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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0775「しずく70~試合」

2020-01-14 18:41:26 | ブログ連載~しずく

 その試合(しあい)は異様(いよう)な静けさの中で始まった。見ているもの、誰(だれ)一人として声を上げることはなかった。じっと試合の成り行きを見守(みまも)っていた。
 水木涼(みずきりょう)は、この先輩(せんぱい)と対峙(たいじ)して言いようのない恐怖(きょうふ)を感じていた。隙(すき)というものがないのだ。今までなら相手(あいて)の動きが手に取るように見えてくるのに、この人からは…。まったく勝(か)てるというイメージが浮(う)かんでこない。自分(じぶん)が小さな子供(こども)になったような気分だ。
 涼は自分を奮(ふる)い立たせるように声を張(は)り上げて、相手に打(う)ち込んで行った。しかし、相手の方はそれを難(なん)なくかわして、まるで風にゆれる柳(やなぎ)の枝(えだ)を相手にしているようだった。
「何なの…。ふざけるんじゃないわよ。ちゃんと勝負(しょうぶ)しなさいよ!」
 涼は思わず声を上げた。そしてやみくもに竹刀(しない)を振り回し、力任(ちからまか)せに攻(せ)め込んで行く。今度は、相手はそれをしっかり受け止めて、動きが止まったところで凄(すご)い力で押(お)し返してきた。涼は自分の身体(からだ)を支(ささ)えきれずに、その場で尻餅(しりもち)をついてしまった。
 自分が倒(たお)されるなんて…。涼は思っても見なかったことに動揺(どうよう)し、そして闘争心(とうそうしん)が湧(わ)き上がってくるのを感じた。もともと負(ま)けず嫌(ぎら)いなのだ。涼は勢いよく立ち上がると、竹刀を構(かま)えた。彼女の目つきが変わっていた。相手にもその変化(へんか)が伝わったのか、竹刀を構え直(なお)して涼と対峙した。
 涼はじりじりと相手との距離(きょり)を縮(ちぢ)めていく。相手は距離を取ろうと、後ろへ下がろうとした。その時だ、自分の身体が動かないことに気がついた。
<つぶやき>何事も諦(あきら)めないで挑戦(ちょうせん)する。失敗(しっぱい)を恐(おそ)れなければ、成功(せいこう)の道は開けるかも。
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