詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

言の葉つづり 小篇(21)

2017-06-18 | 言の葉つづり 小篇
17-85)
コトンと土の上に着地した
秋の実りの1粒が
夏を迎える夕方には
フサフサと大きな葉脈をうねらせ
野草や木々の葉に変わりました
ゆらゆらと風に揺れ
時間を染め上げていくのです
生きているということは
生命を運び繋いでいるということ
あなたから私へ
小さな実りの先へ



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言の葉つづり 小篇(20)

2017-06-18 | 言の葉つづり 小篇
17-78)
古代人が砕いた
木の実は苦く
海水は辛い
なまこや
トチの実ドングリの実
蒟蒻芋を食用にしたのは
命綱を手にしたからだね

蒟蒻芋の産地では
今も蒟蒻玉を
お土産に持たせてくれる
庭先に摘んである山の実
酸っぱい苦い実の毒性は
人類の夜更けに
発酵していった



17-79)
青空と雲を追いかけて
太陽が東の地平線から上り
西の水平線へ沈む日が
幾度となく過ぎていった

青と白の間を
行ったり来たりしながら
雨に打たれているが
肩に止まった透明な雨を
鏡に映せば
まだ1度も
手にしたことがない
白い色と青い色が
映っている



17-80)
雨が降るように
そろそろ君が戻ってくる
なぜ時間は巡るのか、誰も
答えを教えてくれなかった
サヨナラには訳があって
涙の国の門をくぐるのは
君にとっての
僕にとっての
たった一つのバラを忘れない為
棘は僕達の心に
楔のように刺さって
流れ星に
君の帰り待っている



17-81)
きみに会えた、ということは
そういうことだよと
話しかけてくる

1本だけの、あの星に咲く薔薇を
忘れてはいけないんだ…
星の王子さまが置いていった薔薇は
現実に咲くどの花よりも
心に
鮮やかに咲き出して
すると、
あの1本の薔薇に会うみたいに
あれから、1人のきみを見つけ
1匹の猫を見つけ
窓の外に来る1羽の鳥に
出会えて



17-82)
海辺を歩く
ザーザー漏れの袋を下げて
ボタンが取れたシャツ
綻びたジーンズ
紐の取れたスニーカー、

だから拾って行くのです
割れた貝殻を
鳥が落としていった羽を
陽に光るガラスの破片を
自分の欠けた場所にしまっていったら
もとの私よりも膨らんで
優しくなれそうで



17-81)
誰かが
そっと
言葉を手渡していった
意味がわからなくて
置き忘れていたが
ある時、急に色鮮やかな雨のように
降ってきて

今日、
電車の窓に拡がる夕焼けが
見たこともない程
美しくて
どんな言葉が隠れているのだろう、
それは、
貴方に届ける為の
言葉のように



17-82)
硝子は一日中、
光を待っていた
光の孕んでいる色を
知り尽くし
夜になれば
集めた色の全てを
月に返してあげた

太陽と月は
遠く離れて
姉と妹のようだった
寝息を気にしながら、
太陽は錦に輝く衣を
月に届けた
地球の硝子に
反射させて。
光の欠片が
地上に煌めき



17-83)
銀色の魚が
川をのぼっていく
時々 白い腹を翻し
黒い背びれが
川の流れの連続面を
切り離していく

満月の夜
川のなかに
虹色の魚が生まれるとしたら
私たちの心も
その時、
虹色の光で
いっぱいになっているに
違いない



17-84)
夜は物語を沢山知ってる
アダムとイヴが
楽園を去った日を
そっと見守っていたのは夜
夜は休息と誕生を繰返す
隣家にミキちゃんが生まれたのは
昨日の夜
疲れた母の体を
いつまでも
抱き抱えてた
眠れぬ人の横で
星を降らせては
深い森のように
夜は、私たちを包んでいた


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言の葉つづり 小篇(19)

