報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「復興の途上、アルカディアシティ」

2022-07-26 21:38:20 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[魔界時間7月14日11:00.天候:晴 アルカディアシティ・デビルピーターズバーグ駅→環状線内回り急行電車先頭車内]

 地下鉄乗り場から高架鉄道乗り場へ移動中の魔道士2人。
 駅の造りは、まるで戦前の駅のようだ。
 レンガ造りだったり、石造りだったりする。
 木造の駅舎は、少なくともアルカディアシティ内には無いようだ。
 戦前の日本の駅も、行き交う人々の装いは洋の東西ごちゃ混ぜであった。
 ここではそれにプラスして、PRGの世界の装いをした者も散見される。
 恐らく現実世界では、コスプレイベントでしか見られないであろう装いだ。
 それを言うなら、マリアも似たようなものである。
 現実世界で、堂々とローブを羽織る者はそうそういないだろう。
 しかし、その下は制服ファッションという、ちぐはぐさだ。
 これはマリアが、現実世界と魔界のどちらに住むかを迷っているのではと思われた。

 

 女戦士:「ちょいと失礼、そこの魔法使いさん達」

 高架鉄道の駅に向かって歩いていると、後ろからビキニアーマーの女戦士に話し掛けられた。

 勇太:「な、何でしょう?」
 女戦士:「この駅の近くに、傭兵ギルドがあるって聞いたんだけど、知ってるかい?」
 マリア:「それなら、あの地下鉄の駅の裏だ。入口はバーになってるから、すぐに分かると思う」
 女戦士:「地下鉄の裏ね。分かった。ありがとう」

 女戦士は手持ちの剣を隠そうもせず、マリアの言われた通りの道を向かった。

 勇太:「あー、ビックリした……」
 マリア:「どうせサーシャで慣らされたんだろ?何を今さら……」
 勇太:「そんなこと言われたって……。あんな、露出の激しい姿を見せられたら……」
 マリア:「このスケベ!」
 勇太:「いやだって、現実世界でそうそうあんなに露出の高い人は……」
 マリア:「ビーチじゃそうだろ」
 勇太:「そりゃ、海水浴場では当たり前でしょ!日常的にさ……」
 マリア:「女子陸上競技の選手のユニフォームは、結構露出が高いと思うけど?」
 勇太:「それだ!」
 マリア:「彼女らは実用的な理由で、ああいうユニフォームを着てるんだ。あの戦士達も同じさ」
 勇太:「でも陸上競技と格闘技は違くない?」
 マリア:「いや、似たようなものだろう」
 勇太:(いや、絶対違うと思う)

 高架鉄道の駅に行くと、そこではキップを買う。

 駅員:「サウスエンドまで、大人2人ですね。はい」

 窓口でキップを買うと、硬券を渡された。
 地下鉄の駅は自動改札機が設置されているが、高架鉄道の方は自動化されていない。
 改札口のブースに立っている駅員にキップを渡して、入鋏してもらう形となる。
 それから階段を上がって、ホームに向かう。
 すると、ちょうど電車がやってくるところだった。

 勇太:「これは何だ?」

 焦げ茶色の電車、6両編成がやってきた。
 恐らく、戦前に製造された旧型国電だと思われる。

 勇太:「モハ30系……かな?」

 片開きのドアが片側に3つ付いている。
 それが開いた。

〔「環状線内回り、急行電車です。サウスエンドまで急行、サウスエンドから先、各駅停車となります」〕

 乗り込むと、木張りの床だった。

〔「環状線内回り急行です。まもなく発車致します」〕

 旧型国電には放送設備は無かったと思うが、魔界高速電鉄で運用される時に取り付けられたのだろうか。
 発車ベルのジリジリ音がホームに響き、それから車掌の笛の音が聞こえて来る。
 それから、大きなエアー音がしてドアが閉まる。
 そして電車は、釣り掛け駆動の旧式のモーター音を響かせて発車した。

