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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

映画 アルジャーノンに花束を №255

2019-11-29 15:40:32 | 映画観賞・感想

 映画を観終えて、なんともすっきりしない複雑な気持ちが残った。映画は主人公に哀しい結末のバットエンドが用意されていた…。ヒトの知能指数を手術などによって変えることってどうなんだろうか?

          

 11月26日(火)午後、かでる2・7において「懐かしのフィルム上映会」があり参加した。今回取り上げられた映画は2006年製作の「アルジャーノンに花束を」というフランス映画だった。

 映画は脳を手術し、薬を投与することによって劇的に知能指数を向上させることによって生じる悲喜劇を描くというストーリーである。原作はアメリカの作家ダニエル・キイスによるSF小説だそうである。

 知的障害を持つ青年チャーリィ(ジュリアン・ボワッスリエ)は、かしこくなって、周りの友達と同じになりたいと願っていた。他人を疑うことを知らず、周囲に笑顔をふりまき、誰にも親切であろうとする、大きな体に小さな子供の心をもった優しい青年だった。そうした中で、動物実験で脳手術を受けたハツカネズミの「アルジャーノン」は驚くべき記憶・能力を獲得する。それを知ったチャーリィは周りの勧めにしたがって人間に対する臨床試験の第一号になることを承諾した。

       

    ※ 主演のチャーリィ役を演じたジュリアン・ボワッスリエ。写真は知的障碍者を演じているときです。

 手術は成功し、チャーリィの頭脳は劇的に向上し、生活は一変する。チャーリィは望み通り多くの知識を得、難しい問題を考える楽しみを獲得し、恋も経験する。しかし、知能は向上したものの心(感情)は幼いままだった。そのアンバランスが多くの悲喜劇を巻き起こしてしまう。さらにはチャーリィの先達(?)だったアルジャーノンに退行現象が見られるようになり、チャーリィはアルジャーノンの姿に未来の自分の姿を想像し、思わず握りつぶして庭に埋めてしまう。やがてチャーリィもアルジャーノン同様に退行が始まり、ついには元の知的障碍者に戻ってしまう。そしてチャーリィは自ら握りつぶしてしまったアルジャーノンを埋めたところに「花束をささげてほしい」と言い残し障害者収容施設に向かうのだった…。

          

          ※ アルジャーノン役を演じた(?)ハツカネズミ君です。

 作家ダニエル・キイスによって原作が発表されたのは1959年である。当時は手術によって知能を向上させるというようなことは夢物語であり、まさにSFチックな話である。しかし、現代ではどうだろうか?この物語のような極端な例ではなくとも、医学的にはそれに近いことが試されている現実はないだろうか?あくまで医学的にヒトを悲劇から救うという名目において…。さらには私たちが日常で知り得る例としては整形手術などもその範疇なのかもしれない。

 映画はフランス映画らしく人の心情の機微を描く秀作だったが、観終わった私には複雑な思いが残った。それとは別に、主演のジュリアン・ボワッスリエの知的障碍者でIQ65のときと、IQ185の知能を持つ天才になったときの両方を見事に演じきった演技力には感嘆した。