詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

To  Mr. K I S T 

2012-05-28 | フリー Poem
昔、敬愛する詩人が言っていた

‥‥
一日は夕焼けだけで成り立っているんじゃないから
その前で立ちつくすだけでは生きていけないのだから 
それがどんなに美しかろうとも   ※1


でも 人が 夕焼けの一部だということを
忘れることはできない 

夕焼けのことを忘れたら
なぜ 私が ここに
生まれてきたのか

なぜ ここに
みんなが がんばって
生きているのか
大事なことが
わからなくなってしまう

幸せな記憶を失うことは
帰る家がわからなくなることに等しくて

だから
夕焼けのことを いつだって
思い出そうとする 

何もかもがうまくいかなくて 
一日の半分は 辛かったとしても
一日のもう半分は 夕焼けの一部分でいられるように

消え入りそうになる光をつかまえて
輝きをいっそう強めて
いのちあるものの生誕のよろこびを 
思い出させてくれる夕焼け

夕焼けのことを
一日100回も言えるくらい
思い出してみる

                  注※1 『世間知ラズ』谷川俊太郎


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通りすぎていく風

2012-05-24 | フリー Poem
通りすぎていく風のように
あなたに どんなことばを
残していけるだろう

風がはこんでくる ほのかな
花のかおりのように
あなたに どんな想い出を
つくってあげられるだろう

生まれて 立ち上がって
歩きだして
どこまでも 私のあとに
ついてきた人

私の影と 同じ高さになるまで
長い長い時間 
つきない話をして 並んで歩いた
きのうも きょうも
そして あなたを送りだす

私は立ち止まり
どんどん 先へ行くあなたたちを
見守っているだろう

通りすぎていく風のように
やわらかな陽射しのように


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ことばのリレーのつづき

2012-05-23 | 子供のこと、子供のことば
次女がお風呂で、寝てしまいそうになるので、
久々に、ことばあそびをはじめた。

おかあさんは、どんなかんじですか。

クイズ1) 1.きんぎょ 2. あめんぼ
3.きりん 4.たぬき 5.ひよこ

答え ひよこ

クイズ2) 1.ながぐつ 2. げた 
3.ビーサン 4.ヒールの高いくつ 5.たび

答え ヒール(の高いくつ)

クイズ3) 1.かぼちゃ 2. もやし
3.だいこん 4.たまねぎ 5.ピーマン

答え もやし

クイズ4) 1.おふろ 2. 洗濯機
3.掃除機 4.ドライヤー 5.テレビ

答え おふろ

くっつきそうだった目が、大きく見開いて
きて、次女は「私も、問題つくる」といって、
完全に、目が覚めた。

スイーツや乗り物やスポーツなど、いろいろな
グループに分けて、瞬時に問題をつくり(その
せいか、少しおかしいものも含まれるが)
間髪いれず、相手は答える。

普通なら、その人とあまり関係のなさそうなものを
あげて、どれかを必ず選ぶところがミソ。

「えぇー、おかあさんて、もやしのようなひよこが
ヒールはいて、おふろみたいってかんじ??」

子供が感じるイメージの合成が、おもしろい。



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日々のことば

2012-05-21 | フリー Poem
目にするもの
耳に届くもの
口に入れるもの
すべてをことばにかえて
いかなければ いのちが尽きていく

そんな生き物がいる

うすばかげろうのような体
すけてみえる内臓には
繊維のように ことばの糸が
整列したり 固まったり
ことばを作る過程が  
うずまいている

その生き物が外気を吸い
一呼吸するたびに
息は 見る見る 雲のような形に
かわり 紫雲たなびき
ことばのかたちへ 生成されていく

生きているために
ことばを生み
ことばを使わないと
消えてしまう 生き物が
目に見えないところに いて
わたしたちのそばに いて



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みんなのことば

2012-05-17 | フリー Poem
みんなの空気
みんなの水
みんなの大地に立ち
ひととき
考えることを 許されている不思議

みんなのことばを使って
人間の体を持ち
ほんの短い年月に
感じて 思考して
伝えられることは なんだろう

一瞬の光を閉じこめて
力強く いのちの所在を輝かせる花たち
よりも もう少し
たくさんの時間をもらって

誰のことを考えようか
何を想像しようか

人が 心に咲かせる花は
地球を どんな色に染めあげるだろう


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又、草のことなど

2012-05-09 | おすすめPoem 記事
草いろに染まる手は、おもしろい。

伸びてきた草を、躍起になって引き抜く。
その痕跡が、指の指紋に入り込む。

しばらくしても、草の匂いが手から漂い、
周辺に拡がっていく。

草が残していったことばを、きいている。
根こそぎ抜いたと思っていても、
それは違うよ、と。

根の繊毛も、種も、土の中に眠っている。
次々に、芽生えてくるのだ。
朝になれば、そして、このところの激しい雨に
打たれて。
脈々と、草の系譜が続いていく。



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「眠り」から

2012-05-07 | 詩を歩く
ここのところ、「眠り」の詩をつづけた。

自分という、一人の人間としては、
眠るということが、幾分古代的なニュアンスでは
あるが、<再生>を意味するのでは‥と
遺伝子の記憶のような直感で思う。

でも、子供のことを考えて書くと、眠りは、
子供に必要な成長のつづきの時間だと感じるので、
そのような言葉のつらなりになる。

それで、眠りについての詩の内容が、真反対のような
ことばになる。
<再生>と、<成長への信頼や希望>は、近いようだが、
ベクトルの指し示す方向は違うように思う。

こういう時、自分の中の、まとまりのつかない分裂した
感覚に驚くが、だが、人間の脳には、いつも二つの方向
があるようにも思う。
相反するものが共存しているというのは、あたり前なの
かもしれない。
アンビバレンツを否定しないで、その振り子の振り幅が
大きく揺れるほど、きっと、真理というものに、
近づけるのかもしれない。



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