報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵゛愛原学” 「栗原蓮華の足跡を追え!」 2

2024-03-06 20:36:18 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月8日12時30分 天候:晴 静岡県駿東郡小山町 足柄サービスエリア]

 海老名サービスエリアを出てから、更に1時間ほど走る。
 途中で東名高速名物の下り線限定、左ルートと右ルートに分かれる区間を走行する。
 高橋は迷わず右ルートを選定した。
 大型車は左ルートを通行するように、電光表示板で案内されている。
 JRバスなど、バス停が左ルートにしか無い為か、迷わず左ルートを通行している。
 JRバスでない高速バスや観光バスなどは、右ルートを走行することもある。
 もちろん、法的に明確に選別されているわけではなく、JRバス以外はどちらでも通行して良い。
 そこを過ぎると、左右ルートが合流する。
 少しの間が登りが続く為、登坂車線があるのだが、足柄サービスエリア下り線は登坂車線の途中にある。

 高橋「着きましたね」
 愛原「おー」

 

 高橋「どこに止めますか?」
 愛原「なるべく、大型駐車場の近くがいい」
 高橋「分かりました」

 平日のせいか、大型駐車場にはバスよりトラックの方が多く止まっていた。
 近くの普通車用駐車場に車を止める。
 お昼時であるが、恐らく今はフードコートも混んでいるだろうから、少し時間帯をズラして行くことにした。
 その前に、大型駐車場の調査である。

 愛原「えーと……デイライトの情報によると、蓮華が乗っていたトラックが止まっていた場所……ここだ」
 高橋「ここっスか」

 今は別のトラックが止まっている。
 何やら大型重機を積んだトラックだった。
 これでは法定速度通り、時速80キロくらいまでしか出せないだろう。

 愛原「トラックはこういう平車じゃなくて、箱車だった。箱の中から非常ボタンが押されたので、運転手が慌てて見に行ったところ、そこから蓮華が飛び出してきたそうだ。呆気に取られている運転手を横目に、蓮華は暗闇の向こうへ消えて行ったという」
 高橋「暗闇の向こうって、どっちっスか?」
 愛原「そりゃ暗い方だから、建物とは逆方向だろう。つまり、あっちのサービスエリア出口の方だな」
 高橋「あっちって、ガソスタがありますよ?」
 愛原「そうか。海老名と同様、ここにもガソリンスタンドがあるのか」
 高橋「そうです」

 ガソリンスタンドがサービスエリアの出口に近い所にあるのは、入口付近に造ってしまうと、給油の車で混雑した時、その車列が本線の方まで出てしまう恐れがあるからだそうだ。
 今はそんなに給油待ちの列なんて見たことは無いが、高速道路黎明期の頃はそれが懸念されるほどだったのだろうか。
 そこまで歩いて行くと、ちょうど大型トレーラータイプのタンクローリーが油の納品をしているところだった。
 スタンドの地下に埋められたタンクに、ローリーから油をホースで移し替えているところというわけだ。
 また、給油スタンドの所には給油中の乗用車や大型トラックがいた。

 愛原「これさ、逆に給油中の車に便乗したりとかはできないかな?」
 高橋「乗用車は無理だと思いますよ」
 愛原「だとしたらトラックか?」
 高橋「適当にヒッチハイクしたりとか?」
 愛原「今時、ヒッチハイカーなんか乗せたりするかな?」
 高橋「あるんじゃないスかね」
 愛原「うーん……」

 私には、とてもあんな怪しいギャルみたいな姿をしている蓮華をホイホイ乗せるとは思えなかった。

 愛原「……怪しいギャルみたいな姿だな、あいつ」
 高橋「あー、そうっスね。白ギャルっスか?」
 愛原「元は清楚な女剣士だったのに……」
 高橋「銀髪で、所々赤く染まってる髪とか……ギャルっつーか、ハードロッカーっスかね」
 愛原「あー、なるほどな。お前の知り合いにいたか?」
 高橋「ま、いないことも無いって言いますか……」
 愛原「……もしもだよ?その、蓮華みたいな姿をしたギャルとか、ハードロッカーというかヘビメタというか、そんなのやってそうな女がヒッチハイクしてきたら、お前は乗せるか?」
 高橋「後でパールにバレたら刺されそうなんで、俺は断りますね。ただ、彼女ナシのヤツなら乗せるかもしれません」
 愛原「当たってみるか?」
 高橋「昨日も平日だったんスから、そういう遊び目的の車とかいますかね?」
 愛原「平日でも、これだけ多くの車が出入りしてるんだ。中には、そういうナンパ目的の車とかも出入りしていたかもしれない。考えようによっては、平日でそんな車は少ないんだから、見つかればだいたいその車ってことさ」
 高橋「なるほど。でも、どうやって探すんスか?」
 愛原「お前も走り屋の時、よく高速で給油してたか?」
 高橋「高速を走る時は、入れてたこともありましたよ。まあ、だいたいは行きつけのスタンドで入れたりしますけど」
 愛原「ちょっと善場主任にに相談してみよう」

