感覚は初夏。晴天に恵まれた荒倉山であった。このところの陽気に、イチゲの花が山中の斜面一面に咲き競う。内陸の山は、残雪で雪崩の危険も多いが、海岸の低山は、すっかり季節を先取りしている。日当りのいい場所のカタクリは、花を開きはじめた。まさに春の妖精である。ギフチョウが飛び、樹々は芽吹き初めている。雪に覆われた季節が過ぎ、季節が山によそおいをもたらしている。枯れ枝の先に青い空がうれしい。目を海岸に向けると、青い海が枝を通して見えてくる。
今日はしも匂ふがごとき春の空 福田蓼汀
山道に入って最初に目についたのがスミレ。ウグイスの初鳴きも聞こえてくる。雪のない山道を歩くのは久しぶり。一面に咲き乱れる白のイチゲが一行を歓迎してくれる。樹種によっては、葉をのぞかせる芽吹きがみられる。ストから、汗をかくような暖かさ。春の登山というより、初夏といのがふさわしい。そして、梢の先にはには初夏を連想させる青空。谷のさきには、青い海が広がっている。
本日の参加者12名、内男性5名。グループでの山行は、他愛のない話をかわしながら登るのが楽しい。「小学校の遠足みたい」と言った人もいた。この山は、昨年の大晦日に土砂崩れの起きた西目の山の近くにある。307mと低い山ではあるが、山のなかは自然そのものだ。急勾配の斜面が広がり、道が頂上へむけてジグザグに作られている。近隣の人が、山の幸を求めて入山するのか。初春の散策が楽しい山だ。
油戸の海岸。山の裾野が、海へ続いている。こんなに近くから海を眺めるには、庄内に来なければならない。久しぶりに見る海の青さに、心を奪われる。
春の岬 旅のをはりの鴎どり
浮きつつ遠くなりにけるかも (三好達治)