詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

美しいものを

2014-09-29 | おすすめPoem 記事
物みな光るという。
美しいものが、表に現れているものもあり、
そっと、にじみでているものもあり、
もっと、奥底に沈められている場合もある。

その光るものを訪ねるために歩いていく。
美しいものを見るためのレンズを
いくつも手に持ち、メガネに変えて、
落とさないように、心にも埋め込み。

ある日、美しい夜景の灯りを見ながら
人生の先頭に立つ人に教えられた。
「あの光は、人の苦悩の数だと思って見ている」と。
きれいなものを見ようとする私に
強い電流を流した。
この駅で、本当の美しさに出会うための切符を
買ったように思うのだ。



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又、草のことなど

2012-05-09 | おすすめPoem 記事
草いろに染まる手は、おもしろい。

伸びてきた草を、躍起になって引き抜く。
その痕跡が、指の指紋に入り込む。

しばらくしても、草の匂いが手から漂い、
周辺に拡がっていく。

草が残していったことばを、きいている。
根こそぎ抜いたと思っていても、
それは違うよ、と。

根の繊毛も、種も、土の中に眠っている。
次々に、芽生えてくるのだ。
朝になれば、そして、このところの激しい雨に
打たれて。
脈々と、草の系譜が続いていく。



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Silence 2

2012-01-13 | おすすめPoem 記事
黒い色には、いろいろな色が隠れているように、
しずけさにも、いろいろな音が混ざっていると思う。

季節はずれの引用で、気が引けるが、
「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」
松尾芭蕉のこの有名な句が、何といっても
しずけさの真髄をついている。

時にしずけさというのは、耳が痛くなる位、深淵且つ、
饒舌だと思う。
大きな蝉の声を全身に浴びている時に、急にしずけさが
現れてきたり、逆に、静かな場所に佇む中では、
いろいろな音の気配が押し寄せたり。
しずけさの中は、色とりどりだ。

現代人には、なかなかそんな環境は許されないが、
地球上の生物として、森閑とした空気を感じ、地上の
あらゆる生き物の鼓動と、一体になれそうな瞬間を
感じる時間がほしいと思う。

おののきという、遠い昔からの人間の感覚を呼び覚ます
ように。
しずけさの中の、命が潤うさまざまな音、滝のような
シンフォニーに包まれたくなる。




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Silence 1

2012-01-12 | おすすめPoem 記事
黒い画用紙に、赤や青や黄色の鉛筆で、花火のように
色をぬっても、それぞれの色は、黒い時間の中に、
今にも、吸収されそうな気配を漂わせてしまう。

そして、画用紙ではなく、暗い闇の中では、
どの色も形も飲み込まれて、見えなくなってしまう。

黒い闇は、さまざまな色や形を、その中に、本当は
持っているということがわかる。

光が、あらゆる色を輝かせ、映し出してくれるのと
反対でありながら、
だけど、ある意味では同じように、
黒い闇は、全ての色や形を知り、包含している。




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美しい日本語

2012-01-10 | おすすめPoem 記事
美しい日本語というと、どんな詩のことばや、文学作品を
思い浮かべるのだろう。

名作品、名ことばを、誰かに聞けば、聞いた人の数の、
数倍以上の答えがあると思う。

この頃、子供の教科書に載っていたので、「枕草子」を
久々に読んでみたが、簡潔で、清冽な季節の空気を切り
取るような感覚とことばは、いさぎよい美しさがあって、
心が凛とした。
時代を超えて、ことばは息づいている。

近、現代詩の作品でも、フと思いつくままに、
萩原朔太郎や田村隆一、吉野弘の詩のフレーズ等々、
挙げだしたら切りがない位、魅力に富む詩のことばはあり、
到底、皆書き出すことなどは無理だろうと思う。

新しい思考の角度を開いてくれることば、さらに、
ことばの音の妙味が相まっていたら、
それが私には、宝物のことばになる。

その1つに、異彩を放つ忘れがたいことばがある。
「そはゆうとろどき」ではじまる、高橋康也さんの
ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』中の名訳語だ。

原文はルイス・キャロルの難解な造語の四行詩で、
それを訳した高橋康也さんの造語ことばが、なんとも
すばらしい。

「そはゆうとろどき ぬらやかなるトーブたち
 まんまにて ぐるてんしつつ ぎりねんす
 げにも よわれなる ボロームのむれ
 うなくさめくは えをなれたるラースか」

(それは夕刻であった。なめらかで活発な狸たちが
丘の中腹で地面をひっかき、穴をあけていた。おうむ
たちはまったくあわれであった。そして沈痛な亀たちが
金切声をあげていた)