 私は自分のスマホを取った。
 そして、今の状況と推理の内容を説明する。

 善場「分かりました。それでは関係各所を通して、愛原所長に協力するよう対応しますので」
 愛原「ありがとうございます。具体的には、監視カメラの映像を見せて頂ければと思います」
 善場「かしこまりました。具体的にはどのカメラになりますか?」
 愛原「はい。ガソリンスタンドのカメラですね。もしかしたら、蓮華はガソリンスタンドで給油中の車に便乗した可能性があるので」
 善場「ガソリンスタンド……ですか。かしこまりました」

 何故か電話口の善場主任は、意外そうな口調だった。

 愛原「何かありましたか?多分、既に警察が調査済みだと思いますが、改めて……」
 善場「いえ、それが……」
 愛原「ん?」
 善場「確かに足柄サービスエリアにはエネオスのスタンドがあるようですが、特に捜査依頼などはしていなかったようです」
 愛原「どういうことですかね?」
 善場「経営が違うのでしょう。サービスエリアの運営会社と、エネオスのスタンドでは」
 愛原「ああ、でしょうね」

 この場合、ガソリンスタンドはサービスエリアの敷地内にテナントとして入居するような形となるのだったか。
 地代はそこを所有しているネクスコに支払う形となるんだったかな。
 それで赤字が続くと維持できないってことで、撤退したりするわけだ。
 まあ、この大型サービスエリアでは有り得ないことだが。

 善場「多分、地元警察やBSAAも、サービスエリアの運営会社などに監視カメラの映像の確認を依頼したのだと思います。で、サービスエリアで監視している映像は確認していると思います」
 愛原「はいはい。でも、ガソリンスタンドの方の映像は確認していないと?」
 善場「恐らく、サービスエリア側からでもガソリンスタンドは見えるので、それで十分だと思ったのかもしれません」
 愛原「なるほど」

 しかし、よく見ると、サービスエリアの建物からは視覚となっているであろう部分もあるのだが……。

 善場「とにかく、スタンドの経営会社に依頼しておきます。しばらくお待ちください」
 愛原「よろしくお願いします」

 話が伝わるまでに、私は先に昼食を取っておくことにした。
 これで私の推理が間違っていたらどうしよう……。
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“私立探偵 愛原学” 「栗原蓮華の足跡を終え!」

2024-03-06 15:35:55 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月8日09時00 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 私の名前は愛原学。
 都内で探偵事務所を経営している。
 今日はこれから、静岡県に出張するところだ。
 リサは学校に行き、事務所にはパールが留守番してもらうことにした。
 栗原蓮華が足柄サービスエリアで足取りを消した為、その調査依頼を私達が受けたのである。
 彼女は高島平のトラックターミナルから、静岡県方面に向かうトラックに便乗し、足柄サービスエリアで降りている。
 そこからまた別の車に乗り換えたと思われるが、それが分からない為、私達が現地に行って調査してくることになったのである。
 場所が場所だけに鉄道ではなく、車で行くことにした。
 幸いこちらには、運転大好き高橋がいるので。
 もっとも、車はレンタカー会社からリース契約しているライトバンである。
 どうしてライトバンなのかというと、隠密調査をする際に車は重要アイテムであり、どこにいてもおかしくない、目立たない車が条件だからである。
 スパイ映画やドラマとかだと、どう見ても怪しい黒塗りの高級車だったり、あるいはゴテゴテに改造したワゴン車が使われていたりするのだが、あれでは対象者に見つけてくださいと言っているようなもの。
 実際は、どこにいてもおかしくない地味なライトバンを使う。
 大手事務所とかだと、タクシーをチャーターすることもあるそうだ。

 愛原「それじゃ、行ってくる」
 パール「どうか、お気をつけて」
 高橋「それでは出発します」

 高橋は車を発進させた。
 そして、1階のガレージから車を出す。
 車が公道に出ると、パールは内側からガレージのシャッターを閉めてくれた。

 高橋「先生、高速使っていいんスよね?」
 愛原「当たり前だ。最初のゴール地点は足柄サービスエリアだから、東名高速だな。蓮華を乗せたトラックも、首都高からひたすら東名高速を走ったらしい。俺達も後を追うぞ」
 高橋「分かりました」