2017-06-18 | 言の葉つづり 小篇

17-71)
夜間の点滅信号に
ゆっくり車を走らせる
寝静まった住宅街に
刻まれる無音のリズム
どこの街にも
秒針が時を打ち
花の開く時間を
教えてくれますように

無灯火の信号が
夜明けを待っている
暗がりに
置き去られて
点滅を忘れてもなお、
人間の夜明けを
待っているのだ



17-72)
今朝、今日は金曜日?と近所の小学生達に聞かれ、
そうだよ、よかったね、あと1日だよ、と答えたが、
子供は学校が楽しみの一つかもしれないとも思った。
今日の続きを明日できますように。
夜空の次は朝であるように。
幼子に白い綿毛を摘んでは、
一緒に蒲公英地図を拡げたくなるのです。



17-73)
葉に腰かけて行くのは
何千という風

風の止まり木に
鳥たちは留まることを
遠慮して

隣の木陰に降り立ち
草の小さな白い花を
啄みながら
風の美しい所作を
見つめている

葉の衣擦れの音は
流れゆく水の音にも似ている
時の流れていく音に



17-74)
水色の風が
細い枝に
止まっていた日
呼び止められ

ふっと寂しそうに
優しい歌を歌いだし
葉を揺らしていました

空が透明に近づく時間が
あるのですが
水色はまもなく
次の色に塗り替えられてしまう
そんな刹那に
時々会いにくるのです
今日見た夢を
貴方に話しに



17-75)
本当はね、
みんな手を繋ぎたい
小さな子供みたいに
手を繋ぎたい

ちょっとくらい怒っていたって
笑いだしたくなっちゃうものだから
本当はね
みんな怒るのをやめたいと思ってる
泣くのももういいかなと思ってる
だから
明日は手を繋ぎたい
あなたの不思議を感じたい



17-76)
時々、立ち止まる
仕事に行く途中で右折して山へ登ってしまうことがある
海への道を1日車を走らせることがある
失われていくものは何だろう、
足の向くままは、案外リアリティがあるのだと思うよ。
足は地面から離れたことがないから、
大事なことが聞こえているのかもしれないね。



17-77)
波打ち際を歩くように
良いことと
良くないことの
間を進んでいく

白い波頭が服の裾を
濡らしたら
最初からやり直し
五弁の花がないなら
新しい吉兆を見つけていく

白い貝殻、白い石、白い泡粒
白い花びら、白い風を
瓶に詰めて
貴方へ
世界に一つの
アミュレットに


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言の葉つづり 小篇(18)

2017-04-16 | 言の葉つづり 小篇
17-65)
”まろい”かたちは
むすばれた約束
まろい種を
心にしまい込み
歩きだす
影のように
ついてくる悔恨は
黒いベールに包み
祈りのまろい種に
変貌させる
時間は
川の流れのように
尖った痛みを
転がし転がし
その先の
まろい海の奥に
眠らせる


17-66)
まるくまるく
なるのです
水玉のように
落下しながら
転がりながら
両の掌に
窪みを作り
まるみを作り
受取るのです
大切な貴方に手渡す
貝殻に詰めた記憶
その言葉はやがて
笑い出す球体のように
静寂から解かれて
ころころ転がり
まるくまるく
辺りを包みだすのです


17-67)
花の下に
お茶会を開くのは
なにも人間ばかりではあるまいに

ドウダンツツジが
ティーカップに注ぐ
”春の光りの夢”の
ドリンクを
真っ先にもらいに行く鳥
羽のある住人が
後からつづき

雨が降り
傘をさして通りかかる
こんな日に
寄ってみたいね
光の夢をもらいに


17-68)
子供がキャンディーを
好きな謎が
ちょっと解けた
虹の橋を
ころがってころがって
子供の舌にとどく
まるい夢

チュッパチャプスを知ってる?
ダリがデージーの花の
ロゴデザインをした
キャンディ
あれから大人の夢も
終わらない
子供も大人も
歌いたくなるまるい夢


17-69)
きみには白い花
あなたには赤い花
その子には黄色い花
彼には青い花
街頭で花を配るアルバイトが
あって
毎朝、私は一輪の花を
通りかかる人に手渡した
夢の夢
その一輪をどうするの
風に吹かれながら
今日の短い命は
大切な人と会えるように
優しい夢を見るのだった


