詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

「詩と陶によるコラボレーション」について

2009-11-10 | 詩と陶によるコラボレーションの記録
「詩と陶によるコラボレーション」に寄せた詩篇は、
1999年に、陶芸家田村六鵬氏とのコラボレーションに
出品した作品群の一部です。

展覧会は、私の詩篇に対し、氏が陶作品を作ったもの。
逆に六鵬氏のオブジェの一点一点に、そこから得たイマ
ジネーションによって私が詩を書いたもの、というような
2部構成で行ないました。

六鵬氏のオブジェ群からは、太古の匂いが、放たれて
いました。
古くさいものではなく、太古の、繰り返された生死。
生命のダイナミズム。又、裏腹な静かなる沈黙。
そのエネルギーが、命あるものの影を支えるように、
私の足元まで届いていること、さらに、未知なる先まで
続いていることを、強烈なインスピレーションとして
感じたものでした。

展覧会の内容というのは、手元に残らないので、ここに
数篇の詩を、再録しました。

美術でも音楽でも、又いつか、コラボレーションを
してみたいなと思います。
‥何かが、生まれます。




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驟雨のあと

2009-11-07 | 詩と陶によるコラボレーションの記録
驟雨のあとの
せみの声を
あびるように きいていた

何年も 何年も
ききつづけた

せみは ある年
私に ききとれるような
ことばで はなした
土の奥深くに 生きつづける
祖先について

父や母
またその父や母
そして その上の父たち母たち
の話を

地下に のびる根
見ることを許されない 根のつづき
私まで届く水脈について

私はいつか 私も
物語の登場人物になって
語られる日がくることを 夢みた

それは それ程遠くはない日




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沼地の花

2009-10-31 | 詩と陶によるコラボレーションの記録
ところで きいた話だが                   
この辺には 前前から                       
へんなかっこうの男が 時折やってくるらしい      
                               
破れかけたぼうしを 深々とかぶり              
顔一面をおおうような めがねをかけ
地面までとどきそうな長い丈の             
黒いコートをはおり                   
ちょっと猫背ぎみの男                 
                            
いつも未明なので はっきりとは             
しないのだが                      
コートの下にのぞく足は         
どうやら 一本                     
                            
そして さらに悪いことには              
いくら歩いても
沼地には 足跡が残らないので
これも 確かではないのだが
男の通った後には
タイヤのような縞模様のある
ニワトリのものを思わせる
細い線数本

男は 遠くから笛を吹きながら
現れる すると
水辺に しゃがみこみ
半時程 何かつぶやいていく

しわがれた声の持ち主 かと思うと
透明なかん高い声もでて
日本語のような音声で
意味は ききとれない

実は 子供の頃 近所の老人に
きいた話だったのだが
今 私の目の前にも
そんな男がいる
ちがうのは やはりへんなかっこうの女も
一緒だ ということ

今朝 私は ここを立ち去ることにしたが
ハスの咲く沼には
昔も今も 
訪ねてくるものたちが大勢いて
多くは 初めて会うというのに
なぜか なつかしい気がする

またそれが 人間でも
人間でなくても
どちらでも かまわないのだ




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記 憶

2009-10-24 | 詩と陶によるコラボレーションの記録
もし 私が死んだあとに
目が残るとしたら 何を見る

もし 私が死んだあとに
鼻が残るとしたら 何を嗅ぐ

もし 私が死んだあとに
口が残るとしたら 何を話す

もし 私が死んだあとに
耳が残るとしたら 何を聞きたい

でも 本当は
死んだあとではなくて
今 私は 知りたいのです

左のずっと奥の 遠くの方から息づいて
右のさらにずっと先の むこうまでもつづく
はるかな営みについて

川面に足を 投げだして
流れの温度や速度を感じるように

誰かに 聞いてみたいのです 




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