 高橋は、まずは首都高の錦糸町入口に向かうと言った。
 そこは首都高速7号線(小松川線)が通っているが、都心方面に向かえば、東名高速と直結している3号線(渋谷線)へ行けるという。

 高橋「途中休憩はされますか?」
 愛原「まあ、適宜な。ガソリンを入れなきゃだろうし」
 高橋「確かに。了解しました」

[同日10時00分 天候:晴 神奈川県海老名市大谷南 海老名サービスエリア]

 出発してから1時間くらい走ってから、海老名サービスエリアに到着する。
 ここでちょっと一服休憩だ。

 高橋「俺、ちょっとタバコ吸って来ますんで」
 愛原「ああ。俺はちょっとトイレだ」
 高橋「どうぞどうぞ」

 海老名サービスエリアは、サービスエリアというだけあって、規模は大きい。
 だが、これから行く足柄はもっと大きいのだ。
 平日なので駐車場はトラックが多いが、観光バスの姿も散見される。
 休日と比べれば少ないのだろうが、それでも建物の中は観光客の姿も見られた。
 日本人はお年寄り、それより若いのは外国人ばかりだ。
 海老名サービスエリアと言えば、メロンパンが名物。
 ちょっとお昼前の軽食として、トイレを済ませた後、メロンパンと紙コップ入りのコーヒーを購入した。
 もちろん、高橋の分も買って行ってやる。
 外のテラス席でメロンパンを齧っていると、スマホに着信があった。

 愛原「おっと!善場主任だ!」

 私は電話に出た。

 善場「お疲れさまです。善場です」
 愛原「善場主任、お疲れさまです!今、海老名サービスエリアで休憩中です」
 善場「順調ですか?」
 愛原「そうですね。道路も思ったほど混んでいませんし、昼ぐらいには足柄に到着できるかと」
 善場「了解しました。昼間ですので、栗原蓮華がいきなり襲って来ることはないと思いますが、どうぞお気をつけください」
 愛原「ありがとうございます。……やはり、蓮華は昼間の活動はできませんか?」
 善場「そのようです。そしてそれは、伊藤縁も同じだったようです」
 愛原「何かあるんですかね?」
 善場「原因については調査中です」
 愛原「リサは普通に昼間でも活動できますが……」
 善場「リサの場合、メインはGウィルスです。Gウィルスがそれまでサブに活用していたTウィルスより、特異菌の方が使えると判断して、今は特異菌を活用しているだけに過ぎません。ですが、蓮華達の場合は違います。彼女らはあくまで、特異菌だけのBOWです。その違いに、何か原因があるのでしょう」
 愛原「なるほど。カビは温度の高い所や、乾燥した所、あとは直射日光に弱いとか聞いたことがありますね」

 特異菌とは真菌(カビ)の新種を生物兵器化させたものである。
 いくら新種とはいえ、元がカビの一種であるわけだから、高温、乾燥、紫外線に弱いというのが私のイメージだ。
 実際、アメリカのルイジアナ州で発生したバイオハザード。
 時季は初夏の頃だったし、場所も湿地帯であった。
 だが、それの素となった菌根のあるルーマニアの山奥にあっては、季節は冬であった。
 だから、案外温度は関係無いのかもしれない。
 実際、蓮華達は真冬でも活動していたし。

 善場「その観点から、調べを進めています。それと……」
 愛原「はい?」
 善場「あとは重要な情報ですので、周りに聞かれないよう、メールでお伝えします。メールの確認は、車内でお願いします」
 愛原「わ、分かりました」

 私は電話を切り、メロンパンとコーヒーを平らげると、車に戻った。
 そして車に戻ると、スマホには既に主任からメールの着信があり、それを見ると、連絡事項は2つあった。
 1つは、やはり蓮華は静岡県内にいる公算が大きい事。
 そしてもう1つは、公一伯父さんもまた、静岡県内にいる公算が大きいことであった。

 愛原「デイライトは、まだ公一伯父さんの逮捕を諦めていないらしい」
 高橋「アネゴとツルんでるっていう情報なんスよね?ねーちゃんのことだから、博士のことはついでで、アネゴをタイーホしたいんじゃ?」
 愛原「ハハハ……なるほどな。まあいいや。とにかく、足柄に行こう」
 高橋「はい」

 私達は再び、東名高速の本線に向かった。
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