報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「海老名サービスエリア」

2024-03-18 20:24:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月9日10時30分 天候:曇 神奈川県海老名市大谷南 海老名サービスエリア]

 ホテルを出発した私達は、東名高速に乗り、東京を目指した。
 途中の海老名サービスエリアで休憩を取ることにする。
 なるべくなら、人の多いサービスエリアが良い。
 足柄だと休憩するには早い為、その次に大きなサービスエリアと言えば海老名だからである。
 あとそれと、早く静岡県を出たいというのもあった。
 栗原蓮華がヘリコプター墜落後、どのような行動を取ったかは不明だ。
 もしかしすると、またトラックに便乗して移動しているかもしれない。
 そして、それでまた東京に戻らないとも限らないのだ。
 今のところ、蓮華の行方については完全に不明となってしまった。

 愛原「リサにお土産を買って行こう」
 高橋「了解です。俺は一服してますんで」
 愛原「ああ、分かった」

 平日ということもあり、あまり行楽客はいない。
 それでも大型駐車場を見ると、観光バスの姿が何台か見えた。
 足柄同様、ここも有名なサービスエリアなのだ。
 そして休日ほどは混まないものの、やはり名物のメロンパンなどは大人気のようだ。
 他にもカレーパンが推されている。
 とにかくリサには、食べ物を土産として買って行ってあげるのが良い。
 あとは、自分用にも買って行くか。
 小田原の蒲鉾もあるようなので、これを買って行って、酒のつまみにするのも良い。

 愛原「あとは肉系統だな」

 当然ながら、冷凍とか冷蔵状態で売られている。
 お土産用として購入すると、保冷バッグに入れられ、保冷剤まで入れられるほどの徹底ぶりだった。
 まあ、これでリサの機嫌が直れば良いだろう。
 一応、LINEで、リサ用のお土産を購入した旨知らせると、すぐに返信が返って来た。

 リサ「先生が早く帰って来ることが、最大のオミヤゲ!」

 という身も蓋もない返信であった。
 こりゃ、リサより早く帰る必要があるな。
 暴れ鬼が蓮華にプラスしてリサだなんて、霧生市どころの騒ぎじゃなくなるぞ。


 高橋「先生」

 土産物の物色が終わると、高橋と合流した。

 愛原「おっ、一服は終わったのか?」
 高橋「おかげさまで。先生、リサへの土産は買ったんスか?」
 愛原「何とかな」
 高橋「先生もコーヒーブレイクされては?」
 愛原「リサより早く帰る必要があるから、あんまりのんびりできないんだよなぁ……」
 高橋「あいつ、午後帰りですよね?週末の東名は渋滞が当たり前ですけど、平日なら大丈夫っスよ」
 愛原「いや、もうすぐ春休みだから、フルでの授業はもう少ないらしい。今日なんか、昼過ぎに帰りだって」
 高橋「マジっスか」
 愛原「まあ、リサには『昼飯食ってから帰ってこい』って言っておいたけど」
 高橋「それで引っ張る作戦っスね!さすがっス!」
 愛原「とにかく、俺はトイレに行って、コーヒー買ってから車に戻る。土産、車に積んどいてくれ」
 高橋「分かりました。じゃ、俺は車に戻りますんで」

 高橋は高橋で、自販機コーナーで缶コーヒーを買って行った。
 私は私で、トイレに行った後、自販機コーナーで紙コップの自販機でコーヒーを買い求めた。
 抽出中、“コーヒールンバ”のインストゥルメンタルが流れる、あの自販機だ。
 それから車に戻る。

 高橋「先生、あのサービスエリア、家系ありましたよ」
 愛原「そうか。時間が時間なら、そこで昼飯食ってもいいな」

 私はコーヒーを一口飲んだ。
 自販機で購入したものとはいえ、一応はレギュラーコーヒーだから、車内にコーヒーの香りが充満する。

 高橋「それじゃ行きますか」
 愛原「ああ」

 高橋がエンジンを掛けた時だった。

 愛原「ん?」

 私のスマホに着信があった。
 電話に出てみると、それは公一伯父さんだった。

 愛原公一「よお?昨夜は大活躍じゃったみたいじゃな?」
 愛原学「伯父さん!?」
 公一「ワシらはさすがにタクシーで避難したが、お前達は立ち向かったようじゃの。偉い偉い」
 学「あの時すれ違ったタクシーって、伯父さんが乗ってたの!?」
 公一「もう1つネタばらしすると、お前のかつての部下も同乗しとったぞ」
 学「高野君も!?やっぱり伯父さんは、“青いアンブレラ”の一員に?」
 公一「それはどうかの。お前もなし崩し的にやってきて、今に至っとるわけじゃろ?ワシも似たようなものじゃ。血は争えんものじゃの」
 学「しかし……。伯父さん達がどうしてあそこに?」
 公一「そりゃあ、鬼退治じゃ。国連軍がだらしないから、“青いアンブレラ”でやることになっての」
 学「でも逃げたってことは……?」
 公一「あやつ、狙撃に失敗したようじゃ」
 学「高野君、狙撃はあまり得意じゃなかったような気がするけど……」