意味を成すような、成さないような、
この溶け入りそうなことばで始まる夢幻的な詩の状景。
「そはゆうとろどき‥‥」(夕飯をとろとろ作る時刻‥)

日没の移ろいを、毎夕肌で感じる冬至前後の、夕暮の美しい
この季節に、口をついて出てくる詩のことば。

通りがかりに漏れてくる、人の家の明かり、夕食の支度の匂い、
暖かい香りを感じながら、私自身も、この詩の不思議な世界の
生き物であるかのように、人間の生活の様子を、どこか淋しく、
羨ましく感じたりするのだ。

異次元的な、地上に住む生物の不思議な感覚に充ちている、
やわらかな詩のはじまりのことばは、美しく魅力的だ。




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夢がみる

2011-12-02 | おすすめPoem 記事
ずいぶん昔のこと。
渋谷の神宮外苑の絵画館で、
「無限アカデミー」が、現代詩講座を開いていた。

第一線で活躍している詩人、学者、芸術家が
講師となり、古今東西の詩などをそれぞれの
テーマで語った。

顧問も、西脇順三郎、草野心平、佐藤朔、
島田謹二、伊藤新吉、那珂太郎、宗左近、
田村隆一等(当時)となっていて、
毎週、まさに詩の最前線といった多彩な講師陣の
顔ぶれに、ドキドキしながら通った。

今でも、時々、思い出す言葉がある。
詩人会田綱雄氏の「夢が君をみている」
という言葉だ。

独特の詩の世界を創りあげた会田綱雄氏。
ご本人の講義でだったか、他の詩人の講義に
出てきたものだったのかは、忘れてしまった
のだが、私の心臓は鷲づかみにされた。

寝ている時の夢も、人間が抱く夢も、
夢は見るものだと思っていたのに、
夢に見られてしまうなんて。

存在の根底を揺るがされるような思いと同時に、
夢に背中を後押しされているような、
生きている限り大丈夫だというような、
力が湧いてくる言葉だと思った。

生きているということが、
誰かの大きな夢そのものであって、
いのちある限り、一人一人が、
それぞれの夢に進めばいいのだ、
といわれているように思えてくる。

折に触れ、心にフッとよみがえる、
「夢が君をみている」という詩人会田綱雄氏の
言葉は、忘れられない。



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青い鳥

2011-11-17 | おすすめPoem 記事
小さい頃に読んだ本というのは、
心の奥に、低いかすかな旋律となって、
いつまでも残っている。
何本も何本も、音色の異なる細い川となって、
流れている。

「青い鳥」、特別気にして読んだ本では
なかったと思うのだが、時々、心によみがえる。
フと、<青い鳥>って笑顔のことかなと思う。

東日本大震災で、家族や家や町を失くし、
辛い思いをしている人がたくさんいる。
世界中に、貧困や病気や悲しみにくれる人が、
たくさんいる。

身の回りを振り返っても、毎日争いや憎しみなど、
人間の負の感情はおさまらない。

でも、人間ってどんなに辛い時でも、笑顔を作る
ことができる。
被災地の人たちが、信じがたい状況の中で、
笑顔をみせる場面を見ると、
人の力って、すごいと思う。

生きていく術を絶たれて、
不安でいっぱいでも、笑顔が作れれば
なんとかできるような気がしてくる。

誰かと、笑顔で一緒にいる時間を持つことが、
「<青い鳥>つかまえた」なのかな。
<笑顔>なら、誰でも、何十羽もつかまえられる。
きっと。



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あなたへ

2011-07-11 | おすすめPoem 記事
とりとめのない会話は
どこから はじめればいいのか

あなたといるために
とりとめのない会話をするために
さらに
さりげない 日常のことばを
重ねる
伝えたいことばを
心に残しながら

両手にすくいあげた水が
こぼれおち
残った ひとつぶの 水滴に
真実はあるのだと
長い間 信じていた

でも 本当は
手のひらから
あふれて
もれでる 水の流れに
私たちの 想いはあるのだ

すくいきれないものがあるように
「愛している」以外の
もっと 大切な
あなたへの ことばを
伝えるために




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「未来の場所が、ひかっているところ」

2009-10-16 | おすすめPoem 記事
子供に、はじめて目覚まし時計を持たせた。

小学1年生になる練習に、
朝7時に目覚まし時計をセットした。

目を輝かせて、時計の説明を聞く。
「7時になったら鳴るよ」(母)

「どこどこ?
朝の7時って、どこ?」(子供)

「未来の場所が、ひかっているところ?」(子供)

どこから、こんな言葉が降りてくるのだろう。

天啓のような、素晴らしい言葉を教えてくれて、
ありがとう。





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