[3月8日12時30分 天候:晴 静岡県駿東郡小山町 足柄サービスエリア]
海老名サービスエリアを出てから、更に1時間ほど走る。
途中で東名高速名物の下り線限定、左ルートと右ルートに分かれる区間を走行する。
高橋は迷わず右ルートを選定した。
大型車は左ルートを通行するように、電光表示板で案内されている。
JRバスなど、バス停が左ルートにしか無い為か、迷わず左ルートを通行している。
JRバスでない高速バスや観光バスなどは、右ルートを走行することもある。
もちろん、法的に明確に選別されているわけではなく、JRバス以外はどちらでも通行して良い。
そこを過ぎると、左右ルートが合流する。
少しの間が登りが続く為、登坂車線があるのだが、足柄サービスエリア下り線は登坂車線の途中にある。
高橋「着きましたね」
愛原「おー」
高橋「どこに止めますか?」
愛原「なるべく、大型駐車場の近くがいい」
高橋「分かりました」
平日のせいか、大型駐車場にはバスよりトラックの方が多く止まっていた。
近くの普通車用駐車場に車を止める。
お昼時であるが、恐らく今はフードコートも混んでいるだろうから、少し時間帯をズラして行くことにした。
その前に、大型駐車場の調査である。
愛原「えーと……デイライトの情報によると、蓮華が乗っていたトラックが止まっていた場所……ここだ」
高橋「ここっスか」
今は別のトラックが止まっている。
何やら大型重機を積んだトラックだった。
これでは法定速度通り、時速80キロくらいまでしか出せないだろう。
愛原「トラックはこういう平車じゃなくて、箱車だった。箱の中から非常ボタンが押されたので、運転手が慌てて見に行ったところ、そこから蓮華が飛び出してきたそうだ。呆気に取られている運転手を横目に、蓮華は暗闇の向こうへ消えて行ったという」
高橋「暗闇の向こうって、どっちっスか?」
愛原「そりゃ暗い方だから、建物とは逆方向だろう。つまり、あっちのサービスエリア出口の方だな」
高橋「あっちって、ガソスタがありますよ?」
愛原「そうか。海老名と同様、ここにもガソリンスタンドがあるのか」
高橋「そうです」
ガソリンスタンドがサービスエリアの出口に近い所にあるのは、入口付近に造ってしまうと、給油の車で混雑した時、その車列が本線の方まで出てしまう恐れがあるからだそうだ。
今はそんなに給油待ちの列なんて見たことは無いが、高速道路黎明期の頃はそれが懸念されるほどだったのだろうか。
そこまで歩いて行くと、ちょうど大型トレーラータイプのタンクローリーが油の納品をしているところだった。
スタンドの地下に埋められたタンクに、ローリーから油をホースで移し替えているところというわけだ。
また、給油スタンドの所には給油中の乗用車や大型トラックがいた。
愛原「これさ、逆に給油中の車に便乗したりとかはできないかな?」
高橋「乗用車は無理だと思いますよ」
愛原「だとしたらトラックか?」
高橋「適当にヒッチハイクしたりとか?」
愛原「今時、ヒッチハイカーなんか乗せたりするかな?」
高橋「あるんじゃないスかね」
愛原「うーん……」
私には、とてもあんな怪しいギャルみたいな姿をしている蓮華をホイホイ乗せるとは思えなかった。
愛原「……怪しいギャルみたいな姿だな、あいつ」
高橋「あー、そうっスね。白ギャルっスか?」
愛原「元は清楚な女剣士だったのに……」
高橋「銀髪で、所々赤く染まってる髪とか……ギャルっつーか、ハードロッカーっスかね」
愛原「あー、なるほどな。お前の知り合いにいたか?」
高橋「ま、いないことも無いって言いますか……」
愛原「……もしもだよ?その、蓮華みたいな姿をしたギャルとか、ハードロッカーというかヘビメタというか、そんなのやってそうな女がヒッチハイクしてきたら、お前は乗せるか?」
高橋「後でパールにバレたら刺されそうなんで、俺は断りますね。ただ、彼女ナシのヤツなら乗せるかもしれません」
愛原「当たってみるか?」
高橋「昨日も平日だったんスから、そういう遊び目的の車とかいますかね?」
愛原「平日でも、これだけ多くの車が出入りしてるんだ。中には、そういうナンパ目的の車とかも出入りしていたかもしれない。考えようによっては、平日でそんな車は少ないんだから、見つかればだいたいその車ってことさ」
高橋「なるほど。でも、どうやって探すんスか?」
愛原「お前も走り屋の時、よく高速で給油してたか?」
高橋「高速を走る時は、入れてたこともありましたよ。まあ、だいたいは行きつけのスタンドで入れたりしますけど」
