報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「深夜の宿泊」

2024-03-17 20:44:43 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月8日23時00分 天候:晴 静岡県富士市伝法 ABホテル富士]

 宿泊先のホテルが見つかった私達は、再び車を出した。
 まずは国道469号線を東進する。
 トラックの横転事故があり、新道は通行止めのままだったが、カーナビによると、三門の手前の交差点を右折して、あとは市道を進んでも国道139号線には出られるようだ。

 高橋「この道、知ってますよ。去年の夏、この近くの市民プールに行きましたね」
 愛原「あー、確かそうだったな」

 まだ、蓮華が人間だった頃の話である。

 愛原「何か、遠い昔のような気がするなぁ……」
 高橋「そうっスね」

 旧国道たる県道を跨いで、バイパスの国道139号線の上り線に出る。
 こちらはさすがに深夜帯でも、まだ多くの車が行き交っていた。

 愛原「それにしても疲れたな……」
 高橋「そうですね。先生はどうぞ、着くまで休んでいてください」
 愛原「ああ……。それにしても、リサにも心配を掛けた」
 高橋「探偵の仕事は、突然泊まりになることもあるんでしょう?だから、最低1泊分の用意をしろと先生は御指導くださいました」
 愛原「ああ、その通りだ。まさか、本当にそうなるとはな」

 そして自動車専用道路、西富士道路を走行する。
 かつては有料道路だったが、今では無料の自専道だ。
 最高速度も80キロに制限されており、まるで高速道路のようだ。

 高橋「ん?」

 その時、下り車線を多くの消防車や救急車などの緊急車両がサイレンを鳴らしてすれ違って行った。
 何か大きな事故、火事でもあったのだろうか。
 上り線は何事もなく、平和であったが。
 車は富士インターから、そのまま国道をトレースするかのように左折する。
 この富士インターは何も東名高速だけでなく、西富士道路と旧国道との交差点の名前でもある。
 左折すると、すぐに予約したホテルが見えて来る。

 愛原「帰りはすぐに富士インターから東名高速に乗って、それから帰るぞ」
 高橋「……か、もしくはもう少し北に走って、新富士インターから新東名という手もありますよ?」
 愛原「あー、まあ、そこは高橋に任せる。ガソリンはまだあるか?」
 高橋「何とか都内まで持ちそうです」
 愛原「そうか」

 そして、ホテルの駐車場に入る。
 門限は24時までだというので、何とか間に合った。
 チェックインの手続きをして、カードキーを受け取る。
 一応、ツインの部屋が取れた。

 愛原「行くぞ」

 エレベーターに乗り込み、宿泊する部屋のフロアに向かう。

 愛原「24時まで大浴場に入れるらしいから、そこで一っ風呂浴びて寝よう」
 高橋「そうっスね。そうしましょう」

 エレベーターを降りて客室に向かう。
 入った部屋は何の変哲も無い、普通のツインルームだった。
 禁煙ルームしか無いホテルで、喫煙所1階にしかないということで、高橋にはそこで吸ってもらうしかない。
 幸いカードキーは2枚貰えたので、1枚は高橋に渡しておく。

 愛原「それじゃ、着替えて大浴場に行くか」
 高橋「はい!」

 部屋備え付けの作務衣風の館内着に着替え、タオルを持って再び1階に向かう。
 大浴場は、もうすぐ利用時間終了だからか、ガラガラだった。

 高橋「不肖の弟子、高橋正義が!先生のお背中を!あ!お流しし奉り候~也!」
 愛原「……おい、日本語おかしいぞ。お前もずっと運転してて疲れてるんだから、無理しないでゆっくり入っていいんだぞ?」
 高橋「いえ!俺にとって運転は趣味なんで!それに、チームにいた頃は、よくずっと夜通し走り回ってたもんです!」
 愛原「あー、そうかい。サウナには行かんからな?」
 高橋「分かってます」

 お湯は残念ながら天然温泉ではなく、人工温泉のようだったが、それでも空いている大浴場に足を伸ばしてゆっくり入れたのは良いことだ。

 高橋「先生。明日は何時に起きます?」
 愛原「そうだなぁ……。任務は完了したことだし、別に慌てて帰る必要は無いんだよな」

 善場主任への報告会は、別に明日でなくてもいいらしい。
 主任としても、午前中は都内までの移動。
 そして午後は報告書の作成くらいに考えておられるのだろう。
 となると、報告会は明後日の午前中といったところだろうか?
 のんびり浸かっていると、スタッフが入って来た。

 スタッフ「お客様、申し訳ございません。まもなく閉鎖のお時間ですので……」
 愛原「あ、はい!今、出ます!」

 時刻はまもなく日付が変わろうとしていた。

 愛原「すいません。朝食の時間って、何時から何時まででしたっけ?」
 スタッフ「朝食の時間ですか?6時半から9時までとなっております」
 愛原「6時半から9時までか。分かった。ありがとう」

