詩の現場

小林万利子/Arim 「詩のブログ」 詩をいつも目の前に
小林万利子/Arimの詩とエッセイと音楽Arim songs

ネコのペコリ 4

2015-12-21 | interest 2
ペコリは、大好きな絵本やさんのお店に
やってきた。
大きな花束と、一輪の大事な大事な花を
店の入り口に置いた。
「病気がよくなるまで、
僕たちが店番(みせば)をしてあげるよ。」
「心配(しぱい)しないで、ゆっくりしてにゃ」

すると、ペコリはおまじないをかけだした。
「ン」抜きのおまじない。
おしまいのないおまじない。
つづく、つづくのお話しやさん。
病気の治るおまじない。
願いがかなうネコのおまじない。
「さあ、元気(げき)になってね。」ペコリより

空に星が輝く時間。
絵本の中のお星さまとの約束。
3つめの流れ星にのって
絵本の世界に、戻っていく。
いつも一緒のペコリ。
絵本のネコは、たいていなんでも知っていて、
困っていると、助けにきてくれる。


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ネコのペコリ 3

2015-12-21 | interest 2
ネコは知っていた。
この病気に効くのはこの草、オオバコ
その病気に効くのはその草、ハコベ
あの病気に効くのはあの実、クコ
そしてご主人の病気に効くのは、
こっちの花だって。

ペコリは、昔聞いたことのある
ネコの国の700才になる長老の家に
行くことにした。
「この花で、間違いはないですか?」
「そうじゃ、そうじゃ、これだ、これだ。」
長老ネコは、ぺたっと、見事な肉球の
ありがたい足判を押してくれた。

ペコリは、大事な大事なこの花を
宝物のようにリュックにしまった。

そして、山を1つ、2つ越えながら、
世界中の色を集めたような
色とりどりの花を、
両手一杯に摘んでは摘んで
大きな大きな花束にした。


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ネコのペコリ 2

2015-12-21 | interest 2
ポトっと、雨が降ってきた。
それが、出かける合図だった。
ペコリには、絵本の世界を
抜け出さなくてはならない
大事な大事なわけがあった。

ペコリの家の大家さんのような、
いえ、ペコリの町の町長さんのような、
いえ、ペコリの国の王様のような、
大好きな絵本やさんのご主人に、
お花を届けにいきたかったから。

「ご主人は病気です。」
一週間前から、絵本やさんの店先には
張り紙がでていた。

絵本の中では、ちょっとした騒ぎに
なっていた。
象も虎もライオンも
ネズミも狸も
小さな女の子も男の子も
蜘蛛もコオロギも
鳩もアヒルも
とにかく、みんなが心配していた。

ペコリは、絵本やさんのご主人が大好きだ。
だから、1日絵本を抜けだして
きれいな花をたくさん摘んで
届けようと思った。


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ネコのペコリ  1

2015-12-21 | interest 2
絵本の中からでてきたネコがいる。
名前は、ペコリ。
ペコリンにしたかったのだけれど、
五十音のおしまいの「ン」がつくと、
なんだか縁起が悪いと、
この飼い主は考えていた。
だから、ペコリ。

謝るときは、ごめ。
返事は、う。
あんこは、あこ。
運だめしは、うだめし。
ごはんは、ごは。
こんばんわは、こばわ。
…飼い主から教わった言葉は、
すべてこの調子。

ンには、悪かったけれど、
ンがなくても、ネコたちは
あまり困らなかった。
「ン」、ごめね。
ペコリは、ペコッと
お辞儀をして、絵本を抜けでた。


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鏡の国のねこ

2015-07-30 | interest 2
深夜2時をまわると
鏡の国のドアがひらく

ようこそ、
誰かがドアを開けるのを合図に
鏡の国の妖精はでかけていく

すると留守番のねこたちが
かわりばんこに顔をだし
…ねぇ、きみ、鏡の国を知りたくないかい
…きみのともだち、鏡にむかって何してる?
と きいてくる

…鏡にむかって微笑んでる
…鏡のなかは だから
 誰かの微笑みで一杯なのさ、
…窮屈なくらいさ、
…それで
…鏡の妖精たちは
 大忙しで持ち主に返しに行くのさ
…枕元にそっと微笑みの詰まった袋を
 置いてくるんだ
…朝までにね…

…さあその間、鏡の国のドアを開けた人、
…ぼくたち留守番ねこの相手をするきまりだよ、
と教えてくれる

1番目は、喋らないねこ。
私は困り果て、"今日はね、少し誰かと話をしたかったんだ"
と言うと、うなずいた

2番目は、笑うねこ。
"今日はね、もう少しばかり、悲しいままにしておいて
くれないかい"
うなずいて ねこはすわる

3番目は、逆さ言葉を話すねこ。
仲良しのねこだ。
"きみはここにいたんだね"
"でもね、今日はね、とても頭が疲れてしまっていてね、
ごめんね"
うなずいて ねこは丸くなる