17-70)
深い深い森の泉に
水を汲みにいく
深い深い森の奥に
精霊を訪ねる
曾祖父の曾祖父から聞いた話を
思い出しました
預けてある私たちの音を
1つまた1つと返してほしいのです
森の空気を大きな風呂敷のようにひろげ

精霊の歩く音を合図に
街の時計が息を始めるように



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言の葉つづり 小篇(17)

2017-04-16 | 言の葉つづり 小篇
17-60)
巻き貝をひとつ
ポケットにしまう癖が
なおらない

風が時々悲しい物語を
連れ立って吹いてくる
そんな日に、
海岸で拾いあげては
耳にあてる

地底深く眠る石の涙の理由を
空に高く響く子供の夢物語を
貝殻は知っていて
私たちに教える


17-61)
夕焼けの美しさは
本当かしら、と
時々、目をつぶり
開けてみるのです
手で掴むことのできない
心でしか触れ得ないものが
世界にはたくさんあって。

だから、今日も
あなたに触れてみたく
なるのです
こんにちは
さよなら、と言っては
また会う約束をするのです


17-62)
月が降りてくるのです
静かな夜の海の歌を
聴くために

誰にも気づかれぬように
月は深く海中に潜り
歌の調べを聴くのです
水底の魚たちは
分けてもらった月の色を
次々に体にまとい
朝には
美しい魚に生まれ変わるのです


17-63)
空が綺麗ね、
と話しかけながら
砂浜を歩きたい
一緒に
長い長い人間の形をした
不思議な影を落としながら

私たちの苦悩を
そっと
光の中に置いてこようか

光の鏡を覗いては
透明になっていく心を
影の奥にしまって
もう少し海の風に
吹かれて


17-64)
花を揺らして
通り過ぎていく風
あなたに話しかけようと
私たちは、今朝
くちびるを真紅に染める
すると
空高く鳥が旋回するように
舞い降りてきて

春の風は
私たちの声に
耳傾ける
古い枯葉の堆積の上に
腰掛けて
傷ついた木々の枝に
そっと寄り添って



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言の葉つづり 小篇(16)

2017-04-16 | 言の葉つづり 小篇
17-56)
音はいつも波のように
やってくるのです
運命は海に光を落とす月の足跡のように
歩いているのかもしれません
雨も虹も
風も友達です

そっと
空が私達に幸せを刻もうとして
生まれでた日に続く音の階段が
光りだすのです


17-57)
夢が壊れぬように
あなたが握りしめてきた掌を
握手して下さいと言っては
開いてもらう

花の種がこぼれるように
どうかあなたの夢が
溢れますように

すると私は急に饒舌になり
鳥のように
今日も誰かの夢を
話に出かけるのです


17-58)
珀色の雫は
地球の底で
大切に記憶されてきた
夢の続きを
紡ぎ始めるという

いつか誰かに手渡すように
そう言い伝えられた小さな鉱石を
手に握りしめて
今日、電車に乗る


17-59)
きのうあなたとわたしは
見知らぬ関係だった
雨が降り続く翌朝
薄明に目を凝らせば
緑色の若葉が
土の上に萌えでている
わたしたちはこうして
出会う
雨のリズムは
心に浸透し
いつの間にか
同じ波動を繰り返す
年輪という時間の中に
あなたとわたし



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言の葉つづり 小篇(15)