〔「本日もアルカディアメトロ環状線をご利用頂き、ありがとうございます。環状線内回り、急行電車です。次はドワーフバレー、ドワーフバレーです。中央線と冥鉄線はお乗り換えです」〕

 霧の町アルカディア。
 時折電車は、霧に包まれることがある。
 緑色の座席に腰かけている2人が、車窓からアルカディアシティの街並みを見てみた。
 所々、瓦礫が散乱している所はあるものの、住民総出で復旧活動を行っている様子も見て取れる。
 電車の中吊り広告には、だいぶ前のアルカディアタイムス号外が掲示されている。
 それは、アルカディア王国とミッドガード共和国との間で停戦が合意されたというものだった。
 今やミッドガード共和国も一党独裁制であるが、その独裁している一党というのが、アルカディア王国との政争に負けて国外逃亡した魔界民主党の面々だったのである。
 そこから大統領を輩出し、現在に至る。
 電車内の乗客は地下鉄と違い、人間が多い。
 人魔一体の王国であるが、どうしても妖怪などは地下鉄に多く、人間は高架鉄道に多い。
 乗務員の構成も、そういった傾向がある。

 勇太:「一応、威吹の家に連絡した方がいいかもしれないな」
 マリア:「それもそうか。アポ無しで行ったりしたら、また襲われるかもしれんね」

 威吹を慕って、今や大勢の弟子が住み込みで修行をしている。
 その中でも一番弟子の坂吹という者は警戒心が強く、勇太が威吹のかつての盟友だと聞いているはずなのに、追い出そうとしたくらいである。

 勇太:「駅に着いたら電話してみよう」

[同日11:30.天候:晴 アルカディアシティ・サウスエンド駅]

〔「まもなくサウスエンド、サウスエンド、南端村、日本人街です。お出口は、左側です。サウスエンドまで急行で参りましたが、サウスエンドから先は各駅に止まります」〕

 電車が高架駅に進入する。

〔「サウスエンド~、サウスエンド~」〕

 サウスエンドが正しい地名なのだが、ここに異世界転生などで住み着いた日本人達が、それを直訳した『南端村』と呼ぶようになり、今や副駅名として『南端村』が定着している。
 電車を降りた2人は、駅の公衆電話に向かった。

 勇太:「これ、1ゴッズと10円と、どっちが安いんだろうなぁ……」

 今や現実世界の日本でさえ、公衆電話は過去の遺物になろうとしている。
 だが、この魔界ではまだまだ一般的。
 というか、先ほどデビルピーターズバーグ駅で話し掛けて来た女戦士は使ったことがあるのだろうかと思うくらい。
 何しろ、こちらの電話は、テレホンカード式ですらない。

 勇太:「あ、もしもし。威吹?僕だけど……覚えてる?」

 すると電話口の向こうから、大歓喜の声が聞こえて来た。

 勇太:「突然で悪いんだけど、実は今、サウスエンド駅にいるんだ。ちょっと聞きたいことがあるから、そっちに行ってもいい?」

 勇太は左手で受話器を持ちながら、マリアに向かって右手でマルを作った。

 勇太:「それじゃ、後ほど……」

 勇太は電話を切った。

 マリア:「そうと決まれば、タクシーで行こう」

 もっとも、魔界には自動車は無い。
 タクシーといえば辻馬車である。

 勇太:「ちょっと待って。その前に、お土産買っていこう」

 勇太は駅前商店街に立ち寄ると、そこで油揚げの詰め合わせセットを購入した。
 威吹は妖狐。
 妖狐と言えば稲荷。
 稲荷と言えば油揚げだからである。
 それを手に、駅前で客待ちしていた辻馬車に乗り込んだ。
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“大魔道師の弟子” 「魔界へ」

2022-07-26 16:27:04 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月14日10:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル]

 チェックアウトの時間になり、勇太とマリアは部屋の鍵をフロントに返した。

 エレーナ:「それじゃ、ここから私が案内するぜ」

 エレーナはエレベーターのスイッチ鍵を持って来ると、これでエレベーターを地下階に行けるようにした。
 それで、地下階に向かう。
 そこは表向き、ホテルの機械室や倉庫があることになっている。
 その一画に、エレーナが寝泊まりしている部屋があるのだが。
 元々はボイラー室だった所を改築したもの。
 勇太達の行き先はそこではなく、エレーナの部屋の近く。
 そこに魔法陣が描かれている場所がある。

