Brassai(ブラッサイ) 「26 Andre et Paulette,1949」
‥1990年銀座プランタン於 <フランス以外の国で初めて展観されたブラッサイの集成展>のカタログより‥
よく見ればこの子供達の顔や手足、服や靴はひどく汚れている
のだが、生きている根源から湧き上がってくるような、
なんて美しい笑顔を向け合っているのだろう。
この写真に映しだされた美しさは、年月を経ても私の心の底に
焼き付いている‥。
Brassai(ブラッサイ)。1933年刊行の『夜のパリ』が有名。
「パリの街とパリに生きる人々を愛情あふれる眼差しと詩情に
みちた心でとらえ」又「同時代を生きた芸術家のポートレート
も数多く」(ロバート・L・カーシンバウム 文) 撮りつづけた写真家。
この展覧会のカタログには、戦争の時代を挟んで半世紀の交流
があったという岡本太郎氏の文章もあり、
その一文からブラッサイや芸術家がパリに集っていた良き時代
を、彷彿とさせてくれる。
そして、Brassai自身の貴重な言葉も知ることができる。
「‥もっとも日常的な現実から出発して超現実にいたる。
これが写真における私の目標、唯一の関心、そして実験
なのです」と。
「‥ありふれたものに与えうる新たな次元を重視するべき‥」
と言い、「視線の質」ということに言及する。
現実を凝視していく先に見えるもの。
Brassaiの写真の美しさは、現実の奥に光る、現実を越えた
普遍性の輝きを映しだしているところにあるのだといえる。
すべては現実から始まり、普遍性へ通じる位相を構築していく
視点が重要なのは、詩も同じだと共感する。
時間が止まり、永遠にそこに息づく生命の音のようなものを、
Brassai は、モノトーンの世界に止めた。
「ナチの台頭やドイツ軍が侵入する気配」(岡本太郎 文)に、
芸術家たちは、その後パリから離れ散り散りになっていった
という。
平和に暮らせる時代が、続いていけばよかったのだが‥。
そう遠くない過去に、暗い時代が忍び寄ったことを今、私達も
忘れてはいけないと思う。
そして、Brassaiの写真の子供の笑顔を、忘れたくないと思う。
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