詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

志村ふくみさんの展覧会に行って

2014-11-29 | 気になる人、ことば
先日、南青山のTOBICHIへ、志村ふくみ展を観に行った。

その昔、あまりにも有名な御著書「一色一生」を
読んで以来、染織家志村ふくみさんは、憧れの人。
桜の色を取り出す時の話が忘れられないまま…。

今回会場で、志村さんの草木染を初めて見た。
植物から引き出された、それぞれの糸の色の華やぎに、
はっとさせられた。
植物が呼吸する色、
光を浴びた色、
土に抱かれた色。

植物の中に流れるいのちの色を最大限に取り出し、
糸に染め上げる工程。
会場に映し出されていた動画は、
植物のいのちと向き合い、
その色を、新たないのちに吹きかえる瞬間を
見せてくれていたが、
志村ふくみさんの手と心がなし得る業、
柔らかな、いのちの誕生に立ちあうようで
感動的だった。

植物の色は、志村さんによって再び、
光のなかに帰ってきた…。
そして、生きつづけるのだなと思った。

きっと、私たちの心の中にも、
それぞれの色が流れていて、
光のなかに、その色彩は
拡げられているのだろうなと思った。


*TOBICHI 展覧会
「はじめての志村ふくみ。着物から小裂から。」





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見えるもの 2

2014-11-22 | interest 2
重たくなった雲から、ポツリとしたたり落ちる雨粒が、
僕たちの首筋をひんやりさせる。
僕は歩く。

どしゃ降りになるだろうこんな日は、
捨てネコが、旧い家の軒下に隠れている。

美しい目をしたネコ、
小さな声をあげるネコ、
近づけば行ってしまう傷ついた子ネコ、
僕は、心底この子をなぐさめて
あげたいと思うのだけれど
できないかもしれなくて、
だから、じっと見つめる。
ネコも、僕をじっと見て。

ああ、宇宙ってこんな感じ。
ここは銀河の果てかも知れないけれど、
僕たちは、宇宙のまん中にいる。

りょうちゃんがいて、
ネコがいて、僕がいて、
お母さんがいて、友達がいて。

僕と同じものが見える人、
僕と同じものが見えない人。
宇宙は、そんな僕たちをいつも見ていて。

宇宙の中で、手をさしだしてみる。
誰かと、何かが同じだと感じてみたくて。

僕たちは、歩きだす。



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見えるもの 1

2014-11-22 | interest 2
りょうちゃんは、隣のクラスに転校してきた男の子。
休み時間はいつも一人きり、僕は廊下を通りかかるたびに
椅子にすわったままでいるりょうちゃんの姿が
気になっていた。
りょうちゃんとは、一度も口を聞いたことがない。
でも、りょうちゃんの目にうつるものと
僕が見えるものは、きっと同じだと感じていた。

いつだったか、りょうちゃんの机の上に
小さな宇宙が拡がっているのを見た。
扁平したもの、まん丸のもの、とがっているもの、
どれも手のひらに隠れてしまう程の小石たち。
光に閉じこめられて動かなくなってしまった黄金虫。
幼虫がはみだしてきそうな木の実の山。

僕たちは、知っていた。
家では、お母さんが洗濯槽の底に
この小さきものの残骸を見つけ、絶句していることを。
みんなの悲鳴を聞きながら、戸外に飛びでると
そこから、僕たちの宇宙ははじまると。

枯れ葉をバリバリ踏んで、砂利道をザクザク歩いて、
水たまりをジャブンといわせて。

そろそろ、冬がやってくる。



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"残酷な月"は

2014-11-11 | ショートPoem
"残酷な月"はどこへ行ったのだろう※
あれは 4月だっただろうか
T.S.エリオットよ

私たちの "残酷な月"は
終わりはしない…

不幸を背負わせてしまった日々は
時の中に過ぎ去っていくが
未来へつづく光の隙間に
どんな風貌で
未だ漂っているだろう

あなたの尊い詩のことばが
悲しみを封印してくれるように
願い


※「荒地」 "死人の埋葬"から



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