 エレーナ:「正直、今、穴は不安定だ。魔界のどこに出るか分からないと思った方がいい」
 勇太:「それでも、アルカディアシティのどこかには出るんでしょう?」
 エレーナ:「……と、思うんだが」
 マリア:「いい加減だな」
 勇太:「とにかく、行ってみよう。行かないことには、何も分からない」
 マリア:「……そうだな」
 エレーナ:「さすがは稲生氏だぜ。分かったら、さっさと魔法陣に入るんだぜ」

 勇太とマリアは、魔法陣の上に乗った。

 エレーナ:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」

 エレーナが呪文を唱え、マリアが魔法陣に聖水を振り掛ける。
 魔女が『聖水』を使うのも不思議な話だが、とにかく魔法陣で使用するのである。
 魔法陣から紫色の光が現れ、2人はそれに包まれた。
 包まれた側から見れば、目の前が眩しくなって何も見えなくなるように感じる。

[魔界時間7月14日10:30.天候:不明 魔界王国アルカディア王都アルカディアシティ・地下トンネル?]

 光か消えると、2人は真っ暗な空間に送り込まれていた。

 勇太:「うわっ、真っ暗だ!」
 マリア:「ちょっと待って。今、光を……」

 マリアは魔法の杖を取り出すと、それでその頭部分を光らせた。
 少し赤みを帯びているのは、偽者の勇太を何人か叩き殺したからであろうか。

 勇太:「ここはどこなんだ?」

 コンクリートに包まれた空間なので、どこかの人工物の中のようだ。

 勇太:「あそこにドアがある」

 そして、そんなコンクリートの空間の隅に、1枚の鉄扉があった。
 鍵は掛かっていたが、幸いそれは内鍵になっていた。
 そのドアを開けると、その向こうも暗闇であった。
 違うのは、若干の明かりはあること。
 等間隔の白い明かりがポツポツと点いていて、まるでトンネルの中のようだ……。

 マリア:「何か来る!」

 その時、そのトンネルの向こうから電球色の光が近づいて来た。
 それは電車だった!

 勇太:「わっ、ととと!」

 2人は慌てて、今の倉庫のような部屋に飛び込んでやり過ごした。
 開業当時の地下鉄銀座線の車両に酷似した物が、6両編成で通過していった

 マリア:「地下鉄の倉庫なんかに送り込みやがって!」
 勇太:「でも地下鉄が走っているということは、アルカディアシティもだいぶ復興したってことじゃない?」
 マリア:「そうかもな……」
 勇太:「取りあえず、駅に向かって歩こう」

 2人は電車が来ないことを確認すると、トンネルの中に出た。

 マリア:「ここはどこなんだ?」
 勇太:「1号線のどこかだね。さっきの電車、①っていう系統番号付けてたから」
 マリア:「そうか……」

 今度は対向電車がやってくる。
 それは既に現役を引退しているニューヨークの地下鉄だった。
 魔界高速電鉄は、何でもありである。

[同日10:45.天候:晴 アルカディアシティ・デビルピーターズバーグ駅]

 電車が向かって行った方に歩いて行くと、そこは1号線の終点駅、デビルピーターズバーグ駅だった。
 電車が発車していったのを見計らって、ホームに上がる。
 先に勇太が上がって、マリアに手を貸す。

 マリア:「こういう時、師匠みたいな浮遊魔法が使えると楽なんだけどな」

 マリアは勇太に手を貸してもらいながら、ホームに上がった。
 どうしてもよじ登る時に、足を大きく上げる関係で、マリアのスカートの中が見えてしまう。
 マリアはあまりオーバーパンツを穿くのが好きではないのだが(冬場はストッキングは穿く)、代わりに魔界ではスポーツ下着を着けて来ることが多い。
 実際勇太が見たマリアのショーツは黒色をしていたが、スポーツメーカーが製造したスポーツタイプのショーツだろう。