 大浴場から脱衣場に移動する。
 そこでバスタオルで体を拭いたりしているうち、高橋が聞いてきた。

 高橋「朝飯の時間に合わせて起きる形ですか?」
 愛原「そうだな。まあ、8時くらいに起きよう。で、朝飯食ってチェックアウトっと」
 高橋「朝飯の時間ギリギリまでいるってわけっスね。9時過ぎなら、朝のラッシュも終わってるでしょうからね」
 愛原「そういうことだ」

 最後に高橋は、洗面所のドライヤーで髪を乾かした。
 そして、私達は大浴場最後の客となったのだった。
 明日は、朝食最後の客となるか。

 高橋「先生。俺、一服してから部屋に戻りますんで」
 愛原「ああ、分かった。俺は先に部屋に戻ってるよ。風呂上がりのビールと、夜食代わりのおつまみを買ってな」
 高橋「了解しました」

 私は自販機コーナーに寄った。
 もちろんホテルだから、ソフトドリンク以外にもアルコールの自販機もある。
 そして、その自販機にはおつまみも売られていた。
 カップラーメンの自販機もあったが、さすがに今は食べる気はしない。
 ということで、缶ビールとおつまみを購入する。
 それから、部屋に戻った。

 愛原「ふう……」

 ライティングデスクの椅子に座って、机の上にビールとおつまみを置く。
 そして、テレビを点けた。
 深夜番組をやっているのだが、チャンネルによってはニュースをやっていたりする。

〔「ここで速報です。国連組織BSAAのヘリコプターが墜落しました。墜落したのは国連組織BSAA極東支部日本地区本部に所属するヘリコプター1機で、極秘任務の為、富士宮市郊外から陸上自衛隊駒門駐屯地へ向かっていたところ、突然墜落しました。墜落の原因には分かっていません。尚、墜落した場所と乗員の安否については……」〕

 愛原「え?これって……?」

 まさか、栗原蓮華を乗せたヘリじゃないよな???
 私は善場主任に確認しようかと思ったが、もう夜遅くなので、朝になってから確認することにした。
 蓮華は麻酔を点滴されて、眠っているはずだが……。
 すると、別のヘリだろうか?
 もしかしたら、他にもヘリが飛んでいたのかもしれない。
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“私立探偵 愛原学” 「戦いの後」

2024-03-17 16:52:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月8日21時00分 天候:晴 静岡県富士宮市下条 セブンイレブン→同市精進川 上条バス停]

 栗原蓮華「もっとォ……飲ませてェ……ヒック!」
 高橋「どうして鬼は、男も女も酒好きが多いんスかね?」

 私達は近くのコンビニに行くと、そこで“鬼ころし”を購入した。
 “鬼ころし”そのものはどこでも売っているものなので、近くのコンビニですぐに手に入った。
 それを蓮華の口に流し込んでやったら、ものの見事に酔っ払ったということだ。
 “鬼ころし”はただの日本酒のはずなのに、鬼が飲めばその力を封印してしまうという効果がある。
 その理由は不明だが、名前から来る暗示ではないかと言われている。

 愛原「酒呑童子も酒に釣られて源頼光に倒されたっていうからな。そういうもんだろう。実際、桃太郎だって、鬼達が酒盛りしている所を奇襲攻撃したらしいからな」
 高橋「さすが先生!博識です!」
 愛原「いいから、さっさと集合場所に向かうぞ」
 高橋「は、はい!」

 高橋は車を発進して、コンビニの駐車場を出た。
 そして、真っ暗な県道184号線を北上する。
 片側1.5車線ほどの狭い道だが、昼間は路線バスも走行するバス通りである。
 私達は善場主任からの指示を受け、そのバスの終点停留所まで向かうことになった。
 そこにはバスの折り返し場があり、広い転回場がある為、BSAAのヘリコプターが着陸するにはちょうど良い広さであるという。
 そこに向かった。

 蓮華「放せ!殺してやる!!食い殺してやる!!」
 高橋「うわっ、もう酔いが覚めやがった!ほらっ!」

 蓮華の酔いが覚めては“鬼ころし”を強制的に飲ませて酔わせて大人しくさせ、また覚めたら飲ませて……の繰り返しである。
 リサで勉強していて良かった。
 だからうちでも、リサ用の“鬼ころし”が何パックも保管されている。
 リサのヤツ、すっかり癖になって、夜中にこっそり飲もうとするものだから、さすがにそこは強く注意しておいたがな。
 人間としてはまだ未成年なのだから。

