ハビエル・バルデム主演の「BIUTIFUL ビューティフル」を観ました。
ずっと気になっていた作品で観終えてからもずしーんと心に残る映画でした。
2010年製作、スペイン/メキシコが製作地域。
監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ氏はメキシコ出身で、あの「バベル」や「21グラム」「愛する人」などを手掛けた力のある監督です。
おもな内容は・・・
スペインの裏社会で生計を立てるウスバル(ハビエル・バルデム)は、あらゆる闇取引に手を染めながらも、愛する2人の子どもと情緒不安定の妻を支えて暮らしていた。
ある日、自分が末期がんであることを知ったウスバルは、やがて訪れる死の恐怖と闘いながらも、家族との愛を取り戻すために新たな決断を下すのだが・・・。
(シネマ・トゥデイより抜粋)
最初の指輪のシーン、そして雪の積もった林でウスバルが会う若い男性・・・
その意味は初めはわからなかったけれど、ラストでわかる様々な想いがとても心に残りました。
バルセロナと言ったらにぎやかな観光地としてのイメージがあるけれど、ウスバル達が暮すのは
殺伐とした貧民層の集まる居住区。
様々なブランドのコピー品を売らせたり、ドラッグの取引も仕切るウスバル。
そして摘発を逃れるためにはしっかりと警察官に賄賂も渡すが綱渡りの日々だった。
家庭は双極性障害の妻と別居し、娘アナと息子マテオの世話に追われ気持ちにも余裕がまったくないウスバル。
そんな彼ががんに侵され余命宣告を受けるのです。
ウスバルは裏社会の仕事をして家族・・・特に子ども達のために必死でお金を残そうとますます危ない仕事をするのですが・・・・。
仕事を斡旋した中国人を思わぬ事故で死なせてしまったり、麻薬を売る手下として使っていたセネガル人エクウィメが逮捕されたり、物事はどんどん悪い方へ進んでいくのです。
血尿が出る最悪な体調で、ウスバルは子ども達に愛情を注ぎながら、最期の日まで必死で闘う彼の表情は見ていて胸にせまるものがたくさんありました。
全てを相談できる霊媒師仲間?の女性ベアに言われたのは死ぬ準備の確認と子ども達としっかり別れる事の必要性。
父の具合を心配する娘アナと最期の別れが出来たのは良かったな・・・
そして、冒頭の雪のシーンは自分が小さい時に死んでしまった父親と会い、導かれていくシーンなのですが、そのあたりは二人の表情もとても良かったです。
死んでいく無念さはまったく感じられずに、亡き父の若いままの姿をウスバルが見つめる場面がとても良い・・・
さて、物語の中でいくつか疑問に残ったのは・・・
ウスバルが死者と話ができる(?)という設定は不思議でした。
天井に張り付く人の姿を見た時はちょっとびっくり。
それから一番の疑問がこれ。
セネガル人の妻イヘがウスバルの子ども達の世話をしたり、ウスバルの看病をしていましたが、
最後にウスバルから大金を預かり「子ども達を頼む・・・」と言われたのですが。
イヘは自分の幼子を連れてお金を持って空港へ。
その後イヘはどうなったのか?
ウスバルの部屋に戻って来たのか?
セネガルに帰ったのか?
それとも大金を誰かに奪われたり不慮の何かが起こったのか?
このあたりの解釈がはっきりわからずにウスバルが死んでしまうようで、とても気になりました。
イヘはどうしたんだろう・・・
映画は全体的に暗いし救いようのない闇の社会の現実がまざまざと描写されていました。
その中でウスバルが家族を想う強い愛をところどころで感じられて、父親としての存在感もありました。
最近、暗い映画ばかり観ている私ですが、この「BIUTIFUL ビューティフル」は心に強く残った作品でした。
今回の評価は・・・ 星4つ ☆☆☆☆
正しいスペルではない「BIUTIFUL」
教えられたアナはずっとずっと父の事を想うでしょう・・・
「ノーカントリー」や「それでも恋するバルセロナ」は何も残らなかったけど
「空を飛ぶ夢」とこの作品「BIUTIFUL ビューティフル」のハビエル・バルデムはすごく良いです!