光に包(つつ)まれた女性は姉妹(しまい)に微笑(ほほえ)んで言った。
「心配(しんぱい)しないで、私は敵(てき)じゃないわ。この娘(こ)のためにありがとうね。でも、大丈夫(だいじょうぶ)。しずくはそんなに弱(よわ)い娘(こ)じゃないわ。きっと目覚(めざ)めるはずよ。それまで見守(みまも)ってあげてね」
「あなたは、誰(だれ)なの?」ハルが不思議(ふしぎ)そうに訊(き)いた。
「私たちを助(たす)けてくれたの?」
女性はそれには答(こた)えず、ただ微笑みを浮(う)かべて静かに消(き)えて行った。姉妹は顔を見合わせて、その場(ば)に立ちつくした。
――いつもの朝食(ちょうしょく)の時間を過(す)ぎてから千鶴(ちづる)が起きてきた。少し慌(あわ)てた感じでやって来ると、すっかり朝食の支度(したく)が終わっているのを見て驚(おどろ)いた。そして姉妹に言った。
「ごめんなさい。どうしたのかしら、朝寝坊(あさねぼう)をするなんて。こんなこと初めてだわ」
姉妹は口を揃(そろ)えて朝の挨拶(あいさつ)をすると、千鶴を食卓(しょくたく)にうながした。千鶴は、
「まあ、あなたたちが支度をしてくれたの? 素敵(すてき)な朝食だわ、ありがとう」
アキはちょっと自慢気(じまんげ)に、「あたしたち、もう子供(こども)じゃないわ。これくらい簡単(かんたん)なことよ」
ハルは笑いながら、「よく言うわよ。アキはお皿(さら)を並(なら)べただけじゃない」
「ハルこそ、お台所散(ち)らかしてるじゃない。人のこと言えないわ」
千鶴は二人のやりとりを楽しそうに見つめていたが、テーブルを軽く叩(たた)いて、
「はい、はい。もうその辺にして、食べましょ。食べ終わったら、みんなで後片(あとかた)づけよ」
<つぶやき>現れた女性はしずくの母親かもしれません。朝寝坊の原因(げんいん)は何だったのか?
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