域で柔軟に選択できるようにする」との記述もある。(3)では、診療行為の内容と成果の「見える化」を強力に進め、エビデンスの蓄積・分析・活用によって、医学の進歩と知見の拡大・深化を促すとした。専門的な仕事に集中できる環境、AIやビックデータなどを活用し、生産性向上を図ることも提案している。>
 
「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=384675)の中間取りまとめ(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000146856.html)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000146855.pdf)p2「地域医療構想を踏まえ、地域(都道府県等の自治体)が中心となり、リソースたる医師や看護師等の医療従事者の需給や偏在対策を決定する。」、p3「特に、地域においては、以下を優先的に実行する。・ 地域での医療・介護ニーズや必要なマンパワーやリソースの定量的な調査・分析を定期的に実施する ・ 地域での医師養成や医療資源配分の主導を、専ら大学医局のみに依存しないよう、ガバナンスと政策実行能力を早急に開発すべく具体的な施策(特に、地域医療を分析し、実効的な政策を推進できる社会医学やマネジメント能力に長けた人材の育成)を講ずる」、p5「特に、地域医療の確保の責任を都道府県等の地方自治体が主体性をもって的確に果たすために、地域のマネジメント機能を実質的に確立することが必要である。このため、都道府県等が主導し、大学医局、関係団体等のプロフェッショナルと協議しながら、効果的に取組を進められるよう、医師養成、確保にかかる制度的な環境整備を進める。」が目にとまった。今年6月3日の「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会 中間とりまとめ」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000120207_6.pdf)では、p6「専攻医の募集定員については、診療領域ごとに、地域の人口、症例数等に応じた地域ごとの枠を設定することを検討する。」「都道府県が策定する医療計画において、医師数が不足する特定の診療科・地域等について、確保すべき医師数の目標値を設定し、専門医等の定員の調整を行えるようにする。」「将来的に、仮に医師の偏在等が続く場合には、十分ある診療科の診療所の開設については、保険医の配置・定数の設定や、自由開業・自由標榜の見直しを含めて検討する。」、p7「医籍登録番号、三師調査等の既存の仕組みの活用も念頭に置きつつ、医師の勤務状況等を把握するためのデータベース化について検討する。」「特定地域・診療科で一定期間診療に従事することを、臨床研修病院、地域医療支援病院、診療所等の管理者の要件とすることを検討する。」等とあったが、今般の中間取りまとめ(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000146856.html)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000146855.pdf)では、都道府県の役割が前面に打ち出されているように感じる。各都道府県ごとに、これまでの年度別の自治医大・地域枠出身医師の義務年限内の勤務先(診療科、地域)と派遣ルールが公表されてもよいかもしれない。「全国医政関係主管課長会議」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=327739)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000114071.pdf)p92~「地域医療支援センターの設置状況について」の各都道府県の医師の派遣・あっせん実績をみれば、修学資金貸与者の配置調整、自治医科大卒業生の配置調整がなされている県が多いことがわかる。自治医大・地域枠医師の配置ルールや厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000111914.pdf)p36「地域医療支援センター運営事業」による法定化されている各都道府県の地域医療支援センター(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/chiiki_iryou/index.html)に関心が高まってもよいであろう。医療従事者の需給は医療計画の見直し(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=127276)にも影響するが、スケジュールはどうなるのであろうか。医療計画(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html)に係る医療法(http://www.ron.gr.jp/law/law/iryouhou.htm)第30条の3第1項に基づく「医療提供体制の確保に関する基本方針」、第30条の8に基づく「医療計画作成指針」、「疾病・事業及び在宅医療に係る医療体制構築に係る指針」(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_taisei1.pdf)の改定は今年度末であるが、医療部会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126719)の動向も注目される。ところで、新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=384675)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000138743.pdf)p4「医師の需給推計の結果について(暫定)」では、「2024年頃に需要推計(中位)と供給推計が均衡」「2033年頃に需要推計(上位)と供給推計が均衡」とあるが、p4「供給推計においては、今後の医学部定員については、平成28年度の9,262人が維持されるとして推計。」と注釈がついており、この供給推計には来年4月からの「国際医療福祉大学医学部」(http://narita.iuhw.ac.jp/igakubu/)が勘案されておらず、医師数ではもっと早い時期に需要と供給が均衡するであろう。しかし、医師偏在(診療科、地域)対策が強力に打ち出されなければ、むしろ問題が大きくなるように感じる。
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