徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 プロフェッション』(講談社文庫)

2018年12月15日 | 書評ー小説:作者カ行

『ST 警視庁科学特捜班 プロフェッション』は同シリーズの最新巻で文庫は2016年発行。STが認知され、チームを率いる百合根も、STと刑事部のつなぎ役(またはお守役)の菊川もSTメンバーの扱いに慣れてきた頃に扱ったとある事件ということで、特にフォーカスが定められているわけではないようです。

事件は誘拐3件で、同じ大学の研究所に属する3人が誘拐され、「呪い」をかけられて翌日に帰された、という奇妙な事件で、警察も扱いに困っていたわけですが、そのうちの二人が誘拐から約2週間後に激しい頭痛を訴えて救急搬送されるに至って、STの出動となります。

呪いの儀式とやらで手足を縛られ、目隠しをされたまま何かぬめぬめするものを口から入れられたのだそうで、想像するだけで気持ち悪いですね。

主な推理はすぐに帰りたがる青山翔のプロファイリングによって進められ、翠と黒崎が人間嘘発見器として聞き取り調査を支え、赤城は被害者の一人が死亡したため、解剖によって病気の原因を突き止めます。百合根と菊川はSTと世間様または警察組織と軋轢を起こさないように立ち回るという定番の役割を果たしますが、ちょっと団体行動を強制しすぎるきらいがありますね。さしたる合理性もないのに取り敢えずみんなで待機なんていうのは、青山じゃなくても勘弁してくれと帰りたくなるのではないでしょうか。

この作品はシリーズとしての安定した面白さ・エンタメ性があります。


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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 沖ノ島伝説殺人ファイル』(講談社文庫)


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2018年12月14日 | 書評ー小説:作者カ行

『ST 警視庁科学特捜班 沖ノ島伝説殺人ファイル』はSTの「伝説」シリーズ第3弾。STは今度は徳島県へ出張です。

事件は「神の島」と呼ばれる島全体が宗像大社沖津宮の御神体で、「許可なく立ち入りできない(女人禁制)」「島の物は持ち出してはならない」「島で見聞きしたことは島の外で話してはならない」という禁忌のある沖ノ島で起きます。この禁忌のため、沖ノ島の港湾工事中に海に死んで浮いているところを発見されたというダイバー(臨時雇いの作業員)に関する事情聴取が難航し、よそ者のSTなら科学の名のもとに禁忌と戦うできるという期待がかけられます。

県警では事故かどうか判断がつかないということで、司法解剖もコストの関係上しないでいたので、赤城が俄然やる気を出して出張に前向きになり、飛行機が嫌だとぐずり翠に眠剤を処方して引っ張っていくあたりが可笑しいです。解剖の結果「他殺」が確定し、事件の大筋は青山と山吹がそれぞれのアプローチで推理し、同じ結論に辿り着きます。翠と黒崎は「人間嘘発見器」として聞き取り調査で活躍します。その際菊川警部補も刑事として鋭い質問をして捜査に貢献してますが、例によって班長の百合根警部は「読めない」「分からない」「キャリアとしての生き方」などなど悩みが多く、何のためにいるのかよく分からない感じですね。ずば抜けたスペシャリストたちを部下に持つ平凡な中間管理職とはこういうものなんでしょうかね。

この作品もストーリー展開が速く、あっという間に読んでしまいましたが、第2弾の「桃太郎伝説」の方が面白かったと思います。


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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 桃太郎伝説殺人ファイル』(講談社文庫)



書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 桃太郎伝説殺人ファイル』(講談社文庫)

2018年12月14日 | 書評ー小説:作者カ行

『ST 警視庁科学特捜班 桃太郎伝説殺人ファイル』はSTの「伝説」シリーズ第2弾。タイトルの通り桃太郎伝説にまつわる事件で、東京・箱根・大阪でそれぞれ社会的な問題を抱えた人たちが連続で誘拐されて、その後死体で発見され、その死体には「モモタロウ」という文字と五芒星☆が書かれていた。そしてまた岡山で社会的問題を抱える会社社長が行方不明となったため、前の3件との関連性を操作するために岡山に捜査特命班が作られ、STの出動が要請されます。