 善場主任からはエイダ・ウォンのコピーだと言われ、資料によれば、本物のエイダは狙撃の名手だったというが、コピーはそうでもないらしい。

 公一「とにかく、“青いアンブレラ”では自分のケツは自分で拭くつもりのようじゃ。というか、もう拭いているのだがの」
 学「そ、それってまさか……?」
 公一「『ここから先は有料となります』」
 学「何さり気なく有料サイトへ誘導してんの!」
 公一「まあまあ。ワシがこうして電話したのは、蓮華だけでなく、他の鬼にも気をつけいということじゃ」
 学「他の鬼?リサなら、俺が何とか機嫌を直させるよ」
 公一「違う違う。お前、何も気づいとらんのか?」
 学「何が?」
 公一「沼津では化け物と戦ったそうじゃの?」
 学「何で知ってるんだよ……」
 公一「化け物にしたのは、栗原蓮華じゃろう」
 学「まあ、他に考えられるのは無いね」
 公一「蓮華の被害者はBSAAが何とかしているようじゃが、中には漏れている者もいるんじゃないのかね?」
 学「まさか……」
 公一「そして、そういう者達ほど、鬼化したとは考えられんかね?」
 学「俺が見た夢……」

 私が昨夜見た訳の分からない夢も、そういうものだったような気がする。

 公一「正夢にならんといいな。それじゃ、気を付けて帰るのじゃぞ」

 それで伯父さんからの電話は切れた。

 高橋「何でした?」
 愛原学「蓮華は“青いアンブレラ”が確保したかもしれない」
 高橋「何ですって!?」
 愛原「しかも、蓮華に噛まれたりして、他にも鬼になった者がいるかもしれないから気をつけろだってさ」
 高橋「それは……ヤバいっスね」
 愛原「とにかく、善場主任に今の話を報告するから、車を出してくれ」
 高橋「分かりました」

 高橋は車を発進させて、サービスエリアの出口に向かった。
 善場主任に報告すると、“青いアンブレラ”の件は少し驚いていたが、裏を取る必要があるということで、一先ず保留ということになった。
 また、他に鬼化した者がいるかもしれないという話については、調査するとのことだった。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“私立探偵 愛原学” 「緊迫の朝」

2024-03-18 13:38:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月9日08時00分 天候:曇 静岡県富士市伝法 ABホテル富士・4階客室]

 私は訳の分からぬ夢を見て目が覚めた。
 枕が変わると、どうも眠りが浅くなるのが私の特徴だ。
 枕元に置いたスマホがアラームを鳴らしたので、手を伸ばして止める。

 愛原「おはよう……」

 私は隣のベッドを見たが、高橋はいなかった。

 愛原「ん?」

 私が起き上がる。
 バスルームには、人の気配がしない。
 高橋のカードキーだけが無くなっている。
 但し、荷物はそのままだ。
 また、タバコが無くなっていることから、どうやら喫煙所に行っているだけかもしれない。
 私はテレビを点けた。
 昨夜はただ、BSAAのヘリが墜落しただけしか報道していなかった。
 一夜明けて、少しは詳しく報道されているかもしれない。
 平日のこの時間、民放では情報番組をやっているのだが、何故かどのチャンネルを回しても、ヘリの墜落を報道している所は無かった。
 試しにNHKにしてみても、大河ドラマをやっているだけだ。
 そんなに深刻な事故ではなかったのか?
 スマホでネットニュースを見てみたが、そちらにはあった。
 だが、昨夜の事故の続きしか書かれていない。
 富士宮市郊外から飛び立ち、同じ静岡県内の陸上自衛隊駐屯地に向かっていたBSAAのヘリが墜落し、乗員全員死亡が報道されていた。
 どうやら、エンジントラブルが原因らしい。
 よく分からないが、報告会の時にでも善場主任に聞いてみることにしよう。
 私はバスルームに入って、顔を洗うことにした。

[同日08時30分 天候:曇 同ホテル1階・朝食会場]

 やはり高橋は、一服に行っていただけだった。
 既に私服に着替えている。
 7時半過ぎに目が覚めてしまい、そのまま目が冴えてしまって、2度寝できる状態じゃなかったので、顔を洗って一服しに行っていたとのこと。
 朝食はベタな法則通り、バイキングであった。
 最後の食品補充が行われる。
 9時までということで、既に早朝出発組の宿泊客は朝食を終えており、会場は比較的空いていた。
 空いているテーブル席に座る。
 会場にはテレビがあったが、特にヘリ墜落の報道はしていなかった。

