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まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
ゆる~い気持ちでお読み下さい。

『カフカ短篇集』どうしよう?長篇・・・

2009-04-01 00:02:51 | その他の国の作家
ERZAHLUNGEN UND KURZE PROSA 
フランツ・カフカ

アヴァンギャルドなものや抽象的な絵画は苦手です。
むかーし、テートギャラリーに美大卒の友人と行った時、真っ白なキャンバスに
釘が刺してある絵があって「これのどこがいいわけ?」とたずねたら
「これが芸術だと言いきれるところまでもってきたのがすごい」と言われました。

なるほどって思いますか? 私は思わないのですがうっすらと理解はできます。
正統な基礎が認知されているからこそ、なんのこっちゃ? なものも
豊かな想像力による芸術だと認められる、ってことかしらね?

カフカは私にとってそんな感じです。
物語の始まりは面白く、一語一句も魅力的なのですが、話しが一般常識の粋を超えて
展開していくと理解できなくなってしまうのです。
まったく読み手である私の落ち度であって、カフカに責められる点はありませんが
万人受けするとは思えないなぁ…『変身』はかなり分かりやすい話しですけどね。

そんな中でも、私が比較的理解できたものをご紹介します。

『火夫(Der Heizer)/1912年』
女中を妊娠させてアメリカにやられることになった16歳のポールは
船の中で、虐げられていると嘆くドイツ人の火夫に出会います。
彼を助けようと船長室で熱弁をふるうポールに、ひとりの紳士が叔父だと名乗ります。

『アメリカ』という長篇の第1章にあたる物語です。
これは普通ですが読み進むと意外な展開になっていくのでしょうか?
『アメリカ』は持っているので今度チャレンジしようと思います。

『中年のひとり者ブルームフェルト(Blumfeld,ein alterer Junggeslle)/1915年』
寂しいので犬でも飼おうかと思案しながら帰宅したブルームフェルトは
部屋の中で楽し気に跳ね回るふたつのボールに辟易させれます。
翌朝ボールを振り切って会社に行くと、使えないふたりの部下がさぼりたい放題です。

ボールの部分と会社の部分がまるで別物のようなのですが…
ボールはボールで解決してほしかった、けっこうコミカルだったんですよ。
それなのに会社の部分でどんより暗い話しになってしまって…

『万里の長城(Von den Gleichnissen)/1920年』
万里の長城はなぜ区間分割工法がとられたのか?
君主制や中国の国民性、都会と田舎における皇帝への忠誠の温度差などをとりあげて
論究を試みています。

普通に読むと真面目な論文にみえますし、納得の部分も多いのですが
この1冊に収められていると、もしかして全部つくりごと? と思われてなりません。
歴史家が読んだら抱腹絶倒ものなのでしょうか?

気がついたらカフカも何冊か持っていた私… 『城』とか『流刑地にて』とかね。
短編でこんなことじゃ先が思いやられます
いつか読むつもりですけど、いつだか分かりません。
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『おばあさん』善人に幸多かれ!

2009-01-22 22:58:02 | その他の国の作家
BABICKA 
1855年 ボジェナ・ニェムツォヴァー

主人公の “ おばあさん ” がどんなに良い人かということが延々と書き綴られている物語。
これがけっこうしんみり面白いのです。

公爵夫人に仕える娘夫婦を手伝うために
チェコの山中からボヘミアにやってきたおばあさんと、孫たちや村人、
ご主人である公爵夫人とのふれあいがテーマです。
ほとんど悪い人が登場しないという、小説として成り立つのだろうか?と思わせる内容ながら
退屈することなく読み進めました。

ボヘミア地方の言い伝えや古い風習も盛り込まれ、四季の移り変わりや日々の行いが
みずみずしく描かれていますし、恋ややきもちなどもほどよくちりばめられて
決して道徳一辺倒ではないのですね。

おばあさんはたぶん100歳近くまで生きて静かな臨終をむかえるのですが
良い人たちは皆幸せになりましたとさ・・・という、ハッピーな内容。
確かに100年以上読み継がれた国民的な本なだけあります。