愛原「ちょっと善場主任にに相談してみよう」
私は自分のスマホを取った。
そして、今の状況と推理の内容を説明する。
善場「分かりました。それでは関係各所を通して、愛原所長に協力するよう対応しますので」
愛原「ありがとうございます。具体的には、監視カメラの映像を見せて頂ければと思います」
善場「かしこまりました。具体的にはどのカメラになりますか?」
愛原「はい。ガソリンスタンドのカメラですね。もしかしたら、蓮華はガソリンスタンドで給油中の車に便乗した可能性があるので」
善場「ガソリンスタンド……ですか。かしこまりました」
何故か電話口の善場主任は、意外そうな口調だった。
愛原「何かありましたか?多分、既に警察が調査済みだと思いますが、改めて……」
善場「いえ、それが……」
愛原「ん?」
善場「確かに足柄サービスエリアにはエネオスのスタンドがあるようですが、特に捜査依頼などはしていなかったようです」
愛原「どういうことですかね?」
善場「経営が違うのでしょう。サービスエリアの運営会社と、エネオスのスタンドでは」
愛原「ああ、でしょうね」
この場合、ガソリンスタンドはサービスエリアの敷地内にテナントとして入居するような形となるのだったか。
地代はそこを所有しているネクスコに支払う形となるんだったかな。
それで赤字が続くと維持できないってことで、撤退したりするわけだ。
まあ、この大型サービスエリアでは有り得ないことだが。
善場「多分、地元警察やBSAAも、サービスエリアの運営会社などに監視カメラの映像の確認を依頼したのだと思います。で、サービスエリアで監視している映像は確認していると思います」
愛原「はいはい。でも、ガソリンスタンドの方の映像は確認していないと?」
善場「恐らく、サービスエリア側からでもガソリンスタンドは見えるので、それで十分だと思ったのかもしれません」
愛原「なるほど」
しかし、よく見ると、サービスエリアの建物からは視覚となっているであろう部分もあるのだが……。
善場「とにかく、スタンドの経営会社に依頼しておきます。しばらくお待ちください」
愛原「よろしくお願いします」
話が伝わるまでに、私は先に昼食を取っておくことにした。
これで私の推理が間違っていたらどうしよう……。
海老名サービスエリアを出てから、更に1時間ほど走る。
途中で東名高速名物の下り線限定、左ルートと右ルートに分かれる区間を走行する。
高橋は迷わず右ルートを選定した。
大型車は左ルートを通行するように、電光表示板で案内されている。
JRバスなど、バス停が左ルートにしか無い為か、迷わず左ルートを通行している。
JRバスでない高速バスや観光バスなどは、右ルートを走行することもある。
もちろん、法的に明確に選別されているわけではなく、JRバス以外はどちらでも通行して良い。
そこを過ぎると、左右ルートが合流する。
少しの間が登りが続く為、登坂車線があるのだが、足柄サービスエリア下り線は登坂車線の途中にある。
高橋「着きましたね」
愛原「おー」
高橋「どこに止めますか?」
愛原「なるべく、大型駐車場の近くがいい」
高橋「分かりました」
平日のせいか、大型駐車場にはバスよりトラックの方が多く止まっていた。
近くの普通車用駐車場に車を止める。
お昼時であるが、恐らく今はフードコートも混んでいるだろうから、少し時間帯をズラして行くことにした。
その前に、大型駐車場の調査である。
愛原「えーと……デイライトの情報によると、蓮華が乗っていたトラックが止まっていた場所……ここだ」
高橋「ここっスか」
今は別のトラックが止まっている。
何やら大型重機を積んだトラックだった。
これでは法定速度通り、時速80キロくらいまでしか出せないだろう。
愛原「トラックはこういう平車じゃなくて、箱車だった。箱の中から非常ボタンが押されたので、運転手が慌てて見に行ったところ、そこから蓮華が飛び出してきたそうだ。呆気に取られている運転手を横目に、蓮華は暗闇の向こうへ消えて行ったという」
高橋「暗闇の向こうって、どっちっスか?」
愛原「そりゃ暗い方だから、建物とは逆方向だろう。つまり、あっちのサービスエリア出口の方だな」
高橋「あっちって、ガソスタがありますよ?」
愛原「そうか。海老名と同様、ここにもガソリンスタンドがあるのか」
高橋「そうです」
ガソリンスタンドがサービスエリアの出口に近い所にあるのは、入口付近に造ってしまうと、給油の車で混雑した時、その車列が本線の方まで出てしまう恐れがあるからだそうだ。
