徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

ドイツ情報、ヨーロッパ旅行記、書評、その他「心にうつりゆくよしなし事」

書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 黒いモスクワ』(講談社文庫)

2018年12月11日 | 書評ー小説:作者カ行

『黒いモスクワ』は「ST 警視庁科学特捜班」の初期シリーズ第3弾で、タイトルの通りSTがモスクワで活躍する話です。ロシアの捜査当局と情報交換のために急遽出張を命じられた百合根警部と赤城主任。二人は研修の名目でアレクという元KGBの日本語に堪能な捜査官とともにラスプーチンゆかりだと噂のグレゴリー教会で起こった爆発でマフィアのボスが死亡した事件の捜査に協力することになります。そこへ休暇を取っていた黒崎が美作竹上流という武術の指導のためにもう一人に指導官と共にモスクワに来て、美作竹上流のモスクワ支部設立を画策していたアレクを通して百合根警部たちと合流します。また山吹も檀家に招かれてモスクワに向かう飛行機の中で黒崎たちの一緒になります。さらに黒崎たちと飛行機で一緒になった神秘主義関係の取材をするジャーナリストも合流して、グレゴリー教会の事件について情報を得ようとします。このジャーナリストは夜に見張りの警察官がいなくなったグレゴリー教会に忍び込み、翌朝死体で発見されます。

日本人が殺害されたかもしれないということで、応援として菊川警部補とSTの残りの美形コンビがモスクワに派遣されることになります。最初二人はモスクワに行く気などさらさらなかったのですが、菊川にうまく乗せられて俄然行く気になるところが面白いです。

こうしてSTメンバーがモスクワで勢揃いし、黒崎の嗅覚、結城翠の聴覚と爆発物の知識、そして青山のプロファイリングで真相に迫ります。STがロシア側に肯定的に認知される一方、大人数で派遣されてきたSAT特殊機動隊は訓練に相当参っていてロシア側の評価は得られなかったという結果は、彼らがSTをおまけ扱いしてバカにしていただけに、いい気味と思えます(笑)


書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)

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書評:今野敏著、『廉恥』&『回帰』警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ(幻冬舎文庫)

書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 エピソード1<新装版>』(講談社文庫)

書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人<新装版>』(講談社文庫)



書評:今野敏著、『ST 警視庁科学特捜班 毒物殺人<新装版>』(講談社文庫)

2018年12月11日 | 書評ー小説:作者カ行

ST 警視庁科学特捜班の初期シリーズ第2弾『毒物殺人』では、代々木公園と世田谷公園で連続して死体が発見され、ふぐ毒(テトロドトキシン)が検出されますが、フグを食べた形跡がないため、関連する可能性のある毒殺事件として捜査本部が立ち上げられます。警察内にはSTを疑問視する声が強く廃止計画が持ち上がってきているため、百合根警部は上司の桜庭科捜研所長と三枝管理官から「手柄を立てろ」とプレッシャーをかけられます。百合根警部はSTキャップとして曲者ぞろいのメンバーに手を焼いていますが、意外と彼らに好かれているようで、今回は特に山吹が要求されて手柄を立てるために、少々危ない賭けに出て活躍します。

プロファイリングなどを専門とする超絶美形の青山が代々木公園の死体を通報したホームレスとのんびり話をしていたり、相変わらず「僕もう帰っていい?」と一切空気を読まないマイペースさを発揮するところが笑えます。だけど、少々功を焦っている百合根に山吹を信じて捜査の邪魔をするなとくぎを刺したり、捜査で被害者双方の共通点として浮かび上がってきた女子アナ八神秋子の恋人とストーカーの関係を見抜くなど、鋭利な洞察力を発揮します。

STと刑事部の連絡役として任命されている菊川警部補がだんだんとSTを悪くないと思いだしているところがいいですね。頑固ではあっても頑迷ではないところがなかなか魅力的な人物。

百合根警部も本人が悩んでいるほど無能ではないですが、突き抜けた天才ばかりのSTメンバーの中にあって唯一の常識的秀才という感じですね。

週刊誌などでバッシングを受け、プライベートでも常にカメラマンなどに付きまとわれる人気女子アナのストレスも想像に難くないですが、そういう彼女との関係を懸命に維持しようとする恋人の方も大変ですね。彼の場合なんだか変な方向に思いつめちゃってましたが。無理をして付き合えば、どこかでほころびが出てくるということなんでしょうね。


書評:今野敏著、『蓬莱 新装版』(講談社文庫)

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