 愛原「どれ、取ってくるか」

 席を確保して、食料確保に向かう。
 どちらかというと、私は御飯食であった。

 高橋「先生、何か悪い夢でも見られました?少し、魘されてる感じでした」
 愛原「マジか。いや、そこまで悪夢ってほどの物は見てないんだが……」

 朝食に箸を付けていると、高橋がそんなことを言いだした。

 愛原「枕が変わると、変に眠りが浅くなるから、夢を見やすいんだよ」
 高橋「あ、それは分かります。特にこのホテルじゃ、そうでしたね」
 愛原「そうなのか?」
 高橋「ええ……そうなんスすよ」

 高橋は高橋で、何か変な夢でも見たのだろうか?
 私がそれを聞くと……。

 高橋「いえ。多分、霧生市だと思うんスけど、そこでゾンビ無双してた夢っス」
 愛原「ああ、その夢か。あれは人生史上で最大のピンチだったもんな。夢に出て来るのも無理は無いよ。その夢だったら、俺もたまに見る」

 そして、その度にリサに誘惑される。

 

 こんな夢とか。
 実際この時のリサは白い仮面を着けていたのだが、夢の中のリサは素顔のままだった。

 高橋「そうですか」
 愛原「昨夜は色々と変な夢だったから、あんまりよく覚えてないんだよなぁ……」
 高橋「それはしょうがないっスよ。覚えてない夢とかありますもん」
 愛原「だよな」

 最後に食後のコーヒーを飲んでいると、スタッフが朝食の片づけに入る。

 愛原「飲み終わったら、チェックアウトの準備するか」
 高橋「はい」

 因みにリサからの鬼LINEは入っていたので、それを返信するのに忙しかった。
 これは帰り際、お土産でも買って行ってやらないと不機嫌になるだろう。

[同日09時00分 天候:晴 同ホテル4階客室]

 再び客室に戻ると、私のスマホにメール着信があった。
 それは善場主任からだった。

 善場「愛原所長、おはようございます。善場です」
 愛原「善場主任、おはようございます」
 善場「昨日はお疲れ様でした。今はまだホテルですね?」
 愛原「はい。今からチェックアウトするところです。何かありましたか?」
 善場「ニュースは御覧になりましたか?」
 愛原「あ、はい。あの……BSAAのヘリが墜落した件ですか?」
 善場「そうです」
 愛原「あの……そのヘリというのは、蓮華を乗せたヘリのことですよね?」
 善場「そうなんです」

 善場主任が電話口で溜め息を吐くのが分かった。

 愛原「蓮華も死んだんですか?」
 善場「いえ。遺体の回収はできていません。恐らく、逃走したものと思われます」
 愛原「うわ……」
 善場「せっかく所長方が苦労して捕獲して下さったのに、それを踏みにじるようなことになってしまい、真に申し訳ございません」
 愛原「いえ、そんなデイライトさんの責任ではないですから。しかし、どうしてエンジントラブルなんか起こしたのでしょう?」
 善場「それは……先に申し上げますと、エンジントラブルかもしれないというプレス発表です」
 愛原「実際には違うと?」
 善場「フライトレコーダーの解析を進めていますが、どうやら蓮華に投与していた麻酔薬の効果が、思ったほど弱かったようです。それで覚醒してしまった蓮華が機内で暴れてしまい、パイロットが殺害されてコントロールを失い、墜落したものと思われます」
 愛原「うわ……」
 善場「これは最重要機密事項ですので、どうかご内密に」
 愛原「分かっております」

 それを民間探偵業者である私に話してくれたということは、また捜索依頼があるかもしれないということだ。

 善場「今はもう日中ですから、彼女も動けないと思いますが、所長方は近辺におられます。どうか油断なさらず、お気をつけて御帰京ください」
 愛原「分かりました」
 善場「日に当たらなければ大丈夫という見方もあります。今、静岡県は曇でしょう?」
 愛原「そうですね」
 善場「都内も今日はぐずついた天候になるとのことですので、尚更油断はできません」
 愛原「でも、夏場なんかは曇でも日焼けするじゃないですか。紫外線に弱いのでしたら、この天気でも動けないかもですよ」
 善場「あくまで、見方によりますね。あと、蓮華が今どういう体質なのかにもよります」
 愛原「それもそうですね。分かりました。なるべく速やかに帰京したいと思います。報告会はどうしましょうか?」
 善場「明日の午前中で如何でしょう?今日中に帰京されて、報告書を作成することは可能ですか?」
 愛原「恐らく大丈夫だと思います」
 善場「かしこまりました。それで宜しくお願い致します」
 愛原「承知しました」

 私は電話を切った。
 そして、今の電話の内容を高橋に伝えた。
 そしたら、やっぱり驚いていた。

 高橋「何だよ!せっかく先生が苦労して捕まえたのに、水の泡にしやがって!」
 愛原「しょうがないよ。とにかく、外が明るいうちに俺達も帰ろう。墜落現場は、富士宮市と富士市の境目くらいだ。俺達は今、富士市にいる。明るいうちは蓮華も動けないだろうが、その隙に東京に戻るんだ」
 高橋「りょ、了解しました!」

 そして私達は急いで荷物を纏めると、ホテルをチェックアウトしたのだった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする