みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1120「しずく139~逃げて」

2021-09-01 17:43:31 | ブログ連載~しずく

 深夜(しんや)の薄暗(うすぐら)い部屋(へや)。ベッドに川相初音(かわいはつね)が眠(ねむ)っていた。どこからともなく、部屋の中に人影(ひとかげ)が現れた。その人影は、初音の枕元(まくらもと)まで近づいて行く。手にはナイフを握(にぎ)りしめていた。人影は、そのナイフを初音の首元(くびもと)へ――。
 突然(とつぜん)、初音が目を開けた。次の瞬間(しゅんかん)、初音の姿(すがた)が消(き)えて、人影の後ろに現れた。ほとんど同時(どうじ)に、人影はかき消えて初音から距離(きょり)を取ったところに姿を現す。
 初音は人影を見て言った。「琴音(ことね)…。どうしてここに…」
「お姉(ねえ)ちゃん…」琴音は嘲笑(あざわら)うように、「しっかりしないと。そんなんじゃ、すぐに消されちゃうわよ。お姉ちゃんさぁ、神崎(かんざき)と手を組(く)むつもりなの?」
「琴音、あたしのこと見張(みは)ってたの?」
「まさか…、あなたにそんな価値(かち)はないわ。神崎のところを探(さぐ)ってたら、あなたが現れたのよ。ふん、裏切(うらぎ)り者(もの)は、どこまでいっても裏切り者…。優柔不断(ゆうじゅうふだん)なのは変わらないのね」
「ねぇ、琴音。大丈夫(だいじょうぶ)なの? 黒岩(くろいわ)のところにいて…。黒岩は、あたしたちのこと道具(どうぐ)としか見てないわ。使えなくなったら平気(へいき)で切り捨(す)てるわよ」
「逃げ出した人に言われたくないわ。わたしは、お姉ちゃんとは違(ちが)うから…」
「もし辛(つら)いことがあったら、いつでもお姉ちゃんのとこへ来てもいいのよ」
「バカなこと言わないで。お姉ちゃんこそ、死(し)にたくなかったら、遠(とお)くへ逃げるのよ」
 琴音は、初音を睨(にら)みつけるように見つめると、姿を消してしまった。
<つぶやき>この姉妹(しまい)に何があったのでしょうか? ほんとは仲直(なかなお)りしたかったのかも…。
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