STの出張に際して、STを総括する三枝管理官はSTを誇りに思う一方、「手柄を立てろ」とプレッシャーをかけ、百合根係長がそのプレッシャーに緊張し、赤城が「死体解剖しないなら俺の出番はない」と突っぱね、翠は「飛行機に乗るのは嫌」と駄々をこねるというおよそ出張を命じられた警視庁吏官とは思えない反応が「為朝伝説」の時同様に繰り広げられ、STの「お約束」の可笑しさがあります。

この作品では「桃太郎」の地元岡山バージョンが紹介されています。すなわち、「鬼」に当たるのは温羅という渡来人で、製鉄技術を吉備地域へもたらして鬼ノ城を拠点として一帯を支配した人物。地元での評判は良かったが、製鉄技術は朝廷にとっての脅威であるため、「桃太郎」こと吉備津彦が温羅を征伐し、吉備を支配下に置いたという「中央による侵略」であったという解釈です。出雲の国譲りに似た構造ですね。こちらは郷土史に精通した人が犯人で、警察に挑戦するようにメッセージを(かなり婉曲に)発しているので、その解読過程が面白さのひとつです。青山翔が珍しく感情的になって、焦って容疑者を確保する手がかりを必死で探し、見つかるとホッとして涙を流すという意外な一面を見せるところがなかなかいいですね。最後にはもちろんお約束の「もう帰ろう」が来ますが(笑)

ストーリー展開が速く、やはりあっという間に完読してしまいました。


書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)

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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル』(講談社文庫)

書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 為朝伝説殺人ファイル』(講談社文庫)


書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 為朝伝説殺人ファイル』(講談社文庫)

2018年12月14日 | 書評ー小説:作者カ行

「ST 警視庁科学特捜班」の「伝説」シリーズ第1弾の『為朝伝説殺人ファイル』では、源為朝ゆかりの地である伊豆大島と奄美大島で連続してダイビング事故が起き、テレビのワイドショーでその二つの事故と為朝伝説が結び付けて話題にされ、その続きのための取材に沖縄へ行った女性キャスター小西律子が為朝ゆかりの運天港で水死体となって発見されます。為朝の呪いかと噂が広がり、社会的な影響を鑑みてSTの出動となります。

私は源為朝という人物を知りませんでしたし、従ってこの人にまつわる様々な伝説というのも知らなかったので、それらをモチーフにしたこの作品はそれだけでもっ興味深いものでした。

事件そのものは見立て連続殺人でも何でもないのですが、一度連想が出来上がると人は往々にしてそれに囚われてしまう(先入観を持ってしまう)というのが面白いですね。

テンポのいいストーリー展開で、あっという間に読み切ってしまいました。


書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)

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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 黄の調査ファイル』(講談社文庫)

書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル』(講談社文庫)

書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル』(講談社文庫)


書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル』(講談社文庫)

2018年12月13日 | 書評ー小説:作者カ行

色シリーズ第5弾の『ST 警視庁科学特捜班 黒の調査ファイル』は犬のごとく鼻が利く第一化学担当にして武道の達人の黒崎勇治が活躍するエピソードです。

舞台は新宿歌舞伎町。携帯のワンクリック詐欺に遭った役者志望の男が、復讐するために仲間を集めます。その中に美作竹上流の者がおり、彼が黒崎をこの計画に引き込みます。

一方STは歌舞伎町で起きている原因不明の火事の原因究明のために出動します。その裏には中国マフィア同士の抗争があるようで、所轄の強犯のほか組対も捜査に加わりますが、両者の組織的摩擦が浮き彫りになります。

また、火事の前には怪奇現象が起こるらしいが、それと火事の発生とはどう関係するのか翠が主に調査します。

さて、詐欺の復讐のために中国マフィアの大物の名前を騙ることと、火事の捜査はどのようにつながっていくのか。黒崎の無口だけれどもかなりの策略家ぶりが発揮されます。

マフィアがらみの話ということで、かなり緊迫感に溢れたエンタメ性の高いエピソードです。


書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)