今はそんなに給油待ちの列なんて見たことは無いが、高速道路黎明期の頃はそれが懸念されるほどだったのだろうか。
そこまで歩いて行くと、ちょうど大型トレーラータイプのタンクローリーが油の納品をしているところだった。
スタンドの地下に埋められたタンクに、ローリーから油をホースで移し替えているところというわけだ。
また、給油スタンドの所には給油中の乗用車や大型トラックがいた。
愛原「これさ、逆に給油中の車に便乗したりとかはできないかな?」
高橋「乗用車は無理だと思いますよ」
愛原「だとしたらトラックか?」
高橋「適当にヒッチハイクしたりとか?」
愛原「今時、ヒッチハイカーなんか乗せたりするかな?」
高橋「あるんじゃないスかね」
愛原「うーん……」
私には、とてもあんな怪しいギャルみたいな姿をしている蓮華をホイホイ乗せるとは思えなかった。
愛原「……怪しいギャルみたいな姿だな、あいつ」
高橋「あー、そうっスね。白ギャルっスか?」
愛原「元は清楚な女剣士だったのに……」
高橋「銀髪で、所々赤く染まってる髪とか……ギャルっつーか、ハードロッカーっスかね」
愛原「あー、なるほどな。お前の知り合いにいたか?」
高橋「ま、いないことも無いって言いますか……」
愛原「……もしもだよ?その、蓮華みたいな姿をしたギャルとか、ハードロッカーというかヘビメタというか、そんなのやってそうな女がヒッチハイクしてきたら、お前は乗せるか?」
高橋「後でパールにバレたら刺されそうなんで、俺は断りますね。ただ、彼女ナシのヤツなら乗せるかもしれません」
愛原「当たってみるか?」
高橋「昨日も平日だったんスから、そういう遊び目的の車とかいますかね?」
愛原「平日でも、これだけ多くの車が出入りしてるんだ。中には、そういうナンパ目的の車とかも出入りしていたかもしれない。考えようによっては、平日でそんな車は少ないんだから、見つかればだいたいその車ってことさ」
高橋「なるほど。でも、どうやって探すんスか?」
愛原「お前も走り屋の時、よく高速で給油してたか?」
高橋「高速を走る時は、入れてたこともありましたよ。まあ、だいたいは行きつけのスタンドで入れたりしますけど」
愛原「ちょっと善場主任にに相談してみよう」
私は自分のスマホを取った。
そして、今の状況と推理の内容を説明する。
善場「分かりました。それでは関係各所を通して、愛原所長に協力するよう対応しますので」
愛原「ありがとうございます。具体的には、監視カメラの映像を見せて頂ければと思います」
善場「かしこまりました。具体的にはどのカメラになりますか?」
愛原「はい。ガソリンスタンドのカメラですね。もしかしたら、蓮華はガソリンスタンドで給油中の車に便乗した可能性があるので」
善場「ガソリンスタンド……ですか。かしこまりました」
何故か電話口の善場主任は、意外そうな口調だった。
愛原「何かありましたか?多分、既に警察が調査済みだと思いますが、改めて……」
善場「いえ、それが……」
愛原「ん?」
善場「確かに足柄サービスエリアにはエネオスのスタンドがあるようですが、特に捜査依頼などはしていなかったようです」
愛原「どういうことですかね?」
善場「経営が違うのでしょう。サービスエリアの運営会社と、エネオスのスタンドでは」
愛原「ああ、でしょうね」
この場合、ガソリンスタンドはサービスエリアの敷地内にテナントとして入居するような形となるのだったか。
地代はそこを所有しているネクスコに支払う形となるんだったかな。
それで赤字が続くと維持できないってことで、撤退したりするわけだ。
まあ、この大型サービスエリアでは有り得ないことだが。
善場「多分、地元警察やBSAAも、サービスエリアの運営会社などに監視カメラの映像の確認を依頼したのだと思います。で、サービスエリアで監視している映像は確認していると思います」
愛原「はいはい。でも、ガソリンスタンドの方の映像は確認していないと?」
善場「恐らく、サービスエリア側からでもガソリンスタンドは見えるので、それで十分だと思ったのかもしれません」
愛原「なるほど」
しかし、よく見ると、サービスエリアの建物からは視覚となっているであろう部分もあるのだが……。
善場「とにかく、スタンドの経営会社に依頼しておきます。しばらくお待ちください」
愛原「よろしくお願いします」
話が伝わるまでに、私は先に昼食を取っておくことにした。
これで私の推理が間違っていたらどうしよう……。