詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

イマジズムの詩篇(14)

2018-02-05 | イマジズムの詩
43)
美しい青空が
どこまでも拡がる日は、
行ってごらん
木々の落とす影は
どうやら、青いらしいよ。
私たち人間の歩く影も
青く磨かれるらしい
影の世界の模様替え
青の元日。

影に住む人達が
恋焦がれる
一年に一度の
いつかの空
ポロネーズを奏でてよ、
青の元旦。



44)
深い夜がしんしんと
音を立てて
こんこんと寝息を立てて
眠ろうとしている
一緒に寝入る
夜の陰に

もうとっくに葉裏に
くるまれている
生き物たちの
ことを思いながら
月も眠る晩



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イマジズムの詩篇(13)

2018-01-04 | イマジズムの詩
38)
夜のプリズムは
星に光を灯していく
真っ暗な闇に
誰かが置いていった
割れたガラスの器

球体は壊れて
多面体になり、
誰かの希望という名の落し物
を集めるのだが、
何しろ器は
割れているから
自分一人にとどめておけず
漏れ出る光が
乱反射するのだ


39)
夕べの風に会えるかなと
思いながら
戸外へ出てみる
昨日から今日に届いた
時間を
朝の白い景色が
大事そうに包みながら
立ち止まっている

鳥がその嘴で
封を開けていく
新しい日めくりを
覚えて
羽で
今日の風の色を
塗り替えて


40)
ときどき
影は影を抜け出して
きみにささやく
きみはこんなに美しい
僕はきみのどんな小さな悲しみも
どんな小さな痛みも
知っている
僕がついている限り大丈夫
暗闇は僕がいつも一緒にいる
僕の家だから
未明の、地上がほの明るくなる手前、
わずかな光にも
僕はきみを美しく輝かす


41)
諦めていた時に、虹はかかる
雨と陽射しが、織りあげる橋
泣いたり笑ったりするから
本当は、自分の心にも
いつも虹は生まれていて
虹の橋の渡り方を教えてあげる
信じる、という呪文
目を閉じて
もう1度目を開けて
すると
今日、歩いて行く道が
光の始まりのように
そこにあって


42)
歩いていく
人間の足は前を向いて
進んでいくと
歩きやすい

カニはどうして横歩きに
なったのだろうね
顔は前を向きながら

後ろ歩きをする動物も
いるかもしれないけれど
きっと目は
訪れる時の方角を
見ている



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イマジズムの詩篇(12)

2017-11-05 | イマジズムの詩
35)



風は通り過ぎるたびに
羽を置いていく



風は羽を
花の上に
猫の背中に
窓枠に
靴の上に
置いて
通り過ぎていく


36)
こんな日は何が聴きたい?
ディキンスンやイェーツの詩集を
開いているというのに
深夜の部屋で
疲れきった体と頭に
届くまどろみ
ちいさなちいさな王様が
遊びにくる時間に
戸口を開けておかなきゃ
幸せを呼ぶ第一語は何?
今日、初めて会話するのは
青い鳥と決めている


37)
美しい羽を持っていらっしゃい
そこにあるものを
どれでもいいわ
選んで、持っていらっしゃい
今日はあなたは
その羽を身につけるといいわ
茶色い羽
いいわね、
きっと、それを選ぶと思ったわ
キジバトの羽よ
ゆっくりするといいわ
それで、明日は、何色にする

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イマジズムの詩篇(11)

2017-11-05 | イマジズムの詩
33)
オレンジが転がりながら
朝の境界線を超える
目覚めた時には
空は青い色を取り戻している
地表を覆う植物が
この星を司る王国であることは
人間だけが気づいていないが
鳥も虫も猫も
みんな知っている
海と空を行き来する
夜に蠢くいのちの所作を
家の飼犬も知っている


34)
あれから鳥語を
少しは話せるように
なったのだろうか

書きかけのノートを
開いては
鳥の足跡のような
符号を書いてみる

木陰から鳥が
レッスンの続きを
始める

空には美しい音色が
隠れていて
君の傍に降り立った鳥は
今日はどんな言葉を
教えてくれるのだろう


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イマジズムの詩掌編(10)

2017-08-17 | イマジズムの詩
32)
人を祝福する言葉を
言ってみるの
言葉を失い、無口になっている時に
どんな言葉を無くしているのか
どんな言葉を落として来てしまったのか

