詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

美しいものを

2014-09-29 | おすすめPoem 記事
物みな光るという。
美しいものが、表に現れているものもあり、
そっと、にじみでているものもあり、
もっと、奥底に沈められている場合もある。

その光るものを訪ねるために歩いていく。
美しいものを見るためのレンズを
いくつも手に持ち、メガネに変えて、
落とさないように、心にも埋め込み。

ある日、美しい夜景の灯りを見ながら
人生の先頭に立つ人に教えられた。
「あの光は、人の苦悩の数だと思って見ている」と。
きれいなものを見ようとする私に
強い電流を流した。
この駅で、本当の美しさに出会うための切符を
買ったように思うのだ。



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

雨のふる日に

2014-09-19 | フリー Poem
雨のふる日に 種は 
真綿のような ふくらみに
包まれて 生まれてくる
小さな虫も
小さな鳥も
いのちは 包まれて
生まれでてくる

だから今
手のひらを閉じてみる
ゆっくり何かが生まれでるように
1.2.3と
数えながら
夢みながら
祈りながら

そして 手のひらをひらいてみる
温めたものは そこにはなく
飛び立っていくものと知り

 
今日も歩いてみるのだ
優しいメロディーが流れだす場所へ
美しい色彩が
画家の絵筆に止まるところへ
一羽のひなが誕生するところへ
居合わせた人の深い眼差しのなかに
飛び立った光のゆくえを見つけ



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

アバンギャルドな句集

2014-09-18 | 気になる人、ことば
アバンギャルド…という言葉が浮かび上がる。
清水東洋子の追悼句集「射撃音」。
清水晃氏の装丁の、今の時代に向けた衝撃的な美に、
胸を射抜かれる。
76歳で永眠された清水東洋子氏。
昭和を生きた人の言葉はかけがえがなく、重く輝く。
真赤なルージュの似合った人だという。
鋭い言語感覚と磨かれた美意識による展開に、
久しぶりにアバンギャルドな息吹きを頂いた。


・戦禍より逃れてきたる天の川
・歩き走り追いかけた秋の海
・海に雪降っていることつゆしらず
・薄氷の銃のカタチを陽に向ける
         (清水東洋子「射撃音」より)







ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

月のない夜

2014-09-18 | お気に入り My Poem
月のない夜を 歩いて行ってごらん

月のない夜を 見上げながら 
歩いて行ってごらん

同じように 月のない夜を歩いている誰かを
見つけるかもしれない 
…どこまで行ったら、また月に会えますか…

今歩いてきた道が 暗闇にのみこまれ
元へ戻ることができなくても

月のない夜を 歩いて行ってごらん





ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へにほんブログ村

夕暮れの中を

2014-09-11 | お気に入り My Poem
ときどき 立ち止まらないと
どこへ向かっているのか 
わからなくなってしまう
だが 立ち止まっても
もと来た道を 雨が洗い流して
ますます 方向がわからない

せめて 夕焼けを追いかけて
来る日も 来る日も
西へ西へと 進んでみる

いったい どれくらい
夕暮れの中を 
さまよえばいいのだろう

風が吹いてくる
悲しみを かくす必要はないよ
怒りたいときは 怒るがいいよ
涙で明日が見えなくても
風が 時計の針を進めていく

夜の闇が
宇宙のありかを教えていく
夕暮れの背後から
開く通路があると
風が 教えていく



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

ふくらみ

2014-09-08 | トークタイム
人間の心には、相反するものなど
一方向ではないものが
つねに揺らいである。
だから、いいのだと思う。

私たちは、日ごろ
いろいろな人に会い
いろいろなものを好きになり
いろいろなことに傷つき
大切なものを見失ったりする。

そして、誰かを許して
誰かに許されて
絶望と夢をくりかえすように
生きている。

そんな時間のなかで
大切な心という袋が
複雑な彩色を帯びて
その人の色に
ふくらんでいくのだろうね。



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

パロールという光の矢

2014-09-08 | フリー Poem
世界は暗号に充ちていて
だから時々、暗号の海に投げ出され
おぼれそうになる
この海は、なかなか前へ進ませてくれない
暗号を解くための鍵をたくさん作ったが
今はもう、どの鍵も使えない

暗号には暗号を、という時代は過ぎさるがいい
大海に、風が吹き抜け
ことばの矢が
かたちにいのちを吹き込む

ことばは名ざすだろう
偽りの装飾や
古びた衣を脱がせ
底に輝く宝石をとりだすように

カオスを1つ1つ浮き上がらせ
パロールという光の矢となり
人の心に届くための
ことばに生れかわる
愛と平和を、奏でるために



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村

ひかる

2014-09-07 | お気に入り My Poem
花が咲いていなくても
その葉が 何であるか
その木が 何という名前なのかを
わかっていたいとおもう

後ろ姿や
無言の笑みの
人の淋しさのむこうがわにも
いつか 花がひらくような
ひかる時間がかくれていることを
おしえられながら

花のない季節を
葉っぱを
木々を
愛して歩きだしたい

まもなく枯れ草や
落ち葉を踏みながら
つぎの萌芽のために
つちなかにやすむ種や
黒々とした幹や
しずかにのびる根を
おもいつつ
歩いていきたい



ありがとうございます。応援してネ♪
にほんブログ村 ポエムブログ 現代詩へ
にほんブログ村