書評:今野敏著、『イコン 新装版』講談社文庫

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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 黄の調査ファイル』(講談社文庫)

書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル』(講談社文庫)


書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル』(講談社文庫)

2018年12月13日 | 書評ー小説:作者カ行

色シリーズ第4弾の『ST 警視庁科学特捜班 緑の調査ファイル』は結城翠が活躍するエピソードです。

新東京フィルとのコンサートを控えている人気バイオリニスト柚木優子の持つ1億円の名器ストラディバリウスが盗難に会い、その社会的影響の大きさから捜査本部が立ち上げられ、STも出動することになります。バイオリンはコンサートのリハーサルの際にすり替えられたらしい。出動したST翠の異常な聴覚に、オーケストラの指揮者・辛島は興味を示し、もしかしてラブロマンスに発展するかも?というような展開があります。

盗難の捜査が難航するなか、コンサートマスターが柚木優子のホテルの部屋で殺されてしまいます。彼は辛島とともにコンサートの打ち合わせに優子の部屋に来ており、優子は途中で取材が入っていたので部屋を出て、辛島も出て行った後に殺されたようだった。部屋には内側からチェーンがかけれれており、密室のようになっていました。

盗難と密室殺人のトリックは青山翔が謎解きしますが、翠はその驚異的な聴覚を持ってなぜバイオリンがすり替えられたのかという動機の方に迫ります。彼女の犬笛すら聞き分ける超人的な聴覚を持つが故の苦悩も描写されているのが印象的です。

捜査一課のST連絡役ということになっている菊川がクラシックファンであるという意外な一面も。辛島や優子の前で緊張しているところがちょっとかわいい感じです。

また、STにも反感を持ち、音楽にも興味を持ってなさそうな所轄の盗難担当刑事が捜査の間に優子の生演奏を聴いて「心を盗まれた」と言い張り、コンサートに招待させるあたりがなんというか、おかしいです(笑)


書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)

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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 黄の調査ファイル』(講談社文庫)

 

書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 黄の調査ファイル』(講談社文庫)

2018年12月12日 | 書評ー小説:作者カ行

「ST 警視庁科学特捜班」の色シリーズ第三弾『黄の調査ファイル』は第二化学担当で曹洞宗僧侶でもある山吹才蔵が活躍するエピソードです。

あるマンションの1室で若い男女2人ずつが一酸化炭素中毒で死亡しており、検死官の川那部は例によって「集団自殺」ということで済ませようとしますが、STは所轄の綾瀬署と他殺の可能性を捜査します。死亡した4人は新興宗教団体「苦楽苑」の信者でした。苦楽苑のトップとナンバーツーの意見の対立など、入り組んだ宗教団体内の人間関係と、揺れ動く人間心理が浮き彫りにされます。曹洞宗僧侶が捜査する宗教団体の関係する事件ということで、自ずと宗教的議論に多くページが割かれます。そして山吹が、事件だけでなく人の心の裏側を解き、多少なりとも癒しを提供してます。

百合根警部が山吹の実家の寺に容疑者の監視という名目で座禅を試しに入り、結構座禅にはまっちゃうところが面白いです。意外に早くコツが掴め、うまく力を抜くことができる彼は、勘がいい人なのでしょうね。


書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)

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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル』(講談社文庫)

2018年12月12日 | 書評ー小説:作者カ行

「ST 警視庁科学特捜班」の色シリーズ第二弾『赤の調査ファイル』は法医学担当の赤城左門が活躍します。

ある男性がインフルエンザで紹介状なしに大学病院にかかり、処方された役に対するアレルギーが元でTEN(中毒性表皮壊死症)またはSJS(スティーブンス・ジョンソン症候群)の症状で夜間に救急車でその大学病院に搬送され、死亡します。遺族が医療訴訟を起こしたため、赤城が鑑定医の一人として事案に関わりますが、裁判は敗訴。遺族が続いて刑事訴訟を起こしたため、STの関わるところとなります。

