報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「栗原蓮華の足跡を追え!」 3

2024-03-08 20:45:25 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月8日14時00分 天候:晴 静岡県駿東郡小山町 足柄サービスエリア下り線・ガソリンスタンド]

 サービスエリアのフードコートで昼食を取った私と高橋は、サービスエリアの出口付近にあるガソリンスタンドに向かった。

 高橋「やっぱ昼はラーメンっスね!」
 愛原「お前もラーメン好きだな」
 高橋「そりゃもう!走りの時の飯のラーメンは格別っス!」
 愛原「ああ、そうかい」

 そんなことを話しながら、徒歩でガソリンスタンドへ向かう。
 そして、店内で事情を話すと、店長らしき男が事務所へ案内してくれた。
 どうやらデイライトの方で、カメラ確認の許可を取ってくれたようだ。

 店長「これが店の防犯カメラです」
 愛原「ありがとうございます。早速、映像を見させて頂きます」

 私は慣れた手つきで、ガソリンスタンドの防犯カメラを操作した。

 高橋「さすが先生ですね」
 愛原「警備員をやっていた時、よく警備室や防災センターのカメラを操作したものさ」

 スタンドにはカメラがいくつかある。
 そして、そのうちの1つは駐車場の方を向いていた。

 愛原「あれ?このトラック……」

 そして、栗原蓮華が便乗したと思われるトラックがこのサービスエリアに到着した辺りまで映像を巻き戻し、モニタをチェックした。
 駐車場方向のカメラに、そのトラックと思しきトラックが映っていたのだ。
 むしろ、サービスエリア側のカメラよりもハッキリ映っているのではないかと思うほど。
 トラックのコンテナに、当該運送会社の名前が大きく書かれていたので間違いない。
 あいにくとこのカメラでは、音までは録音されていない。
 しばらくすると、運転手と思しき男が運転席から降りてきて、コンテナの後ろに回った。
 そして、その観音扉を開ける。

 愛原「おおっ、あれは!」
 高橋「あのクソ女ですね!」

 トラックのコンテナから栗原蓮華と思しき者が飛び降りて来た。
 運転手が突き飛ばされ、仰向けに倒れてしまう。
 この時、運転手は意識を失ってしまい、しばらくした後で、隣に駐車中の別のトラックの運転手に発見され、通報されている。
 そしてそれと時を同じくして、ガソリンスタンドに1台の乗用車がやってきた。
 黒塗りのゼロクラウンだが、タクシーやハイヤーなどではなく、明らかに改造車である。
 ヘッドライトは青白く眩いHIDランプ。
 明る過ぎて、逆に車検通らないのではと思うほど。
 ナンバープレートも、文字や数字が緑色に浮かび上がるタイプである。
 そして給油中に、トラックから飛び降りた女がその車に近づく。
 尚一層、女の姿が鮮明に映し出された。

 愛原「やっぱり蔵原蓮華だ!」
 高橋「ギャルJKみてーなファッションしやがって!堅苦しい鬼斬りの剣士様はどこ行ったァ!?」
 愛原「鬼になって堕ちたんだよ」

 まだ3月初旬の寒い時季だというのに、蓮華は半袖の白いブラウスに、長袖のカーディガンを腰に巻いている。
 そして、東京中央学園の制服と思われる緑色のスカートはリサよりも短くしていた。

 高橋「ヒッチハイクしてやがりますね」

 車には男が3人ほど乗っていたようだが、見た目はキラキラしたギャルJKの蓮華がヒッチハイクしてきて乗せないわけがなく、助手席から若い男が降りてきて、その後ろのドアを開けた。
 そして、蓮華に乗るように促す。
 蓮華はすぐに乗り込んだ。

 愛原「あの車、都合良くオマエの知り合いだったりしない?」
 高橋「いやー、ちょっとさすがにそれは……!サーセン!」
 愛原「まあ、それが現実だな。何かのチームとかじゃないかな?」
 高橋「車種的にVIPカー愚連隊っぽいっスけど、静岡のチームは知らないっスねぇ……。何なら、地元の奴ら適当に捕まえて、吐かせますか?」
 愛原「いや、そこまではせんでいい」

 給油を終えると、当然ながら車は下り本線の方に走り去って行った。
 逆に出口側の方を向いたカメラの方を見ると、何とかナンバーが見えた。

 愛原「うーん……『富士山』ナンバーかな?」
 高橋「漢字3文字ですね。あっちの方向にある漢字3文字のナンバーと言えば……」
 愛原「ああ、『四日市』もあるな。『名古屋』もあるし……。もっと先なら、『なにわ』とか『和歌山』もあるぞ」
 高橋「あー……」

 漢字3文字のナンバーだけだと、絞り込むのが難しいか。

 愛原「店長さん。この車を接客した店員さん、今いないかな?」
 店長「あいにくですが、この者は夜勤シフトオンリーなので、今は出勤してないんですよ」
 愛原「そうか、残念だな」
 店長「ただ、他の者が引き継ぎしているので、もしかしたら何か知っているかもしれません。ちょっとお待ちください」

 店長は一旦店を出ると、他の店員を呼んだ。
 高橋と大して歳の変わらぬ店員だった。

 店員「ああ、昨夜の!何か、いきなり女子高生みたいなのが逆ナンしていて、お客さんの車に乗って行ったなんて話をしてましたよ」
 愛原「それが、この黒いクラウンですね?」
 店員「そうです!地元の車っぽいと言ってましたよ」
 愛原「ということは、『富士山』ナンバーなんだ!」
 店員「そうですね」
 高橋「でも先生、『富士山』ナンバーだと、静岡だけじゃなく、山梨も絡んでるんじゃ?」
 愛原「あ、そうか」

 『富士山』ナンバーは山梨運輸支局管内でも取れる。

 店員「でも、山梨の『富士山』ナンバーがこの辺りを走るの珍しいですよ。だから、静岡の『富士山』ナンバーだと思ったのかも……」
 愛原「ですよね」

 栗原蓮華は静岡の『富士山』ナンバーの車に便乗し、更に西へと向かったのが確定した。

 愛原「すいません、ちょっとこの映像の録画を……」

 私はデジカメを取り出し、録画機能にすると、当該のカメラ映像を録画した。
 そして関係者に礼を言うと、ガソリンスタンドを後にした。

 高橋「先生。せっかくですから、ここでガソリン入れて行きましょう」
 愛原「そうだな。捜査協力してくれたお礼もあるな」

 私達は取りあえず車に戻った。
 そして今の調査結果を善場主任に報告した。

 善場「ありがとうございます。その報告に感謝致します」
 愛原「とはいうものの、足柄から更に西に向かったというだけで、その先は分かりません」
 善場「そこは地元の警察などに協力して頂きましょう。幸い車種とナンバーは分かりましたから、それで車は特定できるはずです。不良青年達の車であれば、尚更警察の厄介になったことはあるでしょうから、一般車よりも特定しやすいかもしれません」
 愛原「それは良かったです。で、私達はどうしましょう?もう足柄サービスエリアに用は無くなってしまいましたが……」
 善場「大急ぎで特定しますので、もう少しお待ちください。何でしたら、次のサービスエリアかパーキングエリアに移動されて、そこで休んでいて頂いても構いません」
 愛原「なるほど。ちょうどガソリンも減ってきたので、捜査協力してくれたスタンドで給油したら、移動したいと思います」
 善場「かしこまりました。特定でき次第、また御連絡致します」
 愛原「承知しました」

 私は高橋に車を出すように指示すると、駐車場から車を出させた。
 そして、先ほどのスタンドに給油に向かったのだった。
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