2017-03-11 | 言の葉つづり 小篇
17-55)
例え 昨夜の夢見が
悪かったとしても
私達の今日は
始まっていく
悪夢というものが
あったなら
それは結末ではないと
信じさせてくれる日が
繋がっていく
希望に終わりは来ない
冬枯れの木々の枝に
花芽が膨らみ
空には
虹が何度も描かれて


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言の葉つづり 小篇(14)

2017-03-11 | 言の葉つづり 小篇
17-48)
夕陽が美しい理由を
いつも忘れてしまう
遠い誰かの悲しみだったり
笑い声だったり
怒鳴り声だったり
猫の鳴き声
クラクション
鳥の囀り

川の濁流

さよならと
太陽が今日の思い出の絵を
描いていくから


17-49)
もし私が花に覆れていたなら
貴方は私を愛し続けたのですね

イザナギが見てしまった
女神の素顔
黄泉の国に
蠢めく命がほの見え
暗がりに眠る命の灯り
エロスはここに始まるのです
葡萄や桃を投げ
女神を美しい花に
変化させる術を手に入れたい


17-50)
緑と砂の文化は
対局だと言われるけれど
緑の草木と砂の相性がよいのも
本当のこと
水の惑星に生まれてくるためには
小石の間をかけのぼり
きっと誰かに会えると
夢を持ち続けることだった
夢は砂と緑と水を結びつける


17-51)
柔らかくなったり
尖ったり
ふうふう言いながら
歩いて行くのがいいのです
そのうち誰かが
ふうふう追いついてきて
貴方も同じねと
楽しくなるのです
心は不思議な器です
風を盛り
漂う春花のような香りを
貴方に届けに行こうかと
思っていたのです


17-52)
目の前に現れ
時々空の色にかき消され
青の群れが集まりゆく先へ
螺旋階段をのぼる
タバコ屋の角という
今では死語に近い街角を折れ
釣り橋を渡っておいで
猫のようにしなやかに通り給え
風に揺れ散った花びら
今日はこの花の道を歩けと言われ


17-53)
まだ零時前
秒針はいつから音を無くしたのか
夜の街には
ガラスの靴が落ちている
永遠は
暮れていくインディゴの空に
雲と一緒に流れている
今は
琥珀色の液体に姿を変え
コップに注がれる


17-54)
みずすましが
水面を行ったり来たり
泳いでいる
空の音を聞いている
宇宙の秘密を知らせる暗号のように
音が踊りながら降りてくる
みずすましの横に
降りてくる
水中に眠る花へ
みずすましは
まるい波を広げては
泳いでいる


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言の葉つづり 小篇(13)

2017-03-11 | 言の葉つづり 小篇
17-41)
あの夜、彷徨い歩いたのは
生きる道を
見つけるためだった
止まぬ雨のように
涙を流し
あてのない
突きあたりのない道を
どこまでも歩いたが
それは
希望に繋がる道だった


17-42)
珈琲が好きな理由が
わかったような気がする
珈琲を飲む間に
人には考えたいことがあって
人生の急ぎの用事を先送りしている
絵のこととか音楽のこととか
形而上のこととかを想いながら
忘却の川の上に
夢のはしごをかけて
しばらく座り込んでいる


17-43)
風の始まりはどこだろう
風の尾は
過ぎた時間にも
まだ届いていて
後悔を慰め
花の目覚めに
立ち会い

まだ見たことのない
これから始まる場所へ
ふわり夢の種を運んでは
吹いたり止んだり
通り過ぎていくね


17-44)
あれから
風のページをめくっては
恋文をしたためています
お訪ねしようとお土産を
考えていたら
あの方は
一足先に
旅立たれてしまったのです
どこへ届ければいいのか
途方に暮れながら
手荷物が
増えていくのです


17-45)
まもなく梅の花が散るでしょう
花冷えという言葉は
なんと残酷でしょう
冬のあと先に
「私の言葉を信じて」
そんな花言葉を
置いていきました
明日は、春


