報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「増えた鬼」

2024-03-23 20:36:26 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月10日18時00分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 夕食は予定通り、ポークカレーとハンバーグであった。
 ハンバーグをカレーの上に載せないのは、リサがお代わりしやすいようにする為である。
 あと、ハンバーグ自体が大きい為に、どちらがメインか分からなくなる為。
 うちには辛党が2人いるが、私に合わせて、カレーは中辛である。
 辛味が足りない2人は、タバスコを掛けて辛味を強くして食べている。

 リサ「あ、そういえば先生」
 愛原「何だ?」
 リサ「ホワイトデーのお返し、忘れてないよね?」
 愛原「も、もちろんだとも」
 リサ「スーパーでホワイトデーのフェアやってたからさ」
 愛原「そ、そうなのか」
 リサ「3倍返し、よろしく」
 愛原「はいはい。リサの欲しい物をあげるよ。何がいい?」
 リサ「先生の血、3リッター!」(*´Д`)ハァハァ
 愛原「こらー!殺す気か!」
 リサ「そしたら、先生のお肉、300グラム」(;゚∀゚)=3ハァハァ
 高橋「先生、こいつ鬼化してやがりますぜ?」
 愛原「早くカレー食べな!」
 リサ「はーい」
 愛原「バレンタインのチョコなら、レイチェルからも貰ってるんだ。レイチェルにもお返ししないといけないな」
 リサ「レイチェルからも、もらったもんね」
 愛原「そう。うーん……だったらさ、2日早いけど、今度の日曜日、直接プレゼント買ってあげるというのはどうだ?」
 リサ「今度の日曜日ね」
 愛原「日曜日なら、レイチェルも休みだろう」
 リサ「だろうね」
 愛原「アキバなら、俺達もレイチェルも出やすいだろう」
 リサ「なるほど、分かった」
 高橋「先生、俺達は……?」
 愛原「パールにホワイトデーのお返しでも買ってやれよ」
 パール「3倍返し、よろしく」
 高橋「何でそこでジャックナイフ取り出すんだよ?」
 愛原「きっちり3倍返ししないと刺すという警告だろう」
 パール「さすがは名探偵。素晴らしい洞察力です」
 高橋「あのな!」
 愛原「警告に従わないと、お前が『流血の惨を見る事、必至であります』だぞ?」
 リサ「お兄ちゃんの血は美味しくなさそうだねぇ……」
 高橋「何だよ、それ!こう見えても、献血ルームじゃVIP待遇のB型だぞ!?」
 愛原「いや、血液はその時々に応じて不足したりするから、B型が特にってわけでもないと思うぞ」
 リサ「うーん……。私も血をもらってばっかりだから、たまには献血しないとね」
 愛原「バイオハザードが起きるからやめなさい」
 高橋「オメーの血で作った薬を注射されたから、栗原蓮華が鬼になったんだろうが!」
 リサ「ちっ、そうだった」

 とまあ、こんな感じでいつも夕食は取っている。
 楽しい食卓な方だと思われる。
 この後はまたリサと桃鉄やったり、風呂入って晩酌にビール飲んだりした。
 リサは“鬼ころし”のパック。
 体操服に紺色のブルマを穿いた鬼が、“鬼ころし”を飲む姿はシュールである。
 あくまで暴走を抑える為の予防薬としての服用であり、未成年飲酒には当たらない。
 もちろん、飲み過ぎると悪酔いする。
 逆に変化が起きるので、それにも注意しなければならない。
 深酒した私の血を吸ったリサが、血中アルコールを摂取した形となって悪酔いした時は大変だった。
 今はさほどアルコールが入っているわけではないので、マッサージされても大丈夫だ。
 リビングでリサとゲームをやりながら……。

 愛原「明日は土曜日だけど、学校はあるの?」
 リサ「うん、明日も午前中で終わり」
 愛原「そうか。で、レイチェルは休みって感じかな?」
 リサ「そうだろうね」
 愛原「分かった。明日は真っ直ぐ帰るのか?」
 リサ「そのつもり」
 愛原「分かった。高橋に言って、昼飯の準備しといてもらおう」
 リサ「ありがとう」

 リサはそう言って、周りを見渡した。
 そして、不意に私の唇に自分の唇を重ねて来る。

 リサ「わたし達の婚姻届はいつ出してくれるの?」
 愛原「い、いや、まだ先だろ。お前、今の戸籍じゃ、まだ17歳なんだから」
 リサ「人間のままだったら、先生より年上なのに……」
 愛原「しょうがないだろうが。早いとこ、人間に戻る算段を見つけないとな……」

 リサがやたらベタベタしてくるのは、“鬼ころし”の酔いが回ってきたからだろうか。
 鬼姿のままであることは変わりないのだが、噛み付く力も弱くなるほど鬼(型BOW)の力は封じられるし、何より……。