さかだちをするねこ
しっぽで歩くねこ
ハープを掻き鳴らすねこ
そして
この国のノーベル賞をもらったねこ
微笑みの分量計をつくって
微笑みの永久保存の方法を発明したねこ
の話を聞いていたら、
外はだんだん、明るくなってきた

妖精が帰ってくる時間
鏡の国にはまた微笑みが山のように集まりだし。
ねこは私の悩みや疲れを、微笑みとそっくり
交換してくれて
寝床へ帰っていく

ドアに鍵をかける音が聞こえてきて
私は自分の部屋に戻る時間
鏡をとじて、目をとじて
ではまた明日…


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空に星が光るとき

2015-06-28 | interest 2
星がまだ 宇宙を運行する天体ではなかった頃
夜のおとずれは 小さな子供たちの引く
カーテンが合図だった
1人 2人 3人…
絵の具箱をひっくり返したように
代わりばんこに 布を取りだしていき
最後の小さな子供が
黒色のカーテンを引き終わる

次に 星の飾りを持って 少年たちが
戸口から出ていく
少年たちの自転車は
いつも はしごを積んでいた

だが 8番目の少年の自転車には
はしごが積まれていなかった
ここのところ 空に
星が 1つ足りないのは
そのせいだった

星の形をした小さな街
星の飾りを作るガラス工房と
星磨きの道具屋
はしごを作る木工屋
自転車の修理屋
ペンキ屋が 建ち並ぶ

スピカという名の少女が
街はずれに住んでいた
このペンキ屋で働いていた

8番目の少年のはしごを
今日こそは届けなければならない
街じゅうの人に頼まれ
木工屋に頼まれ
スピカはでかけた

白木のままのはしごは
8番目の少年のもとに届き
少年は星の飾りを持って
空の一番高いところまで
上っていった

スピカは はしごを押さえながら
ペンキ屋の仕事をはじめる
はしごの足元が
白く光ったと思うと
みるみる
赤橙黄緑青藍紫の帯色に
仕上がっていく

セキトーオーリョク…
セイーランー…
シー…

スピカは歌いながら
どこまでも 伸びていく
長い 長いはしごに
暗闇でも光りつづける色を
塗りあげていく

夜空に 虹がかかる時間を
知ってる?

8番目の少年が
空に星を飾っている時
スピカが はしごの下で
少年を見上げている時間だと
おぼえていて




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のらねこのマーサ

2015-01-27 | interest 2
きみにあいたくなったら
ひみつのとびらをあけるよ

ニャーゴといって
一声 なくんだ
それが合図だ
ママに気づかれないように

マーサ
きみは ぼくにあいにきてくれた
ぼくも きみにあいにきた

だから
マーサは 自由なぼくの友だちだ
もう決して のらねこなんかじゃない
きゅうくつな飼い猫でもない
きょうから きみは
ネコの王さまになった



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見えるもの 2

2014-11-22 | interest 2
重たくなった雲から、ポツリとしたたり落ちる雨粒が、
僕たちの首筋をひんやりさせる。
僕は歩く。

どしゃ降りになるだろうこんな日は、
捨てネコが、旧い家の軒下に隠れている。

美しい目をしたネコ、
小さな声をあげるネコ、
近づけば行ってしまう傷ついた子ネコ、
僕は、心底この子をなぐさめて
あげたいと思うのだけれど
できないかもしれなくて、
だから、じっと見つめる。
ネコも、僕をじっと見て。

ああ、宇宙ってこんな感じ。
ここは銀河の果てかも知れないけれど、
僕たちは、宇宙のまん中にいる。

りょうちゃんがいて、
ネコがいて、僕がいて、
お母さんがいて、友達がいて。

僕と同じものが見える人、
僕と同じものが見えない人。
宇宙は、そんな僕たちをいつも見ていて。

宇宙の中で、手をさしだしてみる。
誰かと、何かが同じだと感じてみたくて。

僕たちは、歩きだす。



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見えるもの 1

2014-11-22 | interest 2
りょうちゃんは、隣のクラスに転校してきた男の子。
休み時間はいつも一人きり、僕は廊下を通りかかるたびに
椅子にすわったままでいるりょうちゃんの姿が
気になっていた。
りょうちゃんとは、一度も口を聞いたことがない。
でも、りょうちゃんの目にうつるものと
僕が見えるものは、きっと同じだと感じていた。

いつだったか、りょうちゃんの机の上に
小さな宇宙が拡がっているのを見た。
扁平したもの、まん丸のもの、とがっているもの、
どれも手のひらに隠れてしまう程の小石たち。
光に閉じこめられて動かなくなってしまった黄金虫。
幼虫がはみだしてきそうな木の実の山。

僕たちは、知っていた。
家では、お母さんが洗濯槽の底に
この小さきものの残骸を見つけ、絶句していることを。
みんなの悲鳴を聞きながら、戸外に飛びでると
そこから、僕たちの宇宙ははじまると。

枯れ葉をバリバリ踏んで、砂利道をザクザク歩いて、
水たまりをジャブンといわせて。

そろそろ、冬がやってくる。



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