17-46)
いつも忘れものを
しているような気がして
何度も家に戻るのです
永遠の中の
繰り返しのように
昨日から今日に続く光の粒子が
私の儚い夢を繋げている
信じること
手にした鍵でドアを閉め
言い聞かせるのです
未来は、歩けば始まると


17-47)
静かの海が
月にはありました
星は過去から光を送り続け
私達はやっと気づき
未来へ進むのですね
静と動
過去と未来は
宇宙では1つの事
なのかもしれず
そんな片隅で
先程
梅の花が開いたのです


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言の葉つづり 小篇(12)

2017-03-11 | 言の葉つづり 小篇
17-35)
方言は古代語の名残り
今はなき発音に
外国語のような音が交じる
そんな言葉の
囁きに
脳内の記憶の信号の点滅は
止まらない
だが本当は
犬や猫を愛するのに
共通言語がいらないように
この宇宙には深い音が
響きあい
通いあっているに
違いない


17-36)
天文学者になりたかった夢を
犬は知っていた
音楽家になりたかった夢も
知っていた
誰を愛していたかも
お見通しだった

リードには流れていた
花を咲かせようと
樹木の内に流れる、あの
透明な宇宙の意思のような
信頼が
続いていたのだ


17-37)
葉脈のふしぎを
うつくしいと思った

虫の翅に走る脈に
痛みをおぼえた日

血管という道すじは
宇宙へ帰還する時の地図なのではと
悟る

いつか帰らねばならない
ここにきた理由を見つけたら
その時に
空の扉がふたたび開き


17-38)
口笛は不吉と母が言った
夜にピアノを弾いても
爪を切っても
昔人は吉凶を口にした
この場所から離れてはいけない
生命への愛と執着が
吉の顔だった
土に帰り空に帰り
帰路へ近づくこと
残された者の悲しみが凶であった


17-39)
小さなパンケーキを毎日たくさん作って配りたい/日曜日には街中に拡がるような大きなパンケーキを焼くのもいいね/あっちとこっちの端を持ってひっくり返す/掛け声は123、アンドゥトロワ、ドレミ/時にそんな言葉がいいのさ/美しい歌が生まれるために


17-40)
忘却とは
残酷で
甘美
だが
いのちがつづく傍らで
今日も
堤に繋ぎとめている舟に乗る
微笑みを忘れずにね
ママの言いつけだけが
今も聞こえている
モナ・リザの謎を秘めて
朝のコーヒーを飲み
祈りつづける


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言の葉つづり 小篇(11)

2017-03-11 | 言の葉つづり 小篇
17-29)
海にはどんな時間が
流れるのだろう
マゼランが航海した日々と
海を照らす太陽の陽射しは
何の違いもないのかもしれないし、
星の光は夜を包んでいる
海底には
鮮やかな色の魚が泳ぎ、
未来が静かに
繋がっている


17-30)
淋しさを知らないなんて、
なんて 可哀想な人だろう
雲の上から 憧れの詩人が
笑っている
いのちのかげに
燃えあがるのは
淋しさという幻影

さきほどまで咲いていた花
さきほどまで鳴いていた秋虫
の声


17-31)
猫の気持ちは
気まぐれと言うけれど
そんなことはない

君が恋人にふられた時の
悲しみを
猫はずっと覚えていて
今でも
PCに向かうと必ず
喉を鳴らして
膝や机に乗ってくる
1人で考え事をすると
悲しくなると
思っているんだよ
相変わらず


17-32)
道はつづいている
誰と歩いた道だったろうか
横に並んだ影の先端を辿っていくと
夜の帷の淵に届きそうになって
慌てて引き返してきたものだった
まだ赤い尾を引く
金色ともピンク色ともつかぬ
この世の一番美しい時間まで