 リサ「ふわ……」

 リサは牙を剥き出しにするほどの大欠伸をした。

 愛原「眠いのか?」
 リサ「うー……鬼のくせに、お酒弱いのかなぁ……?これ飲むと眠くなる……」
 愛原「いや、弱くはないと思うぞ」

 アルコール度数15%の日本酒、本当に弱かったらそもそも飲めないからな。
 それをリサは1回、悪酔いするほど何パックも飲んだことがあるかのだから、やっぱり酒は強い方なんだと思う。

 愛原「もう風呂に入ったことだし、今日はもう寝ろ。明日も午前中だけとはいえ、学校なんだから」
 リサ「はーい……」

 ゲームはここで終わりにして、私はリサを自室に下がらせた。

 リサ「明日の土曜ホラー劇場は、絶対に観る」
 愛原「明日は飲まずに済むといいな」

 

 リサはソファから立ち上がった際に、ブルマの食い込みを直す仕草をした。
 私の気を引く為とはいえ、鬼の女は一途が多いというのは本当だなぁ……。

[3月11日午前6時30分 天候:晴 同地区 愛原家3階ダイニング]

 愛原「おはよう」
 パール「あっ、先生。おはようございます。今日は事務所休みでしょうから、もう少しゆっくりされていても良かったですのに……」
 愛原「いや、残務処理とかあるから、午前中は事務所にいるよ。リサも学校だしな。……あれ、高橋は?」

 今朝の朝食当番はパールである。
 昼食の当番は高橋だ。
 まあ、高橋のことだから、またホットドッグでも作ってくれるのだろう。
 それはいいとして……。

 パール「何か、部屋にいますよ」
 愛原「部屋に?」

 私が様子を見に行こうとすると、高橋が出てきた。

 愛原「おっ、高橋」
 高橋「あっ、先生。おはざっす!」
 愛原「ああ。どうしたんだ?」
 高橋「いや、ちょっと……」
 愛原「ん?」

 高橋はリビングに行くと、そこでテレビを点けた。
 ニュースをやっているチャンネルを回す。

〔「……はい、こちら事故現場の上空です。私は今、栃木県宇都宮市内の東北自動車道上空に来ています。御覧頂けますでしょうか?事故現場には、何台もの車が横転したり、衝突したりして、事故の壮絶さを物語っています」〕

 どうやら東北自動車道で昨夜遅く、複数台の車が事故に遭ったらしい。
 当事者としてはたまったものではないが、しかしあり触れた事故であることは否めない。

〔「……事故の原因は、まだ分かっていません。目撃者の話によりますと、突然、前を走る郵便局の大型トラックが横転し、そこへ後ろを走る別のトラックが追突。更に別のトラックや乗用車が追突、衝突したりしたもようです。またその際、トラックが燃え上がり、特に郵便局のトラックにおきましては、郵便物にも引火しており……」〕

 愛原「ゆ、郵便物にも引火しており!?」
 高橋「何か、すっげー嫌な予感がするのですが?」
 愛原「あ、後で郵便局に問い合わせてみよう」

 しかし一体、何が起こっているというのだろう?
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“私立探偵 愛原学” 「事務所へ帰所」

2024-03-23 11:36:11 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月10日12時56分 天候:晴 東京都港区新橋 新橋バス停→都営バス業10系統]

 ラーメンを食べた後、私達はレイチェルと別れた。
 新橋駅からは地下鉄日比谷線には乗れないが、銀座駅は近くにある。
 レイチェルは歩いてそこまで行くとのことなので、駅前で別れた次第。
 私達は特に時間の制約は無いので、バスで菊川まで帰ることにした。
 ここから出るバスなら、乗り換え無しで帰ることができる。
 やってきた都営バスは、ノンステップバス。
 都営は既に観光バスを除いて、全てのバスがノンステップである。
 乗り込んでから、後ろの席に座った。

 愛原「これからバスで帰るからと、パールに言った方がいいな」
 高橋「そうします」

 高橋は自分のスマホを取り出した。
 そうしているうちに発車の時間になる。

〔発車致します。お掴まり下さい〕

 バスは満席状態で定刻通りに発車した。
 利用客の多い路線で、出入庫便も入れると5分に1本という高頻度ダイヤである。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂き、ありがとうございます。このバスは銀座四丁目、勝どき橋南詰、豊洲駅前経由、とうきょうスカイツリー駅前行きでございます。次は銀座西六丁目、銀座西六丁目でございます。日蓮正宗妙縁寺へおいでの方は、本所吾妻橋で。日蓮正宗常泉寺と本行寺へおいでの方は、とうきょうスカイツリー駅前でお降りになると便利です。次は、銀座西六丁目でございます〕

