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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1133「最後の言葉」

2021-09-27 17:34:28 | ブログ短編

「ねぇ、あなた。何をしてるんですか?」妻(つま)は昼食(ちゅうしょく)の片(かた)づけをしながら言った。
 夫(おっと)は難(むずか)しい顔をして、「いや…もしもの時のために、最後(さいご)の言葉(ことば)を考えてるんだよ」
「何ですか、それ?」妻は、夫が書きかけているのを覗(のぞ)き込むように言った。
 夫は手で隠(かく)しながら、「ダメだよ、見ちゃ。これは、僕(ぼく)が今際(いまわ)の際(きわ)に言うやつだから…」
「今際の際って…。よしてください、そんな縁起(えんぎ)でもないこと」
「だから、もしもの時のためだよ。死(し)ぬ前に、何も思いつかないかもしれないだろ」
「あなた、まだまだ元気(げんき)じゃないですか。それに、そんなに長文(ちょうぶん)じゃ覚(おぼ)えられないでしょ」
「ああ…。こ、これは、まだ推敲(すいこう)してるんだ。これから、短(みじか)くしていくさ」
 夫は何かを思いついたように、「そうだ。もし、君(きみ)が、僕の臨終(りんじゅう)に間(ま)に合わなかった時のことも考えないとな。やっぱり、ちゃんと書き残(のこ)しておくか…」
 妻は不機嫌(ふきげん)になって、「もう、そんなの必要(ひつよう)ないですから。言いたいことがあるんなら、あたしの顔を見るまで死なないでください」
「もちろんそうするよ。でも、どうなるか分かんないだろ」
「そんなことより、もっと他(ほか)にやることないんですか?」
「そうだなぁ。仕事(しごと)もリタイアしたし、時間(じかん)はたっぷりある。今から、子供(こども)たちのところへ行くか? 君が淋(さび)しくならないように、子供たちに頼(たの)んでおかないと…」
<つぶやき>準備万端(じゅんびばんたん)はいいのですが、奥(おく)さんを誘(さそ)って旅行(りょこう)でもしてきた方がいいのでは?
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コメント
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