 勇太:「難しいの?」
 マリア:「才能があれば、ミドルマスター辺りから使える。無かったら、ハイマスターから」
 勇太:「結構厳しいな」
 マリア:「で、どうする?取りあえず、駅に着いたけど……」

 デビルピーターズバーグ駅は、東京で言えば池袋みたいな所にある。
 アルカディア王国の国土自体、まるで東京都を数倍拡張したかのような形をしており、王都も23区のような場所にあった。
 ここで考えられる選択肢は3つ。

 1:魔王城へ向かう。(1番街へ)
 2:魔界民主党本部へ向かう。(1番街へ)
 3:威吹の家に向かう。(サウスエンドへ)

 勇太:「こっちの安倍首相がどんな状態だか知らないのに、迂闊に関係先に向かうのは危険だと思う。威吹の様子も気になるし、威吹の家に行ってみたいと思うんだけど、いいかい?」
 マリア:「まずは情報収集だな。分かった。そうしよう。どうやって行く?」

 1:地下鉄を乗り継いで行く。
 2:路面電車を乗り継いで行く。
 3:高架鉄道で行く。
 4:辻馬車で行く。

 勇太:「高架鉄道で行こう。あれなら乗り換え無しで行ける」
 マリア:「分かった」

 地下鉄や路面電車、高架鉄道は同じ鉄道会社である。
 しかし運営本部はそれぞれ違う為、改札口はそれぞれ別となる。
 しかも改札口の出口は、フリーである為、キップを持っていなくても良い。
 ターンスタイル型の自動改札機を通って、コンコースに出ると、高架鉄道の乗り場へと向かった。
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“大魔道師の弟子” 「出発の朝」

2022-07-25 23:29:23 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月14日07:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル3F客室]

 マリアは昨夜、嫌な夢を見た。
 それは勇太との結婚式に、イリーナも参列していたものの、何故だか微笑を浮かべたまま椅子に座って微動だにせず、式が進むにつれて体が透け始め、そして式が終了すると同時に消えて無くなってしまうというものだった。

 マリア:「今の……何?」

 目が覚めると、汗びっしょりになっていたので、起き上がると、冷蔵庫で冷やしておいたペットボトル入りの水を飲んだ後、バスルームに向かった。

 マリア:「縁起でもない夢だ……」

 そして、そこで全裸になると、シャワーを浴び始めた。

[同日08:00.天候:雨 ワンスターホテル1Fロビー→レストラン“マジックスター”]

 着替えの終わったマリアが1階まで降りると、勇太がロビーで待っていた。

 勇太:「やあ、マリア。おはよう」
 マリア:「おはよう」
 勇太:「今朝も凄い雨だよ」
 マリア:「大変なことになる前に、私達は魔界に行った方がいいかもしれない」
 勇太:「同感だ。でも、その前に朝食だね」

 2人は連れ添って、レストランに向かった。

 使い魔:「いらっしゃいませー」

 レストランに行くと、浅黒い肌の女使い魔がウェイトレスの恰好をしてやってきた。
 ホールスタッフはキャサリンの使い魔のカラスだが、モーニングの厨房担当は違うという。
 朝食の時間帯だというのに、レストランには他に客はいない。
 昨夜のディナーの時は、何組かの客がいたのだが……。

 使い魔:「今朝はドリンクのみ、ドリンクバーです。朝食は今お持ちしますので、しばらくお待ちください」
 勇太:「ありがとう。それじゃ、ドリンクを取ってこよう。マリア、ドリンクは何がいい?」
 マリア:「……勇太に任せる」
 勇太:「えっ?」
 マリア:「勇太に任せる。私の好きそうなドリンクを取ってきて」
 勇太:「マリアの好きなドリンク……」
 マリア:「そう。お願い」
 勇太:「分かったよ」

