詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

話したいこと

2012-06-29 | フリー Poem
会いたくても 会えない人がいる
話したくても 話せないことがあって

しまいこんだ言葉の引き出しは
詰め込みすぎて 開かなくなっている
心を伝えるための言葉がでてこない

すべての 伝えたいことが 
名前に集約される
幼子の「ママ」という  小さな呼び声に
世界が 飲み込まれてしまうように

つづきは どこからはじめればいいのか
熱病にかかったように 話し出してみたい

かたわらでは 蜘蛛が糸をからめ
巣にかかる幻影を 取り除こうとしている
日にさらされて 私も
子供たちのように 捕虫網を取り出し
大切な人に 話しかけたい

あなたへ向けての言葉が
伝えたい意味からはなれ
いまはまだ 記号にすぎなくても
つぎは 言葉が記号でなくなるために



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

鳥は

2012-06-22 | フリー Poem
鳥は 飛びながら 
悩むのだろうか
考えこんでいたら
落下してしまいそうだ

一瞬で 土の上にうごめくものや
空中に舞う虫
木の芽や実を見つけ
華麗に 急降下する
透き通った 天上からの意思に
導かれるように

私たちの中にも
鳥に流れる空の力が 隠れている

迷い込んでしまう迷路を捨てて
一片の雲を拭い去ってしまえば
鳥の息吹を 受け継ぐことが
できるはずだ

鳥は 悩みながら
空を 飛ぶのだろうか

鳥は 傷つきながら
空を 飛ぶのだろうか
人は 



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

ふんわり

2012-06-20 | ショートPoem
ふんわりしたものが 好き
ふんわり ふんわり
かたいもの
とがったもの
みな 包み込んでしまう
ふんわりだ

ふんわりみえる 遠くの山も
近づけば ギザギザした葉が
生い茂っていたり
鋭い枝が 天を仰いでいる

ツんとした顔をする人も
いつもケンカ腰になる人も
横に並んでみると どこか
ふんわりしたものが 伝わってくる

ふんわり ふんわり
ふんわりしたものが 好き



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

子供の寝顔から入る国へ

2012-06-17 | ショートPoem
子供の寝顔から入る国へ
夢の途中駅で 切符を買って
私も乗車する

今日こそは 乗り遅れずに
そして 数えきれない星行きへ向かう

昨日から 今日への道がつながる
子供の 長くて甘美な1日を過ごすために

色の点滅するトンネルをくぐりぬけ
切断された空を 遠くに置き
子供が手に入れた 連続した空を分けてもらう

風も 日の光も 時計の秒針も
すべてどこかへ置いてきて
むせかえるような 暑いはじまりへ
足を踏み入れる


ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

物語

2012-06-15 | フリー Poem
草のように
摘みとっても 摘みとっても
大地からは
ことばの芽がでてくる

人がもらすためいきや
群集のどよめきから
犬の遠吠えや 
猫の光る眼から
エサを啄ばむ鳥のくちばしから
川面をはねる小石や 
耳元でざわめく虫の羽音から

音が空に放りだされると
意味はあふれ
世界に
物語がはじまっていく



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

CONTINUE

2012-06-12 | ショートPoem
きのうのつづきが
きょうで
きょうのつづきが
あしたで

あまりにも あたりまえの
ことだけれど
逆であったら 夢のつづきが
ふくらまない

やりかけのことがあるから
歩いていける

あの人のつづきを
わたしが
わたしのつづきは
あなたが

永遠の輪が 
つながって見える



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

雨になって

2012-06-10 | フリー Poem
涙に 色をつけなかったのは
なぜだろう

雨に 色をつけなかったのは
なぜだろう

夜を 暗くしたのは 誰

きっと
探している答えは 見つかるはず

光のなかで 繰り返し
生まれてくるものに
きいてみる

全身雨にぬれて
甲高い声をあげて飛ぶ鳥の輪郭が 
空気を切りとり 浮かびあがる

強風に吹かれ ひょうに打たれた花びらが 
深い色を輝かせる

雨になって 涙になって
光の触手はやってくるという

いつか残骸となり ここを立ち去るときまで
わたしにも その雨は何度も降りかかり
涙も数え切れないほど訪れる

疲れた地上の生きものが
起きあがる朝に
光は たくさんの手を伸ばして
やってくる 


ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村          

瀬音

2012-06-08 | フリー Poem
水は 高いところから 
低いところへ 流れるが
時間も流れる というくらいだから
やはり 高いところから 
低いところへ 流れているのだろうか

流れる時間は
年を重ねるごとに 
加速しているように 感じられるが
激流のような場所にさしかかる
こともあるのだろうか

目に見えず
音も聞こえない 流れというものが
たしかに ある

この川では
みなが釣り人のように
見えない流れに糸を垂れて   
近づいたり遠のいたりする魚を
釣り上げている

わたし以外の釣り人を
代わる代わる 見送り
時に わたしは
流れの渕に佇むのだ
居合わせた人々と 
川の瀬音の話をして
流れる川のことを 確認しながら


ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

かげ

2012-06-06 | ショートPoem
かげは
踏んでも 踏んでも
なくならない

生まれてから ずっと 踏んでいるが
一緒にいて はなれない
私が体を休める時も
はなれない

新月の晩
かげの疲労が頂点にさしかかるころ
夜は 戸口へ そっと 
迎えにくる

かげを抱きかかえて
自分のふところに休ませるために



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

曲線

2012-06-03 | フリー Poem
大地は 曲線を描いているというのに
私たちは 直立歩行をし 
直角にこだわろうとする

傾斜する ピサの斜塔が
心に刻まれる本当の理由は
私たちの生存のはじまりに
遠く 根ざしている

太陽と 地球と 月と
回転軸の微妙な傾きが
私たちに奇跡の出会いを
もたらしてくれた

だから 直角を出せなくても
直線を引けなくても
気にしない
地球の丸みを 心に
思い描くことができればいい

考えてみて 曲線のなんと多いことか
人は 曲線にいかに魅了されるか

車のラインに 航空機に 女性に 
サッカー選手の放物線を描くシュートに
水を泳ぐ魚に 猫の背に
虹のように すべてはしなやかに丸みをおびよ

雨のしずくも丸くおちる
割れて角ばった岩石も丸くころがる
にわとりの卵も流線型に産みおとされ
人の心も 見ることはできないけれど
丸い曲線を描いているはず
みな 回転する地球から生まれた卵だから



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村