まりっぺのお気楽読書

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『夜想曲集』ウルトラCを読んだ気がする・・・

2011-04-03 18:57:06 | イギリス・アイルランドの作家
NOCTURNES 
2009年 カズオ・イシグロ

テレビなどで味や香りを紹介するのは難しい、と聞きますが
私は文字で音楽を表現するのもかなり至難の技じゃないかと思っているんですよね。

ロック・ジャズ・クラシック・ラップなどジャンルで分ける事はできますし
ギター・バイオリン・ドラム・琴など使われている楽器を羅列するのは簡単でも
その音色だとかリズムを上手く書き表すには、普通の表現力では足りないと思ふ…

例えば私はハードロックが好きなのですが、デスメタルは苦手なのね。
その違いを言ってごらん、と言われても…
ハードロックはメロディアスでメロウだけど、デスメタルはゴリゴリな感じ…と言っても
わかんないですよね?

カズオ・イシグロは、そんな難関に初の短篇集でチャレンジしちゃってます。
さすがブッカー賞受賞作家ですな。

物語は5篇収められています。
登場する音楽はジャズやスタンダードナンバーが多くて、不慣れな私には ? な
ところもありましたが、もちろん主軸は小説の筋そのものにあるので
好きだった物語をあげてみます。

『降っても晴れても(Come Rain or Come Shine)』
親友チャーリーの妻エミリとは大学時代に音楽の好みが同じでよく語り合ったものでした。
長い海外生活の末帰国した時、チャーリーの家に泊めてもらうことにしましたが
なんだか二人の様子が変です。
チャーリー曰く、二人はずっと喧嘩中で、しかもその日の内に海外出張に出ると言います。

この後主人公はドラマ的ドタバタを演じた挙げ句、情けない結末を経験します。
音楽にしろなんにしろ、人の好みは移ろいゆくものよのぅ…と少し悲しくなるお話しでした。

『モールバンヒルズ(Malvern Hills)』
ロンドンでオーディションを受ける日々が続いていましたが、夏の間姉マギーがカフェを営む
モールバンヒルズ丘陵群に滞在する事にしました。
ある日いやな客がやってきたので、元教師が営む最悪のホテルを紹介しました。
義兄と面白くない事があってカフェを抜け出し作曲していると、その客が近づいてきました。

音楽はともかく、内容が一番好きだったお話しです。
他のお作品は少し作りすぎ…というかドラマ性がありすぎるような気がしてるいるのですが
この物語は若者の身勝手さとイライラが感じられて、ごく日常的な作風が好きでした。

知っている音楽が出てくれば、もう少し感情移入できたのかもしれません。
それでも曲の入りから盛り上がり、エンディングに至るまでを一気に書き上げて
なんだか一曲聞いちゃったような気にさせていただけるというのはすごいですね。

物語は大人の男女の微妙なすれ違いや一方的な思い込みを描いていて
しっとり読める内容でした。
今さらこんなことを言うのもなんなんですけど…
あまり音楽に気をとられ過ぎずに読んだ方がいいのかもしれません。

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