 勇太は席を立つと、ドリンクバーに向かった。
 しばらくして、勇太が戻って来る。

 勇太:「マリアには、これでいいかな。ブラックコーヒー」

 勇太はマリアの前に、ホットのコーヒーを置いた。
 ミルクも砂糖も無い。

 勇太:「マリアとは、これから大人の付き合いになるんだから、飲み物も大人っぽく……どうしたの?」

 マリアは冷ややかな目で勇太を見た。
 そして、手持ちの魔法の杖の頭を勇太に向ける。

 マリア:「オマエは勇太じゃないな。何者だ!?」
 勇太:「えっ?な、何言ってるんだよ?一体、どうしたの、マリア?」
 マリア:「黙れ!この偽者!!」

 マリアは立ち上がると、魔法の杖で勇太の頭を殴りつけた。

 勇太:「ぎゃっ……!」

 非力な魔道士のマリアにしては、レストラン内に鈍い音が響く。
 勇太の頭が、かち割られたのだ。
 その死体は床に崩れ落ちれると、たちまち融け始めた。
 そして、最後には塵になって消えたのである。

 マリア:「くっ!当日になって、こんな嫌がらせを……!」

 その時だった。

 勇太:「わーっ、ゴメンゴメン!マリア、寝坊しゃちゃって!もう食べてた!?」
 マリア:「いや、まだこれからだよ。ところで勇太、寝坊のことは怒ってないから、頼みがある」
 勇太:「何だい?マリアの為なら、何でもするよ」
 マリア:「ありがとう。だけど、大したことじゃない。あそこのドリンクバーから、ドリンクを取って来て欲しいんだ」
 勇太:「えっ?何がいいの?」
 マリア:「勇太に任せる。私が好きそうなものを持ってきて」
 勇太:「何だか難しそうだな。分かった。持って来るよ」

 勇太は席を立った。
 そして、しばらくして戻って来ると……。

 勇太:「お待たせ。これでいい?」

 勇太はマリアの前に、トマトジュースを置いた。

 勇太:「朝は健康的にトマトジュース。オススメだよ」
 マリア:「……2人目だからと油断すると思ったか?」
 勇太:「えっ、何が?」
 マリア:「ナメるな!偽者!!」

 マリアは再び魔法の杖で、勇太の頭を殴りつけた。
 元々は木製の魔法の杖だが、血を吸い取った杖は、頭の部分が赤く染まるという。
 そして、2人も死体すら残さず消えたのである。

 オーナー:「一体、何の騒ぎだ!?」

 そこへ、オーナーが飛び込んで来た。

 マリア:「オーナー、本物の勇太はどこですか?」
 オーナー:「本物の稲生さん?どういうことです?」
 マリア:「このレストランに来た勇太は、2人とも偽者でした。日本では、『2度あることは3度ある』と言いますでしょう?だからきっと、次に来る3人目も偽者だと思うのです」
 オーナー:「『3度目の正直』という言葉もありますよ?」
 マリア:「うーむ……」
 オーナー:「次に来る3人目に賭けてみましょう。それでダメなら、対策を考えます」

 すると、3人目の勇太がレストランの方からやってきた。
 今度の勇太は、何だか不機嫌な顔をしている。

 マリア:「何だよ、勇太?低血圧か?」
 勇太:「そんなこと、どうでもいいよ。それより、キミに頼みがある」
 マリア:「寝坊して頼みなんて、よく言えるな」
 勇太:「寝坊なんかしていないよ。偽者のマリアに、さんざんっぱら振り回されたからね」
 マリア:「はあ!?どの口が言うんだ!?私だって、さっきまで……!」
 オーナー:「まあまあ、2人とも。夫婦喧嘩はダメですよ」
 勇太:「まだ結婚しでません!」
 マリア:「同じく!」
 オーナー:「稲生さんのマリアさんに対する頼みって何ですか?しかも、マリアさんも稲生さんに頼みごとがあるようですが?」
 勇太:「マリアに、そこにあるドリンクバーからドリンクを持って来て欲しいんだ。僕の好きそうな物を持って来てほしい」
 マリア:「そっくり返すぞ!あんたも私にドリンクを持って来て!」
 勇太:「先に頼んだのは僕だ!キミが持って来てくれ!」
 マリア:「はあ!?寝坊したくせに何だ!偉そうに!」
 オーナー:「まあまあ、2人とも!落ち着いて!じゃあ、こうしましょう。私が今から、アイマスクを持って来ます。これで片方ずつ目隠しをします。もう片方は、ドリンクバーから何を持って来るか、メモに書いてください。これでいいですね?」
 勇太:「……オーナーがそう言うのでしたら」
 マリア:「……分かりました」