 蓮華「ヒック……」

 その時、上空からヘリの音が聞こえて来た。
 どうやら近くの駐屯地から、自衛隊がヘリを飛ばしてきたらしい。
 当然それはBSAA極東支部日本地区本部の隊員が乗っていることだろう。

 高橋「いたいた!」

 バスの折り返し場は物々しい雰囲気となっていた。
 近くの駐在所からは元より、麓の警察署からもパトカーが何台か出動している。

 愛原「東京の愛原です!」

 私は自分の名刺を警察官に見せた。
 既にバス停付近は通行規制が敷かれていて、私達以外の一般車は入れないようになっていた。
 大石寺の境内から外れている為、霊験あらたかな力は蓮華には及んでいない。
 鬼封じの力がある“鬼ころし”をその都度飲ませて、何とか力を封じている綱渡り状態だ。
 いかにリサが、ちゃんとしっかりした理性を持っているかが分かる。
 しばらくしてヘリコプターが着陸すると、そこから武装したBSAA隊員や防護服を着た医療班が降りて来た。

 BSAA隊員「BOWは!?」
 愛原「こちらです!」

 私はすぐにBSAA隊員達を車に誘導した。

 蓮華「ガァァァァッ!!」

 ちょうど酒が切れたようで、手足を拘束されたままの蓮華が牙を剥き出しにして威嚇してきた。

 愛原「おっと!」

 危うく噛みつかれるところだった。
 私は持っていたショットガンを噛ませた。

 蓮華「ウウウ……!!」

 BSAA医療班が蓮華に麻酔を打ち込む。
 それが人間用の物なのか、それとも対BOWに特化した特製品なのかは分からない。
 少なくとも私が見ている限り、太い注射を3本も打っていた。
 それが功を奏したのか、蓮華は意識を失って、私に倒れ込んで来た。

 愛原「おっと!」

 それを支えてやる。
 リサより豊かな胸が私の胸に当たる。
 人間だった頃よりも、肉付きが良くなったような気がする。
 それだけ人間の血肉を食らってきたということか。
 人間の血液や血中老廃物しか摂取していないリサよりも、肉を食らう鬼の方が強くなるかもしれないというのも頷ける。

 BSAA隊員「愛原さん、こちらへ!」
 愛原「は、はい!」

 蓮華はストレッチャーに乗せられたものの、明らかに人間の患者を搬送する雰囲気ではなかった。
 ベルトを何本も固定され、更に常に麻酔薬か何かを点滴される状態となっている。
 そして、ヘリコプターに乗せられた。

 BSAA隊長「御協力ありがとうございました!あとは当隊で引き受けます!危険ですので、速やかに退避してください!」
 愛原「分かりました」

 やっと仕事が終わった。
 民間の探偵業者にしては、随分と突っ込んだ仕事をさせられたものだが、とにかくこれで終わったのだ。
 私達は車に戻ると、県道を南下した。
 まずは再び、先ほどのコンビニに戻ることにする。
 もうすっかり夜だ。
 このまま帰るべきか、それとも途中、どこかで一泊するか迷う。
 と、そこへ善場主任から電話が掛かって来た。

 愛原「はい、もしもし?」
 善場「善場です。状況報告をお願いします」
 愛原「あ、はい」

 私は現況を報告した。

 善場「栗原蓮華を無事にBSAAに引き渡しましたか!ありがとうございます!」
 愛原「BSAAからお役御免を仰せつかったので、今は現場を離脱して、近くのコンビニに立ち寄っているところです」
 善場「お疲れさまです」
 愛原「それで主任、モノは相談なんですけど……」
 善場「何でしょう?」
 愛原「さすがに疲れたので一泊してから帰りたいと思うのですが……」
 善場「もちろん結構です。宿泊費についても、後ほど請求して頂ければと思います」
 愛原「ありがとうございます」

 後日に報告会を行うという約束をして、電話での簡易報告は終わった。
 と、コンビニから戻って来た高橋が車に乗り込む。
 ドアが開くと、外からヘリコプターの音が聞こえた。

 高橋「どうやらヘリが飛び立ったみたいですね」
 愛原「そうか。あとはまあ、専門家達に任せよう」
 高橋「これからもう帰りますか?」
 愛原「そうしたいところだが高橋、疲れてるだろ?」
 高橋「まあ、仕事が終わったと思ったら何だか……ですね」
 愛原「善場主任が一泊してから帰っていいって言うから、お言葉に甘えるぞ。まずはホテル探しだ」
 高橋「分かりました!」

 とはいうものの、直前で予約できるホテルはなかなか無い。
 なるべくなら、富士宮市内または富士市内が良い。
 幸い、高速道路のインターに程近い所にあるホテルが予約できたので、そこに向かうことになった。
 断っておくが、ビジホであり、ラブホではないので念の為。
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