問題の大学病院は赤城の出身大学でもあり、過去に確執のあった人物がこの事件に関わっており、彼の過去がSTや捜査に関わる刑事たちに明かされることになります。看護師たちに「赤城ちゃん」と呼ばれてかなり人気だったことも判明します(笑)それで女性恐怖症って。。。

大学病院の医局制度のゆがみや研修医の過酷な労働環境ゆえに起こった事件と言えます。真相究明よりも病院の体面を大事にする、患者の命を軽く見るような病院の体質など、許しがたき問題点が浮き彫りにされます。


書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)

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2018年12月12日 | 書評ー小説:作者カ行

「ST 警視庁科学特捜班」の色シリーズ第一弾『青の調査ファイル』はST文書担当の青山翔が活躍するエピソードです。この「色」シリーズの存在を知って初めてSTメンバー全員が色を表す名前を持ってることに気づきました(笑)

心霊テレビ番組のための心霊現象を撮影するため、夜中に無人状態でビデオを回し続け、翌朝テープを取りに来たADが、誰一人いないはずのマンションの部屋でプロダクションのディレクターが首の骨を折って死んでいるのを発見します。部屋にあった脚立から落ちたにしては不審なけがと姿勢であったにもかかわらず、STを敵視する検死官川那部警視が事故扱いしようとします。所轄とSTは事故でない可能性を捜査します。スタッフ間の反目、霊能者、タレントらの人間関係が入り組む事件の真相をプロファイリングの専門家青山翔が突き止め、「御祓い」の撮影のために再度関係者が全員集められた中、昔の探偵小説に登場するような探偵のごとく「犯人はお前だ」的に真犯人を特定します。

そして最後に「ねえ、僕、もう帰っていい?」というところがブレなくておかしいです(笑)この人はなんでいつもこんなに帰りたがるんでしょうね。


書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)

書評:今野敏著、『イコン 新装版』講談社文庫

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書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 黒いモスクワ』(講談社文庫)



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2018年12月11日 | 書評ー小説:作者カ行

『黒いモスクワ』は「ST 警視庁科学特捜班」の初期シリーズ第3弾で、タイトルの通りSTがモスクワで活躍する話です。ロシアの捜査当局と情報交換のために急遽出張を命じられた百合根警部と赤城主任。二人は研修の名目でアレクという元KGBの日本語に堪能な捜査官とともにラスプーチンゆかりだと噂のグレゴリー教会で起こった爆発でマフィアのボスが死亡した事件の捜査に協力することになります。そこへ休暇を取っていた黒崎が美作竹上流という武術の指導のためにもう一人に指導官と共にモスクワに来て、美作竹上流のモスクワ支部設立を画策していたアレクを通して百合根警部たちと合流します。また山吹も檀家に招かれてモスクワに向かう飛行機の中で黒崎たちの一緒になります。さらに黒崎たちと飛行機で一緒になった神秘主義関係の取材をするジャーナリストも合流して、グレゴリー教会の事件について情報を得ようとします。このジャーナリストは夜に見張りの警察官がいなくなったグレゴリー教会に忍び込み、翌朝死体で発見されます。

日本人が殺害されたかもしれないということで、応援として菊川警部補とSTの残りの美形コンビがモスクワに派遣されることになります。最初二人はモスクワに行く気などさらさらなかったのですが、菊川にうまく乗せられて俄然行く気になるところが面白いです。

こうしてSTメンバーがモスクワで勢揃いし、黒崎の嗅覚、結城翠の聴覚と爆発物の知識、そして青山のプロファイリングで真相に迫ります。STがロシア側に肯定的に認知される一方、大人数で派遣されてきたSAT特殊機動隊は訓練に相当参っていてロシア側の評価は得られなかったという結果は、彼らがSTをおまけ扱いしてバカにしていただけに、いい気味と思えます(笑)


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