あなたにおめでとう
よかったねって、言ってみる
すると、
優しい言葉が次々に出てきて
今日という日に
間に合うように


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イマジズムの詩掌編(9)

2017-08-12 | イマジズムの詩
31)
水を撒く、
照りつける太陽に
花や葉が枯れないように
鳥の喉がうるおうように
虫が水浴びできるように
魚が干上がらないように
水の種を撒く
雨が降りやまない土地には
青空の種が大急ぎで芽吹き
天高く伸びていきますように
種には願いが込められていて、
水を撒く


30)
私たちは笑ったり
泣いたりしながら
歩いていく

悲しみがいっぱいの時は
そっと微笑んでみる
そのうち
雨みたいな涙が
止んでくる

微笑みは
神様からのプレゼント
どんな時も、開けてごらんと
手渡された
誰かに微笑み返せば
優しい音楽のつづきが
流れだすように



29)
夜が明ける前
眠っているきみの胸に
太陽は、
金色の卵を
産み落とす

あちらの家にも
こちらの家にも



28)
白い風船、というのは
あまりに絵画的
形而上学的なイマージュ、

白い吐息を詰めてごらん
徐々にまるみをおびていく
球形のふくらみに
唇をのせて

そう言ったとたん
白い風船が次々に
青空に、はじけそうになり



27)
昨日は ごめんなさい
と言ってみて
何のことだろうと
君も 私も首をひねる、
君とは 樹の上の鳥


26)
それは、はじまりである必要はなかった
いつでもよかった
星降る晩と
言い出してもよかったし
星のない晩と言っても
よかった
どちららも 私には同じことを
言おうとするための
プレリュードであったのだから、
あなたに


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イマジズムの詩掌編(7)

2017-06-18 | イマジズムの詩
19)
ふっと摘んでみたくなる野花
拾ってみたくなる小石
そんな詩が
あなたの望む詩だと言う
それは、宇宙だね。



20)
白い波頭
青い海
黄色い砂粒
の上を歩き続けたかった
だからママからもらった赤いヒールを
履いたことがない
クローゼットにしまったままの
真紅のコート
だが
緑色の大地も
アスファルトの上も
ママの祈りは
赤い血管のように
今日も私とママを
繋いでいる



21)
涙を流しながら
産み落としてくれた人がいる

ウミガメの産卵は
闇を切り開くがごとき痛みに
次の光がはじまることを
教えてくれた

娘たちはある日父に
そろそろ出かけるように
言われ
暇乞いする満月
新月へと歩いていく



22)
水しぶきがあがりそうな雲
空を見上げて
人は何を待っているのだろう

もう待たなくていいよ、と
雨が降ってきた



23)
ビーンズ ビーンズ ビーンズ
瓶に入ったビリーバブルな
ビーンズ ビーンズ ビーンズ
信じられることは何か
生きているってことだよ
今食べたいのは
ビーンズ ビーンズ ビーンズ
固くて塩辛い、
噛み砕いていると
味が脳内に沁みていく
ビーンズ ビーンズ ビーンズ



24)
四角い透明な箱を
取って下さい
砂糖か塩か
見比べているのですが。

ホロホロと崩れかけていく白い塊は
甘味であり、
固く固くさらに透明になっていきそうなほど
純粋を貫いていく塩の加減と惹かれ合う。
分かること分かり合えないことに
惹かれてゆく純白の思想を覚えていく。



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イマジズムの詩掌編(6)

2017-06-18 | イマジズムの詩
16)
春の川が
サラサラ流れる
光は水底(みなそこ)にとどき
水玉のように
回転しては流れゆく

サラサラ サラサラ
夕映えの川面(かわも)

ここは、光の産卵の場所だ、
と、風が教えては
通り過ぎてゆく



17)
花となり
実となるまえに
あなたに会いにきた
夕べの風
が、ドアをノックする
明日咲く花は
どんな色を想像しようか
無明の風には
誇らしげな褐色の太陽
青い水滴
もんき蝶が話す花言葉
枯葉の放つ緑色の夢が
詰まっているに
ちがいなかった



18)
風は何度でも、吹いてくる
風乗りに、失敗し続けても
風はまた、吹いてきてくれる
風はついに、
大きな羽を取り出して
これに乗るように
差し出してくれる

傍らで
鳥達が、半ば呆れ顔で
それなら、乗れるでしょ、
と心配しながら
美しい飛び姿を見せて
飛んで行く


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イマジズムの詩掌編(4)

