詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

冬の日に 

2013-12-30 | ショートPoem
冬の日に 茶ざん花が咲いていた
花は 出口に向かって 咲くのだろうか

黒々とした幹の中に 時間を溜め
自分の色を 積み重ねていく
緑の葉は 呼吸するために枝にとどまり
降りそそぐ大気や
土の声を運ぶ羽のように
花が ひらいていく

冬枯れの景色の中で
深紅のこの花は 次々と咲いていく
出口は きっと
新たな入口に つながるのだろう
風に吹かれ 冷たい雨粒を感じ
生誕の喜びを 知らせていくように



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「No More War 」という詩を

2013-12-28 | お気に入り My Poem
十五夜の あの美しい夜から
それほど 時間は過ぎてはいないというのに
もうひとつの螺旋階段があるように
別の時間が 忍び寄ってきていたのだろうか

「No More War 」という詩を 
なぜ 書かなければならなくなったのか

自分が 
自分の愛する人たちが
戦場へ行かなければならない朝を
想像してみて

戦争がおきていいと思う人なんて
本当は いない



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一つのみかんが食卓に上るまでのことを、想像してみる

2013-12-21 | 子供のこと、子供のことば
反抗期を迎えている子供と向かいあう。
荒い言葉も強い口調も弱い言い回しもムダ。
黙りこんでいる子供の顔をずっと見ていたら、
急に「みかん」という言葉が口をついて出た。

みかん農家のおじさんが、毎日雨や風の心配をして 
丹精込めて作っている。
畑には息子やお嫁さんもいて、働いているそばで
小さな子供が飛び回っている。
木々にたわわに実ったみかん。
家族みんなで収穫して、軽トラックで運んで行く。

海からも山からも、荷物を積載した車が飛び交う
夜の高速道路。徹夜で走り抜けて
市場や店舗に届けるドライバー。
近所のスーパーの、早朝パートのお母さん達は、
家族に朝ごはんの作り置きをして、
開店までに、急いでみかんを見栄え良く並べていく。

そして、私は、家族に食べさせたいと、
一番おいしそうなみかんを選んで買ってくる。

一つのみかんがここに来るまでには、
たくさんの人の大切な時間が、詰まっている。
あなたの目の前のみかん。
大人になるって、
みかんの後ろにつながる世界を想像できるように
なるってことかな。


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先生に手紙を書いた

2013-12-20 | フリー Poem
昔 世界史を教わった先生に
久しぶりに 手紙を書いた
大急ぎで 書いた

 
‥年賀状だけのお付き合いを
何年もさせて頂いてきましたが
先生のおかげで、私の目は世界に開いたのでした
感謝の気持ちと 
本当はもっと 先生に教えて頂きたいことが
あったのです‥と

「ていうことでー‥」などと 突然言いながら
始業のチャイムとともに 教室に入ってきて
授業は 横道にそれてばかりで
楽しくて 楽しくて
「教科書にあることは 読んでおくように。」
で 終わりましたね

大学受験までに <現代>までの範囲が間に合わず
「後は自分でやっておきなさい‥。」
で 高校が終わりました

先生 今 世の中は
音を立てて変わっていこうとしています
教科書には ない問題です
未来につらなる この時間の連続性を 
どう解釈していけばいいのですか

退職された先生方を呼んで
とおの昔に深い眠りについた父や
戦死した伯父や おじいさんまでも呼んできて
あの時 手渡されたはずの平和の尊さについて
教えを乞いたいのです



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日付変更線

2013-12-16 | ショートPoem
昨日から 今日へ
日付変更線を えいと いつものように
飛び越えただけだった

生れてから ずっと  
私たちは 地球の日めくりをしてきたのだけれど
今日は 飛び越える線を間違えてしまったようなのだ

片足で 飛んだのがいけなかったのかな
よそ見して 飛び越えたのがいけなかったのかな
体のどこかに 重たい石がひっかかり
昨日のつづきの
美しい空の色が 綺麗に塗れないでいる




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ブラッサイの写真

2013-12-13 | 詩を歩く


Brassai(ブラッサイ) 「26 Andre et Paulette,1949」
‥1990年銀座プランタン於 <フランス以外の国で初めて展観されたブラッサイの集成展>のカタログより‥