17-33)
淡い色が好き
そこには
萌え始める小さな花や虫の
いのちの水玉が眠るから

濃い原色が好き
そこには
炎から生まれ出ようとする
光の子供が踊りはねているから

風が秘密の扉を開けて行く
あわいに
立ち止まる


17-34)
そっとあの夜に
母が幼子の手を離すように
君は繋がっていたリードを
放して教えてくれた
まるで北極星を中心にした星空ように
時間も道も放射状に拡がっていることを
知らせるために

だが、寂しき雨降る夜には
もう一度
道案内を乞うてみたいのだ



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言の葉つづり 小篇(10)

2017-02-01 | 言の葉つづり 小篇
17-22)
時間の事を考えるのが好きだった。
どうしたら四次元に行けるのかと。
1枚の絨毯を折り畳むように
こっちからあっちの時間へ
飛び移ればいい。
どうやらSFと詩は似ていて
物理と禅も似ていて
貴方と私もそう遠くない。
花と実と根は同じ君だと知った。
未来は夢が実現する場所なんだと
思う日。


17-23)
日がな一日、
明るすぎる光の下に
立ちすぎた
眩暈すら覚えながら
立っているしかなかった
それはあなたを
待っていたから
影はもうここにいるよ、と
私に呆れ果てていたが
まだ、あなたを待ち続け
星のかけらをさえも
拾い集め
夜もなお光り、
小石光り、野花光り。


17-24)
木漏れ日に
見え隠れするのは
時間の子供たち

手を繋いで降りてきた
はずなのに
てんでバラバラに
歓声をあげて
遊びだす

木の葉はかくれんぼに
ちょうどいい

大きな
陽だまりには
遠くへ行ってしまった人の
面影のような
夢のつづきが
鏡のように
反射して


17-25)
ポトーンと おちてくる
ポトーンと
ポトーン

それは 雨のおと
ネコの足おと
孤独な心に
おちてくる光


17-26)
零れるとは
微笑みの形なのだと
知りました

貴方の
尖った顔が微笑みに変わる
その瞬間に出会いたくて
私はいつも話しかける
あれやこれや
可笑しな話を考えては
1日の大半を費やすのです

円空上人の”木っ端仏”を
思いながら
いたるところに宿る笑みを
呼び


17-27)
夜の底ってどこだろう
深い深い闇に
降りていく
足がつかぬ場所は
浮遊して進んでいく
下降しているのか
後向きなのか
前向きなのか
全方向が平等の闇
ずっと昔母の
宇宙に包まれていた時間を
思い出したら
そこが夜の底なのかと。
朝に、何度でも
生まれでてみようか


17-28)
起きているきみたち
眠っている子供たち
まだ目覚めぬ小さな命に
寄り添ってみる

待ち遠しい朝もあれば
明けないでほしいと祈る夜もある
命の時計が刻まれている
笑い声と慟哭とを
同時に聞いている鳥
草木のねぐらで
動物たちはそっと
私達の立てる物音を
聴いている


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言の葉つづり 小篇(9)

2017-02-01 | 言の葉つづり 小篇
17-18)
土の中では
まだ草の種がねむっている

蟻は細い細い
巣穴の片隅にねむっている

街のビルの影が
少しずつ形を変えていく

あなたと歩く駅までの道
私たちの投げる影を
いたずらっぽい顔で
眺めているのは
春を告げる女神


17-19)
雨がふりだす
雨は空と私たちを
近づける

作物の祈り
草花の願い
恋人の約束
子供の産声を聞くように
雨が降りてきて
だから

今日は傘を
ささないで
この雨に
濡れて歩いていたいと
思うのです


17-20)
舟の舳先には
水先案内の
鳥がいる
天ノ鳥船伝説は
心の底に
夜じゅう止むことのない
波音のように
続いている
神が住まう国は
この海と繋がり
この空と繋がり

