彼女(かのじょ)は小学生(しょうがくせい)の頃(ころ)、自分(じぶん)のことを特別(とくべつ)な人間(にんげん)だと思(おも)っていた。しかし、彼女(かのじょ)の前(まえ)にもっとすごい小学生(しょうがくせい)が転校(てんこう)してきた。彼女(かのじょ)は、勉強(べんきょう)も運動(うんどう)もその子(こ)にはまったく勝(か)てなかった。しかも、彼女(かのじょ)は必死(ひっし)になってやっているのに、その子(こ)はいとも平然(へいぜん)とやってしまう。彼女(かのじょ)は、自分(じぶん)がどこにでもいる普通(ふつう)の人間(にんげん)なのだと思(おも)い知(し)らされることになった。
それから十数年後(じゅうすうねんご)。彼女(かのじょ)は社会人(しゃかいじん)になり、そこそこの一流企業(いちりゅうきぎょう)に就職(しゅうしょく)していた。彼女(かのじょ)はその仕事(しごと)が好(す)きだった。それなりの成果(せいか)も上(あ)げている。そして、お付(つ)き合(あ)いしている彼氏(かれし)も一緒(いっしょ)に働(はたら)いていた。将来(しょうらい)は結婚(けっこん)も視野(しや)に入(はい)っているようだ。
そんな彼女(かのじょ)の職場(しょくば)に、転職(てんしょく)してきた女性(じょせい)がいた。とても綺麗(きれい)な人(ひと)で、誰(だれ)もが好感(こうかん)を持(も)てるようなそんな雰囲気(ふんいき)があった。その女性(じょせい)の名前(なまえ)を聞(き)いたとき、彼女(かのじょ)は思(おも)わず身体(からだ)が震(ふる)えた。「まさか…、あの子(こ)なの? 小学校(しょうがっこう)のときの、あの子(こ)…」
彼女(かのじょ)はそれとなくその女性(じょせい)と話(はな)しをしてみた。そして確信(かくしん)した。あの時(とき)の子(こ)だと…。でも、その女性(じょせい)は彼女(かのじょ)のことに気(き)づいていないようだ。同級生(どうきゅうせい)なのに…。
その女性(じょせい)はすぐに成果(せいか)を上(あ)げ、営業成績(えいぎょうせいせき)もトップになった。彼女(かのじょ)もまだそこまでいけてないのに…。彼女(かのじょ)の不安(ふあん)は膨(ふく)らんでいく。このままじゃ、また抜(ぬ)かれてしまう。
そんな時(とき)、彼氏(かれし)とその女性(じょせい)が楽(たの)しそうに会話(かいわ)をしているのを目撃(もくげき)してしまった。まるで、付(つ)き合(あ)っている男女(だんじょ)のように親(した)しく。彼女(かのじょ)の心(こころ)によからぬものが生(う)まれた瞬間(しゅんかん)だ。
<つぶやき>ここから何(なに)が育(そだ)っていくのでしょう。不幸(ふこう)の芽(め)にならなければいいのですが。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます