詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

涙壺を見つけるまで

2015-04-29 | interest
雨のように
涙も 天からそそがれた一滴の
連続だとしたら
静かに 花びらを
涙受けにして
その滴を
いただくことにしようか

涙壺というものが
流行った時代があった
誰しもが
家の棚に
しまいこんでいた
涙が出そうになると
家族が順番に
壺を持ち去り
外へ出た
集めた滴は
壺を美しく磨いた

暮らしに困ったら
光を夜空に乱射する
その壺を売るように
言い伝えられていた

だが
誰も売りはしなかった
涙壺は
時代が変わると
消えていった
新月の夜に
軒下に埋められて
土に帰っていった

そこには
林檎が育ち
葡萄が実り
私たちの涙も
乾いていった

今、涙壺を
探している
骨董屋にも
器屋にも
注文が多いという

涙壺を見つけるまで
はらりと落ちた花びらに
悲しみを知る詩人を真似て…
涙を掬ってみる



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無言のうちに 女は

2015-04-23 | フリー Poem
無言のうちに
女は
いつしか母のような強さを
縫い込まれていく

女の子のへその緒には
過去から
未来へ滑り込んでいく糸が
丸く丸く用意されていて

誰に教わらなくとも
その糸を
伸ばし始める
誰にも言わない
と決めた覚悟は
きっと
天井界の方との約束なのだ
花を見に来たかったから、
女は
きっとそれだけの理由で
ここに来たのかもしれない
私たち女の論理
に咲く花
咲く光

女はでもその女の論理さえも
覆せる いつだって

誰にも言わないと決めた覚悟は
女だけが知っている宇宙
どこから来て
どこに行くのか
未来永劫
過去から未来の科学者たちが
血眼で謎解きをしているが
女たちは言う
どこから来て
どこへいくのかって?
決まっているじゃない
私たちの女のお腹から来て
次のお腹に帰るのよ、と

女は海に生きている
口を閉じると
隣に座る女たちの
誰にも言わない
声が
貝殻のひびきのように
ひかりだして


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talk about you

2015-04-21 | interest
そう ちょうど 
桜の花びらみたいな
蝶が飛んできて
…talk about you
というんだ
勘弁してくれよ、と思うよ
もう 何日もつづく徹夜明けなんだ
自分のことをずっと書いていたんだ
なのに これ以上話すことなんてないよ
まして なんで蝶々みたいな君に
話さなければならないんだい
取りつく島もないくらいに
言い放ってみた

ひらりと舞い上がり
…talk about you
蝶々みたいな君は
繰り返すばかりだ
…talk about you
(素敵な未来がやってくるというのかい)

…世界は物語に満ちていて
みんなの時間の糸を
必要としていると喋りだす
イソイデル
…talk about you

色鮮やかな鱗粉をまき散らし
(それは散華のように)

肩に降りかかったせいかな
…talk about you
君の気分が移ったようだ
とっても大事なことのような気がしてきて
…talk about you
悪いけど、少し
分けてあげてよ 貴方の話
…talk about you
未来はみんなの過去からつづくらしい
毎日 夜から朝が明けていく
闇が光を包みこみ 
何度でも光は闇の中ではじけでる
それは奇跡ではないらしい
未来とは光の方角に見えるものであり



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猫の偶然

2015-04-14 | フリー Poem
黒猫が居ついたのは 偶然だった
偶然という言葉は しばらく
呪文のように 私の心に住みついていた
偶然は 神様の化身かもしれなかったし
池に放たれた 金魚の自由かもしれなかった

黒猫は 待っていた
私の足音 走りすぎる車の音
雨の音 遠雷 舞い降りる寸前の
高い空の鳥の羽ばたき 虹のかかる音さえ 

猫の耳は 宇宙につながっていて

黒猫の真似をして 目をとじてアンテナを張る
金色の陽に光る蜘蛛の巣みたいな
アンテナを
するとどうだろう
黒猫の気まぐれのような偶然が
宝物をひらいて見せてくれる

君たちがいったい何に出会っていたのか
カップの中の半分のコーヒーも
途中で止まった洗濯機も
遅れ気味な電車も
混み合う店先に並んで待ちながら
私たちが手にしているのは
君たちの愛する
自由の気配であると気がついた

猫たちは自由の掟を持っていて
私たちの不自由さを笑っている
本当の不自由さは
何も気づかないでいることだよ、と
教えられる
黒猫の日暮れ時は まだまだ続き
膝のうえに乗りながら
次なる自由の気配を教えてあげると言う
気配は偶然の使いであって
偶然は神様の使い
そして神様は

黒猫は偶然の気配に抱かれると
ぐっすり寝息を立てる
横で人間も休むといい



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フィクションて大事だと思う

2015-04-12 | トークタイム
フィクションて大事だと思う。
文学とか芸術が必要。
現実とフィクションを客観視して
知ることが大事だと思う。
現実の中では真実というものは捉えがたい。
時としてフィクションの中に
真実は描かれるものだとも思う。

フィクションを享受して精神的な弾力を
培わないと、生きる日々が些末な意味に
がんじがらめになり息苦しくなる。
直情的に攻撃的になったり、
悲観的になったり1つ1つに
過敏になりすぎてしまう。
良いものに囲まれていても猜疑心に満ちたり、
現実に狂気が入り込んでしまったり。

もっと可笑しくて、情けなくて、
でも頑張ってしまったり、弱かったり
急に立ち直れたり、立ち直れなかったり。
緩やかな時間が無理であるなら
深度を持った時間の中で、
あぁ~、なんて暖かい目で理解して
許しあったり助けあったり。
人間てそういう振り幅の中で成長していると思う。
それは社会が成熟していくことでもあり。

登りは良いのだけれど、
談笑したり励まし合ったり、先に行く人を
仰ぎ見たり、人の息づかいも聞こえてね。
でも、坂道は登ると下らなければいけなくて。
…坂道を走って下って行ってはダメと、
小さな子供に声かけるんだけど、
そんな感じがする。
自分もみんな余裕がなくて。




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共通言語と共有言語…

2015-04-09 | トークタイム
共通言語と共有言語について
朝から、途切れつつ考えている…。
人にとって共通言語は、はじまる言葉。
共有言語は、拡がりと深度を持ち、
理解しあったり信頼関係を結んだり、
時間を越えて連続するダイレクト言語。

絵を見たり、詩を読んだり、
柔らかい部分に触れてくるものは
こちらの領域と思うが、
伝え合うためには
時々、言葉を変換しなければならない…。

…共有言語の海は広いので、
人は居合わせたお互いの居場所を確認すべく、
手に触れている魚を時々、
注意深く釣り上げて見せあうことが大事で、
そこに醍醐味がある。

…思いや行動は一人歩きを
してしまうものだが、
時に、共通言語の網を投げあい
言葉を大切に使うことで、
人は共有できる感覚を膨らませ
遊びあうことができ、
ホッと、親しみや信頼を
深めることができるのだろうね…。



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