おばあさんは磯野フネさん的な女性で、優しいだけではなく
厳しいことや耳が痛いことも率直に言ってくれる、側に居たら頼りになりそうな人です。

物語の中ではキリスト教の祭りごとや、収穫祭とか結婚式とか
村人総出で祝うことが多々あって、なにかしら顔をあわせているんですから。
じい様やばあ様の知恵も役立つってものです。

公爵夫人がおばあさんのことを「幸せな人だこと」という場面が2回あって
そのうちの1回はおばあさんの葬送を見ていた時です。
こんな人生が送れたら本当に幸せでしょうが
人びとの繋がりが希薄になっている現代では難しいでしょうね・・・

しかし、こんな幸せな物語の中でも戦争が至る所に暗い影をおとしています。
兵役が14年ってあなた・・・青春だいなし。
チェコやハンガリー、ボヘミアなどは当時ハプスブルク家の勢力下にあり
いろいろな紛争に巻き込まれていたんですよね。

この物語の登場人物にはモデルがいたようです。
“ おばあさん ” は作家の祖母で、バルンカという年長の孫が作者だったようです。
巻末に実際はどうだったか書かれているのですが、これが・・・
人生って甘くないわね、と思わされ少し凹みます
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『アドルフ』重い!重すぎる愛 (>_<;)

2008-10-20 22:52:34 | その他の国の作家
ADOLPHE 
1816年 バンジャマン・コンスタン

激しい愛は疲れるね・・・

作者が旅先で出会った男性の手記という形で紹介される
ある男女の愛のお話しですが、ほとんど甘い語らいはありません。

あるのは、嫉妬、憐憫、焦燥、諍い、絶望・・・
こんな思いするなら一人で平穏に暮らしたいわ と思っちゃうわ。

裕福で前途有望でいながら、厭世的で皮肉やのアドルフが「愛されたい」と思い
旅先で出会ったエレノールと激しい恋に落ちます。
エレノールはある伯爵に囲われている、国を追われた高貴な婦人でしたが
伯爵に尽くし、自分の境遇をおとしめないように努めている女性でした。

しかしアドルフと愛し合うようになると、子供も伯爵も捨ててアドルフを追いかけ
前途を保障してくれる全てをアドルフといたいがために断ります。

アドルフは、自由を望みながらもエレノールの幸福を奪ってしまったという自責の念から
彼女と離れられず、無為の日々を過ごし、断ち切られそうな未来を恨みます。

アドルフの思いは愛か? 同情か?
エレノールの思いは愛か? 執念か?

別れちゃえばいいのに~ って思う私は凡人です。
でも一緒にいたっていいことない二人に見えるんですもの。
お互いがお互いを、自分を縛りつけている、あるいは陥れた張本人だと思って暮らす毎日が
楽しいと思います?(でも夫婦なら多かれ少なかれそういうことってあるのよね)

作者は最後に、一方的にアドルフが悪いと結論づけています。
彼の“虚栄”と“弱さ”が一人の女を滅茶苦茶にしたと・・・

でもなぁ、エレノールも涙という女の武器をふんだんに使い
「死んでしまう」「生きていけない」って、離れないんだもんなぁ
少しでも姿が見えないと探しに来ちゃうのよ。
ちょっと重くないですかね?

作中、父の友人T男爵が諭すようにアドルフに言った
「恋人に “あなたなしでは生きていけない” と言わない女はいないし
 実際にそうした女もいない」
というのが少し納得で笑えました

余談
コンスタンはスイス出身ですが、ドイツに亡命してたみたいです。
逆の方がありそうだけどね・・・
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『千年の祈り』祝北京五輪開催

2008-08-21 02:41:09 | その他の国の作家
A THOUSAND YEARS OF GOOD PRAYERS 
2005年 イーユン・リー

祝五輪 っていうことで
初めて中国の作家の本を読んでみました。(アメリカ在住ですけど)

なんていうか、軽い衝撃
北京オリンピックを見ながらこの本を読んでいるとすごい乖離があるような…

読み始めた時は、けっこう昔の話しのつもりだったんだけど
天安門事件とかでてくると、わりと最近じゃない?って思ったり
文化大革命ってそんなに昔でもないんだって思ったりして。

そしてテレビの画面では、自由を謳歌していらっしゃるような北京市民のみなさんが…

どちらが中国? どちらも中国?

