ヒトリシズカのつぶやき特論

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人類の夢だった「人工光合成化学」基盤技術を10年間で確立する話を伺いました

2012年12月01日 | イノベーション
 水と二酸化炭素ガスを原料に、“人工光合成化学”によってプラスチック原料をつくり出すという、人類の夢を実現させる大型プロジェクトが始まったという話を伺いました。簡単にいえば、植物が持つ光合成技術を人類が手に入れる話です。

 この夢のような話の中身は、経済産業省は今年度から10年間にわたって、約150億円を投入し、日本の化学メーカーの触媒技術を大幅に革新させるプロジェクトを支援し始めたことです。

 この人工光合成のポイントとなる要素技術は、全部で三つあるそうです。第一番目の要素技術は水を太陽光エネルギーによって、水素ガスと酸素ガスに分解する光触媒です。二番目は、発生した水素ガスと酸素ガスを高純度に分別する分離膜です。第三番目は、水素ガスと一酸化炭素ガスを原料に、プラスチックの原料となる炭素の数が2~4の低級オレフィンを合成します。



 これが実現すると、日本の化学メーカーはプラスチック原料として輸入している石油(ナフサ)を削減することができます。日本は念願だった脱石油を実現する手がかりを手に入れることができます。

 このプロジェクトは、今年度から始まった府省連携による“未来開拓研究制度”の一つとして支援されます。ある程度の規模の研究開発資金を10年間投入し、産学連携によって日本の産業競争力を高めるのが目的の技術開発プロジェクトです。

 このプロジェクトを推進するのは、2012年10月3日に設立された人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)です。同技術研究組合は、三菱化学、住友化学、富士フイルム、国際石油開発帝石、三井化学の企業5社と、一般財団法人ファインセラミックスセンター(JFCC)の6機関で構成されています。

 この技術研究組合は、経産省から「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発(革新的触媒)」プロジェクトを委託され、その技術開発を本格的に推進し始めました。これが人口光合成化学を技術開発する正式なプロジェクト名です。このプロジェクトのプロジェクトリーダーは東京工業大学理事・副学長の辰巳敬さんが務めるそうです。

 技術研究組合の理事長を務める菊地英一さん(早稲田大学名誉教授)は、人口光合成化学を実現するには、「現在の光触媒が水を水素ガスと酸素ガスに分解する効率を30倍ぐらい高効率化するという挑戦的な研究課題をクリアすることが必要になる」と、難問であると推測します。光触媒の飛躍的な高効率化など、いくつかの技術課題をクリアする研究開発を実現しないと、人工光合成技術は実現しないそうです。

 この技術課題をクリアするには、企業と大学からそれぞれ超一流の研究人材をプロジェクトに出してもらい、「ドリームチーム」を組めるかどうかにかかっています。そのドリームチームを組織できたと自負しているそうです。

 日本の化学分野での優れた研究開発能力が求められるそうです。科学に基づく要素技術開発を、この10年間にどう実現するか、日本の科学者(研究人材)は大きな宿題を託されました。