時々ISSからの写真に
見入るのだが
地平線の向こう
そこで神は
私たちのいのちを
そっと抱いている


17-21)
風はね
時間だと思うんだよ
地球が回わって
回わって
1日が過ぎていく
ずっと続いている
回転のつづき

回転は風を連れてくる
風が吹くということはね
未来がやってくること
そんなふうに思うよ
もうじき
また春がやってくる
女神を呼ぶよ
たくさんの花が咲くように



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言の葉つづり 小篇(8)

2017-02-01 | 言の葉つづり 小篇
17-13)
宇宙の回転は
いのちを巡らすものだけれど
頬をなでて往く風
回転がもたらす地球の風に
吹かれながら
道端に腰を下ろす

星の光のように
夢の続きを
ヒューヒューと話しているのかも
しれず
通り過ぎていく風の物語を慕い
花や虫が顔をだす
風の種がこぼれ落ちる時間


17-14)
空を見ている
繰り返し見上げている
鳥が青空に急に現れることがある
鳥は空から生まれる
青いベールは柔らかな命を
包みこむ

身を隠しながら見上げている子供達の
あの切り取られた三角形の空にも
砲弾の向こうから
まもなく鳥は飛来しようとしている
青いベールを拡げ


17-15)
父や祖母やあの人が
残してくれたものは
何だろうと
時々思うことがある。
囲いで閉じられた中庭に
足を踏み入れる、
時間は丸みをおびて
陽だまりのように
そこに
いつまでもあって
声、なのです
人の記憶はそこから体温を取り戻し
私に話しかけて来てくれるのです


17-16)
太陽の光は、考えてみたら
太陽の重力から羽ばたいている
宇宙空間の
無重力からさえ解放されて、

そう思った時に
私達の命の重さの引力に驚いた。
薄い花弁にも透明な虫の羽にも
引寄せられる可憐な光、
それは意思のように
私達の希望の先端に
降りてくるものなのだね。


17-17)
夕暮れを歩くのが好き
風に吹かれて歩くのが好き
小さな花を見つけて歩くのが好き

月を見るのが好き
あなたの横顔に
笑みを見つけるのが好き

そして手を繋ぎ
並んで歩いてみようか
するとあなたの好きが
好きになって
幸せって
こんなふうに膨らんで


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言の葉つづり 小篇(7)

2017-02-01 | 言の葉つづり 小篇
17-8)
めぐる風のように
音楽は
いつも空に流れていて
誰かが手を伸ばす

トロンボーンを空に向けて
きみが合図をした途端
クラリネットにも
ピアノにも
集まり出すささやき

信じて待っている人の
懐には
必ずこの星のような
和音のような光が
届くのだって


17-9)
その内側に光を縫い付けて
羽は、舞い降りてくる

どんな隙間にも羽は
届こうとするのだけれど
あなたに触れて
私に触れて
私たちの影の上にも

風が止んだ合間に
鳥は、
生まれたばかりのその羽を拾い
身にまとい
風と光の手紙を預かるように
飛び続けるのだ


17-10)
月の綺麗な晩は
夜の散歩に出たくなる
黒猫のキミは
この路地で何人もの知り合いに合う
その度に、やあ、元気かいと
話しかける

”あの子と、喧嘩した…” 僕は
キミに身の上話をついしてしまって
”満月は見ていたのさ
そして笑いながら
仲直りさせてくれたんだよ”って


17-11)
空にも大きな川が流れている
水のない川には
何が流れているのだろうね
それは音、
小さな音符が光をもらい
時々流れていく

流れ星の行方を知っているのは
森の動物たち
寝静まった部屋へ
帰ってくる猫
飼い主のそばに丸まって
ぐるぐる
星の流れのような
音を立てて


17-12)
プリマヴェーラみたいに
季節を告げる神さまがいて
冬の冷たい風吹くなかには
しまい忘れた枯れ草を集めに
秋の女神と
雪を降らせる雲を
持ち上げている冬の男神さまが
並んでいるのだ
春の女神が時々遊びにくる夕暮れ



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