内容は、面白さというより、“文化大革命ってそうなんだ”
“そんなことがあったんだ” という驚きの方が勝っていました。
政治的なことには深く及びませんが、「そういや共産主義だったね」と
随所で思い出しましたね。

好き、というより印象に残った作品をあげてみます。

『千年の祈り(A Thousand Years of Good Prayers)』
離婚した娘を励ましにアメリカを訪れた石(シー)氏ですが娘は心を開こうとせず
逆に自分の秘めたる過去に触れられアメリカを去ることにします。

“核開発施設で働いて、家族にさえ語ることが許されなかった”っていうのが
まあ何処の国でもそうなんでしょうけど、お隣の国なのでね・・・怖いわあ

『死を正しく語るには(Death Is Not a Bad Joke If Told Right Way)』
大地主の息子だったために、文化大革命後厖夫妻が送ることになった不遇な人生を
毎年夏と冬に訪れていた少女が見ていました。

この厖夫妻の場合は、奥さんが気丈で救われているけど
結局この二人は哀しいままに人生を終えていきます。
世界のどこにでも起こる“革命”だけど近所同士で(同じ釜を使っている人たちでさえ)
敵にしなければならないような状況ってやっぱりイヤだよね。

「同志」とか「兄のような国ソ連」とか、「公開裁判」「処刑」
「秘密警察」「政治的再教育」などなど
北京オリンピックの画面からは伺い知れないほんの少し前の中国が垣間見える一冊でした。
今ではもちろん変わっているのでしょうが・・・

決して悪意があるものではないけれど
かなり正直に毛沢東時代のことや天安門事件当時のことが書かれたりしています。

彼女(作者)は帰国したら再出国できるかしら?
アメリカもオコナー賞とかヘミングウェイ賞とかあげる前に市民権をあげないと。

千年の祈り 新潮社


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『停電の夜に』エイミ・タンの言うとおり!

2008-08-12 00:48:33 | その他の国の作家
INTERPRETER OD MALADIES 
2000年 ジュンパ・ラヒリ

うーん、なんだろう?
不思議な読後感を持つ短篇集。

舞台はアメリカだったりインドだったりしますが
登場するのは全てインドにルーツを持つ人びと。
インドに住む人、アメリカにやって来た人、アメリカで生まれた人と様々ですけど、
(例えば名前とかで)インドを前面に打ち出してる割には
あまりにもインドって感じもしない。

置き換えればどこの土地で、誰にでも起こりそうな話しでもあるし
インド独特の何かもありそうな気がする・・・不思議です。

しかし、良い本だったったなあ
さすが、ピュリッツァー賞、0・ヘンリー賞、ヘミングウェイ賞 受賞。
何も煽ることなく淡々と、しかし一気に読ませてくれます。

書評でエイミ・タンが
“そばにいる誰かをつかまえて、読みなさい!と薦めたくなる”
と言ってましたが、そのとおり!! 私も何人かに薦めました。

お気に入りを3篇あげてみます。

『三度目で最後の大陸(The Third and Final Continent)』
インドからやってくる新妻を迎えるまで暮らしたボストンの下宿。
家主である103歳の気難しい老婆との、風変わりで暖かい交流が可笑しくもあり
ジーンときたりもします。

『ビビ・ハルダーの治療(The Treatment ob Bibi Halder)』
奇妙な重い病を抱える29歳の女性ビビと、彼女の面倒を見る従兄夫婦、
そしてビビを見守る町の女たちのせめぎあいに目頭が熱くなります。
ビビは意外なことで病気が治るのですけれど。

『セン婦人の家(Mrs. Sen's)』
夫についてアメリカにやってきたセン夫人と放課後を過ごすエリオット。
異国的で居心地のいい毎日を過ごしていたエリオットですが
セン夫人は日ごとにインドへの郷愁を募らせていきます。

もはや大国としての地位を築いたインドに
ビビやその近所の奥さんが住むようなアパートが残っているのかしらん?と
寂しくもなりますが、8億人もが暮らす懐の深い国なら、なんでもありそうな気がします。

とりあえず、インドの方の奥さんにはなれないわぁ。
料理が大変そう!! 下ごしらえとかスパイスとかスゴく手がかかってて
毎日できないですもん

停電の夜に 新潮社


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こちらは文庫版です
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