よく見ればこの子供達の顔や手足、服や靴はひどく汚れている
のだが、生きている根源から湧き上がってくるような、
なんて美しい笑顔を向け合っているのだろう。
この写真に映しだされた美しさは、年月を経ても私の心の底に
焼き付いている‥。


Brassai(ブラッサイ)。1933年刊行の『夜のパリ』が有名。
「パリの街とパリに生きる人々を愛情あふれる眼差しと詩情に
みちた心でとらえ」又「同時代を生きた芸術家のポートレート
も数多く」(ロバート・L・カーシンバウム 文) 撮りつづけた写真家。

この展覧会のカタログには、戦争の時代を挟んで半世紀の交流
があったという岡本太郎氏の文章もあり、
その一文からブラッサイや芸術家がパリに集っていた良き時代
を、彷彿とさせてくれる。

そして、Brassai自身の貴重な言葉も知ることができる。
「‥もっとも日常的な現実から出発して超現実にいたる。
これが写真における私の目標、唯一の関心、そして実験
なのです」と。
「‥ありふれたものに与えうる新たな次元を重視するべき‥」
と言い、「視線の質」ということに言及する。

現実を凝視していく先に見えるもの。
Brassaiの写真の美しさは、現実の奥に光る、現実を越えた
普遍性の輝きを映しだしているところにあるのだといえる。
すべては現実から始まり、普遍性へ通じる位相を構築していく
視点が重要なのは、詩も同じだと共感する。

時間が止まり、永遠にそこに息づく生命の音のようなものを、
Brassai は、モノトーンの世界に止めた。

「ナチの台頭やドイツ軍が侵入する気配」(岡本太郎 文)に、
芸術家たちは、その後パリから離れ散り散りになっていった
という。
平和に暮らせる時代が、続いていけばよかったのだが‥。
そう遠くない過去に、暗い時代が忍び寄ったことを今、私達も
忘れてはいけないと思う。
そして、Brassaiの写真の子供の笑顔を、忘れたくないと思う。


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ふりつもる

2013-12-10 | フリー Poem
ふりつもる
ふりつもる

ゆき ではなくて
あめ でもなくて
すなぼこり でもなくて
けんせつげんばの ものおとでもない

こえがわりしていくしょうねんは はしりさり
しょうじょたちは おしゃべりをつづけている
おさなごが なきだしたり わらったり
やってきては とおのく おとのむこうに

はを ふむ
ねこが よこぎる
ものかげから とりははばたいていく
くうきは たじろぎ ゆれうごいて
しずけさのなかの じょうぜつなひかりが
そらを おおきく ひろげていく

くらやみから あふれだす あいずは
わたしたちの影を かえていく
あしもとから ゆびさきから
くちもとから
かたちは むすばれていき
つちなか ふかく ねむるものも
おこして                         

ふりつもる
ふりつもる
わたしたちを やわらかくつつむもの が                            
 



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12月の夜

2013-12-07 | フリー Poem
夜がきた
人があつまりだす夜がきた

今夜は 何の日ですか
キリストがお生まれになる日も
そうだった
あなたが生まれる夜も そうだった
心の奥に 打ち震える予感が
みなを この場所へ呼んだ

明け方の方角からやってきた人々は
今夜は しかし 
なんと長い夜ふけを迎えているのだろう

空は宇宙につながっている ということも
忘れてしまいそうな夜
昨日まで 手の届きそうな場所にあった星々が
小さな点のように 遠くで光っている

暗闇がましていく夜
1人の孤独が もう1人の心に
さらに 別のもう1人の心に伝わっていき

人があつまりだす夜がきて
夜がきて
白んでいく夜明けが 少しづつ早まり
暗い夜がふたたび短くなっていくことは
宇宙の法則
私たちの12月の約束



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人間の衣装

2013-12-02 | 詩を歩く
人の心に流れる時間は、みなちがっていて、
愛する人の心に流れる時間さえもちがっていて、
それはだが、誰にも所有できるものではなく、
1人1人の衣装となって、現われでるものにすぎない。
時間のなかで変貌していく、いのちの姿があるだけ。

人は時間でできた衣装をきている。
時に、他者の美しいもように魅せられたりする。




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