報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「鬼の影」 2

2024-03-31 21:15:42 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月13日10時00分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所]

 善場「お疲れ様です、愛原所長」

 月曜日の午前中、善場主任が訪ねて来た。
 当然、用件は先日の私の電話の件についてだ。
 ヨドバシAkiba店内のカフェにて、蓮華から電話が掛かって来た件についてだ。

 愛原「お疲れ様です、善場主任」

 私と主任は、応接コーナーのソファに向かい合って座った。
 すかさずパールが、紅茶を持って来る。

 善場「おかまいなく。用件は先日の電話のことです」
 愛原「はい。状況を説明致しますと……」

 私は店内の見取り図を主任に見せながら、説明した。

 愛原「……というわけで、私達の会話に横から入るかのようなタイミングで、私のスマホに着信があったのです。まさか蓮華からだと思いませんでしたので、あいにく録音するのを忘れてしまいました」
 善場「着信履歴はありますね?」
 愛原「はい」

 私は自分のスマホを見せた。

 善場「なるほど、公衆電話からですか」
 愛原「はい。調べたところ、ヨドバシAkiba店内には、1階にしか公衆電話がありません。その電話も、入口近くにあるということもあり、昼間は日光に当たってしまうかもしれません」
 善場「詳しく調べてみないと分かりませんが、私は蓮華はその公衆電話を使ったわけではないと思っています」
 愛原「えっ!?」
 善場「私も私用で、ヨドバシAkibaには訪店したことがあります。その時、確かに公衆電話があったのを覚えています。所長が仰る公衆電話とは、それのことでしょう」
 愛原「無いと断言されますか」
 善場「断言はできませんが、ただ、使用していない確率は高いという推理です。私も元BOWですが、少なくとも私ならあの公衆電話は使いません」
 愛原「何故ですか?」
 善場「リスクが大きいからです。確かにあの電話は入口に近いので、日光に当たれない栗原蓮華にとっては、綱渡りの状態です。そもそも、外からは来れないわけですしね」
 愛原「なるほど……」
 善場「日光の当たらない場所……。例えば地下鉄の駅とか、窓やドアが近くに無く、日光が差し込む心配の無い屋内にある公衆電話とか、そこから掛けたものと思われます」
 愛原「では、蓮華はどうやって私達の会話を聞いていたのでしょう?」
 善場「……愛原所長は、“鬼滅の刃”は御覧になったことはありますか?」
 愛原「あ、はい。リサとか、高橋が観ていましたが……。まあ、私も、アニメのDVDとかは、リサが借りて来たのを一緒に観たりとかはしたことがあります。原作は、高橋がタブレットで読んでいたくらいですかね」

 私はチラッと高橋を見た。
 高橋は肯定するように頷いた。

 愛原「それが何か?」

 まあ、日光に弱い人食い鬼という蓮華の体質、“鬼滅の刃”の鬼と共通してはいるが……。
 電話を掛けるような鬼なんていたか?

 善場「“無限列車編”は御覧になったことは?」
 愛原「あ、はい。それもリサがDVDを借りてきたので、一緒に観たことがあります」

 実際には、DMMで郵送されてくるレンタルDVDのことだが。

 善場「あの話、人間でありながら、鬼に協力する人達が登場しますね?」
 愛原「あー……そういえば……って、ええっ!?」
 善場「お気づきになりましたか?」
 愛原「それって……?」
 善場「推測ですが、カフェの中で、所長達の話を盗聴していた人間がいたのかもしれません。そして、その人間が蓮華に、会話の内容を逐一報告していたとしたら?例えば、スマホを常に通話状態にして、所長達の会話を蓮華に聞かせるとか」
 愛原「その手がありましたか!」
 善場「近くに怪しい人間はいませんでしたか?」
 愛原「いやぁ……」

 まさかそんな人間がいるとは思わなかったので、気にもしていなかった。
 もちろん、あからさまに怪しいのがいたら、気づくとは思うが。
 あの場にいた高橋やパールにも聞いてみたが、気が付かなかったという。

 高橋「もう皆、スマホとか使っているから、誰かがそれで盗聴してたとしても分かんねーよ」
 パール「盗撮なら気づける自信はありますけど、盗聴はねぇ……」
 愛原「でも、よくそんな人間がいるという推理ができましたね。私より凄いです」
 高橋「せ、先生は名探偵ですよ!」
 善場「大したことないですよ。東北自動車道で、郵便局のトラックなどを事故らせた鬼達のことは御存知ですね?」
 高橋「はい」
 善場「BSAAにリークしたのは、上野利恵一派なんですよ」
 愛原「えっ!?」
 高橋「一派って、チームでも作ったのか?」
 善場「ええ。天長会の信者達ですね。……これは公になっていないのですが、上野利恵が鬼にした人間も何人かいるんですよ」
 愛原「ええっ!?」
 高橋「ヤベェだろ、それ!?」
 善場「殆どが娘の上野凛や上野理子のような『半鬼』ですが、人食いはしていません。全員が上野利恵に追従しているので、今のところは様子見としています。実際、BSAAにいち早く通報して、しかもその鬼達を追い詰める協力までしましたからね」
 愛原「天長会の信者に、鬼もいるのかよ……」
 高橋「“鬼滅の刃”の珠代一派みたいな感じっスかね?」
 愛原「そういうことか!」

 と、そこへエントランスのインターホンが鳴る。
 パールが応答した。

 パール「はい。愛原学探偵事務所でございます」
 配達員「こんにちはー!郵便局でーす!」
 パール「はい、少々お待ちください」

 パールはハンコを持って、1階に向かった。

 愛原「私が知らない間に、栃木ではそんなことになってたんですね」
 善場「今のところ害は無いですし、何より、人間の血が混じった『半鬼』という人権がある状態なので、BSAAも問答無用で射殺ということができないようです。もっとも、人食いをしたらBSAAがそうするという警告はしていますが」
 愛原「なるほど……」
 高橋「栃木は危険地帯っスね」
 愛原「そんな所に、蓮華がいるわけないですね。とにかく、上野利恵に人間の協力者がいるのと同様、栗原蓮華にも人間の協力者がいるということですか」
 善場「そう見るのが自然かと思われます。上野利恵一派という前例があるので」
 愛原「うーむ……」

 パールが戻って来た。
 普通郵便の他に、赤いレターパックがあった。
 それで、郵便局員が受領印を求めたのだろう。
 もちろんそれは、私の実家からではない。

 パール「先生。ホテル天長園の上野利恵副支配人からです」
 愛原「なっにー!?」

 噂をすれば何とやらだ。
 どうして鬼達は、こうタイムリーに影を晒すのが得意なんだ?

 高橋「中身は何スか?」
 愛原「品名は、『宿泊招待券』とあるな」
 高橋「先生を食う気ですか!?」
 愛原「いや、そんなことはないと思うけど……」

 開けると、中には挨拶状と、宿泊券が同封されていた。
 私だけではなく、4人分ある。
 恐らく、この事務所の人数分用意してくれたのだろう。

 愛原「『春休み、是非起こしください』みたいなことが書いてある」
 高橋「春休みはリサ、藤野ですぜ?」
 パール「仮に皆で行くにしても、1人余ってしまいますね」
 愛原「善場主任、来られます?」
 善場「これでも国家公務員ですので、利益供与を受けるわけには参りませんので」

 宿泊券については、取りあえず保留とすることにした。

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