 高橋「ん?」
 愛原「どうした?」
 高橋「いえ、パールから了解の返信はあったんスけど……」
 愛原「けど?何か、土産でも買ってこいってか?」
 高橋「いえ、そうじゃなくて、婚姻届の件です」
 愛原「婚姻届か。確か、7日に送り返したんだったな?」
 高橋「そうです。言われた通り、もう急ぎで」
 愛原「東京から仙台まで普通郵便だと2~3日掛かるけど、速達とかレターパックなら1日で届くはずだ。まあ、父さんも暇な年金生活者とはいえ、何かしらやることはあるだろう。今日辺り、送るかもしれない。ちょっと確認してみるよ」
 高橋「サーセン」

 私もスマホを取り出した。
 そして、揺れるバスの中、父親にLINEを送ってみた。
 まあ、すぐには返信は来なかったが。

[同日13時48分 天候:晴 東京都江東区森下4丁目 森下五丁目バス停→墨田区菊川2丁目 菊川駅前バス停]

〔ピンポーン♪ 次は菊川駅前、菊川駅前でございます。都営地下鉄新宿線、都営バス、築地駅前、錦糸町駅前、亀戸駅前方面はお乗り換えです。次は、菊川駅前でございます〕
〔次、止まります。お降りの際は、バスが停車してから席をお立ちください〕

 愛原「おっ、父親から返信があったぞ」
 高橋「何スか何スか?」
 愛原「今日、郵便局に出したそうだ。もちろん、速達&簡易書留。これなら確実に届くだろって」
 高橋「おおーっ!あざーっス!」
 愛原「後で父さんには、郵便料金振り込んでおくよ」
 高橋「俺にやらせてください!」
 愛原「い、いいのか?」
 高橋「はい!」
 リサ「それよりお兄ちゃん。お兄ちゃんのスマホも、何か着信あったよ?」
 高橋「んっ!?」

 高橋が自分のスマホを取り出すと、それはどうやらパールからのLINEらしい。

 高橋「……ついでに、夕食の食材買ってこいですって」
 愛原「よっ、新婚さん!」
 リサ「いらっしゃーい!」
 高橋「まだ結婚してませんって!」

〔「菊川駅前でーす」〕

 そうこうしているうちに、下車バス停に着いた。
 ピンポンピンポンとドアチャイムを鳴らしながら、引き戸式の中扉が開く。
 地下鉄の乗換駅ということもあり、ここで下車する乗客は多い。
 また、観光地の東京スカイツリーの近くまで行くバスということもあり、乗車客も多い。

 愛原「しょうがない。俺は先に事務所に戻るから、買い物よろしく」
 高橋「分かりました」

 バスを降りる。

 愛原「今日は金曜日だから、カレーかな?」
 高橋「そうですね。今日は豚肉が安いそうなので、ポークカレーでしょう」
 愛原「なるほど。……もしかして、ひき肉まで安かったりしない?」
 高橋「多分そうでしょうね。パールの買い物リストの中に、それも入ったりするんで」
 愛原「すると、今日の夕飯はカレーとハンバーグか」
 リサ「私も買い物付き合う!」
 高橋「おやつ買う気か!」
 リサ「それはついで」
 愛原「まあ、とにかく頼むよ。食費は家計からの支出だから、取りあえず立て替えといてくれ」
 高橋「分かりました」

 スーパーの前で高橋やリサと別れ、私は単独で先に事務所に戻った。

[同日14時00分 天候:晴 同地区 愛原学探偵事務所]

 事務所の建物に入り、階段で2階に上がる。

 愛原「ただいまァ」
 パール「お帰りなさい、先生」
 愛原「高橋とリサは、スーパーで食材の買い出しをしているよ」
 パール「了解しました」
 愛原「買い物リスト、俺も見たんだが、今夜はカレーだな?」
 パール「毎週金曜日はカレーです。今日は豚肉の特売日ですので、ポークカレーです」
 愛原「やっぱりな。特売なんだから沢山買って、リサには豚肉たっぷりのカレーにしてやれよ?」
 パール「分かりました」
 愛原「ひき肉が入ってるということは、ハンバーグもだな」
 パール「そうです」
 愛原「少し牛肉も混ぜてくれると、美味いんだがな?」
 パール「大丈夫です。豚肉と牛肉の合い挽き肉ですよ」
 愛原「それは良かった」

 パールは給湯室に行って、コーヒーを入れてくれた。

 パール「まだ外は寒いですか?」
 愛原「そうだなぁ……。たまに暖かくなると思ったら、寒くなる。三寒四温とは、よく言ったものだよ」
 パール「そうですね」
 愛原「それより、うちの父親から連絡があったぞ。さっき郵便局に行って、お前達の婚姻届、保証人の所にサインして、こっちに送り返してくれたそうだ。速達&簡易書留だから、明日には届くだろう」
 パール「でも明日は土曜日……あっ!」
 愛原「だから、速達や書留なら、土日でも配達されるんだってば」
 パール「そうでした」
 愛原「婚姻届を出したら、パーッとやろう、パーッと」

 この2人は、結婚式はやらないつもりらしい。
 ならばせめて、宴会の1つでもやりたいものだ。
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