2017-03-11 | イマジズムの詩

あわれなるりんごひとつ
あわれなるは真っ赤に熟れた
あなたではなくて
あなたを見ているこの
わたくしの感情である
あわれなる店さきにて
あなたは忘れられた
季節は残酷にも
あなたを置いて
行ってしまった
わたくしはあなたを
両手に包んで帰ろうとおもう
雪ふかき田舎で
母が手際よく皮を剥いてくれた
あなたというわたくしに流れた時間を
おもい



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イマジズムの詩掌編(3)

2017-03-11 | イマジズムの詩

ひるさがり
太陽のいばしょを
じめんにのびた
じぶんのかげに
きいてみる
じぶんとは
ほんとうはどこにいるのか
じつにたよりない
気がするもの
だけれど
1秒2秒と
変化し
うまれでるせかいを
あるいていくのは
この足
きこえてくる
じぶんの足音



今日と昨日のあいだに
境界線などないはずなのに
光にかたどられた
今日という輪郭が
できあがっていった
あなたと私にも
境界線などないはずだった
もうじき
闇に閉じられ
また私たちは
星の輝く平原に
戻っていく



たくさんの孤独
たくさんの夢を
知って
口笛を吹く
そして
雲に覆われた夜空を
見上げるのだが
そうだ、
雲は人間のように
前と後ろがあって
宇宙を向いた雲のかおは、
月の光を耕す田園のように
冴えざえと
しているのだと
知るだろう
まもなく、
光が
漏れてくる


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イマジズムの詩掌編(2)

2017-03-11 | イマジズムの詩

涙壺に
涙の雫を落とす
ブルーのガラス瓶に
曇ガラスの瓶に
家中の瓶に
いっぱいになり

次は
空になった紅い香水瓶に
涙を入れてごらん
涙は
香りを身につけて
夢見て
眠りにつく



鳥は巣を作った木を
覚えていた
常緑樹の葉陰に潜り
いま、戻ってきた、とばかりに
鳴きだした

まだ、冷たい
凍りつく朝
人間が窓をガタンと
乱暴に開ける音にも
慣れていて
ここがいつかの場所だと
帰ってきたのだ
白い花弁よりも
誰よりも先に



落ちる落ちるちるちる
落とす落とすとすとす
ちるちるちる
とすとすとす
地面に落ちるみちるものもの
落とすとすとす音するもの
おとおとものそれは
すもも



灼熱の舗道
粉雪の舗道
水溜りのできた舗道

歩いていく



夜更けに
葉の陰で
鳥は
いつまでも寝ない人間の
話を聞いている
目を瞑りながら
聞いている
朝の光の足音を
聞き逃さぬように
一番鳥は
耳を澄まし
誰かの寝息を
聞いている


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イマジズムの詩掌編(1)

2017-03-11 | イマジズムの詩

白い柵のむこうに
レモンが実る
オリーブの畑は
褐色の葉に覆われて



象牙海岸の名前は
記憶されるべき
両極に揺れて
このにほんの浜辺に
立ちて望む音の意味

歩道を叩く雨
ヒールを履いた女も
野良猫も
遠ざかり
ビニールの屋根の下に
鈍く灯が灯る店の
窓はくもる
グラスに赤い葡萄酒が
注がれていく
雨、雨



ビルの角を
折れる
つづらおりの
山の
曲がり道の
ように
ビルの角を
折れて
折れて
折れて
いく
目的の場所
まで



雪の上に
円をえがく
土が透けて
白い丸が
浮かびあがる

今日は雪が降った、と
明日になり
雪が溶けてしまわぬうちに
今日は雪が降った、と
白くなった地面に
刻印する



石の声を聞きたいと
鳥は上空から降りてくる
赤い実を啄み
石に奉納する
石は地球の時間の
神様なのだ
鳥は空に住んでいるが
時々星の光の先端となり
角ばった小石に
止まってみるのだ
何年何月何日という
記念日を知りたくて


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イマジズムの詩…

2017-03-11 | イマジズムの詩
今の時代を生きてる人の心を通って、ものが見えてくるような言葉の詩を、写真に収めるみたいに数行に描いてみたい。また野望ですが。失敗ばかりだと思うけれど、何作かのうちには、1作くらい、光る詩が生まれるかも、そんな今のイマジズム詩探しの”イマジズムの詩 ”を、ポツポツ作っていきたいと思います。


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