政府はこんな調査もしている。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えを支持する人は全体の52%で、過半数に達した。しかも、伸び率がもっとも大きいのが20代で、前回の2009年の調査と比べると、男性は21ポイント増えて56%、女性は16ポイント増えて44%であった。ただし、これはあくまでも希望で、現実とは違う。この考えに賛成する人も、子どもが小さい間という条件付の人が多かった。
「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えは、明治になって急速に一般化した。江戸時代までは、もちろん武士は男社会であったから、外で働き妻が家を守った。それでも、頼朝の妻の政子や秀吉の子を産んだ茶々のように、政治に口を出す女性もいた。江戸の庶民も武士に倣ったけれど、女性たちは男性たちと同じように働いている。明治になって工業化が進むと、働き手の確保が必要となった。また強兵のためには男を特別に必要とした。そこで生まれたのが、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」であった。
戦後しばらくの間も、男は外で働き、女は家を守ることが当然だった。しかし、景気がよくなり働き手が男だけでは足りなくなってきた。同時に、男女平等の教育の成果が生まれ、女性の社会進出が始まった。働くことは、男でも女でも同じことで、社会とのかかわりであり、社会からの評価である。家庭で掃除・洗濯に務め、料理をつくっても、評価もされない。社会で働けば、給料と共に評価もされる。女性たちが働く場を求めたのは当然のことだ。
しかし今、政府の調査では「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」という考えの人が増えている。特に若い人がそう考えるようになってきている。20代の人たちの親の世代は、共働きをするケースが多くなった時だ。子どもの頃に寂しい思いをしたことへの反動なのかも知れない。あるいは、専業主婦になれば「働かなくてもいいからラク」と考えているのだろうか。かつての女性たちが、権利として勝ち取ってきた「男女平等」をひっくり返すような傾向だ。
男が外で働き女が家を守るのも、女が外で働き男が家を守るのも、男も女も働きながら家を守るのも、それはそれぞれの夫婦のあり方であって、理想と現実の狭間でお互いが納得いく形になればいいと思う。働かなくては生きていけないし、働くことが生き甲斐になるのなら、そんな素晴しいことはない。これが正しくてこれは間違っているという家庭の形は無いと思う。時代やその社会の価値観やそして生き方で、家庭の形も変わるだろう。