 まずはマリアがアイマスクで目隠しする。
 その間、勇太はメモを書いた。
 そしてそれを、オーナーに渡す。
 オーナーは封筒に入れて、それを隠した。
 次に勇太が目隠しをし、マリアがメモを書いてオーナーに渡す。
 これもまた、封筒に隠した。

 オーナー:「それじゃキミ、この封筒に書かれている飲み物を持って来てくれ」
 使い魔:「かしこまりました」

 メモを使い魔に渡すオーナー。
 使い魔はドリンクバーに向かった。
 互いに魔法の杖を構える魔道士2人。

 使い魔:「お待たせしました。こちら、稲生様からマリア様へ、『紅茶のダージリンとアールグレイのブレンド』でございます」
 マリア:「……!!」
 使い魔:「こちら、マリア様から勇太様へ、牛乳でございます」
 オーナー:「如何でしょうか?」
 マリア:「……正解だ」
 勇太:「やっと……本物のマリアだ……」
 オーナー:「どうして正解なのですか?」
 勇太:「マリアは屋敷では、いつもアールグレイとダージリンのブレンドを飲んでいるんです。朝だけですけどね。変な味になると思いますけど、それが却って目が覚めて良いと言うんです」
 オーナー:「マリアさんは?」
 マリア:「確かに勇太は朝、よくコーヒーを飲んでいます。私のメイド人形はその辺忠実ですので、素直にコーヒーを持って行くのですが、今回は『私が持って行くとしたら』ですよね?そしたら私は、牛乳を持って行きます。前々から言ってたんです。『コーヒーばっかり飲んでないで、たまには牛乳でも飲んで身長を伸ばせ』って」
 勇太:「僕は牛乳が苦手だから……」
 オーナー:「お互い、本物ということで宜しいですね。おめでとうございます」
 勇太:「参りましたよ。マリアを部屋に迎えに行ったら偽者だったし、エレベーターで会ったのも偽者だったし……。これで、レストランにいるのも偽者だったらどうしようと思いましたよ」
 オーナー:「しびれを切らした“魔の者”が、実力行使に出てきているということですね。気をつけましょう」

 こうして2人の魔道士は、ようやく朝食に有りつけたのである。
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“大魔道師の弟子” 「ワンスターホテルの一夜」 2

2022-07-24 21:52:19 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月13日22:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル1Fロビー]

 最近の資料を読んでみて分かったのは、魔界王国アルカディアは隣国のミッドガード共和国との停戦条約を締結し、復興に向けて着々と準備が進められているということだった。
 ようやく復興に向けて進み出す矢先に、日本の安倍元総理が暗殺されて、遠い親戚の安倍春明首相も悲しみに暮れている……という所までは分かった。
 実際の所は、やはり魔王城もしくは政権与党の魔界共和党の本部に行かないことには分からないだろう。
 マリアは水晶玉を取り出し、これでイリーナとの交信を試みた。

 マリア:「師匠、こちらマリアンナです。応答願います。こちらマリアンナ、応答願います」
 エレーナ:「こいつの水晶玉交信、無線の通信と同じなんだぜ?」
 勇太:「そうだよねぇ……」
 マリア:「うるさい!……こちらマリアンナです。応答願います!」

 だが、いくら呼び掛けても、イリーナが弟子との通信に応じることはなかった。

 マリア:「師匠に何かあったのか?」
 エレーナ:「……か、もしくは、“魔の者”の通信妨害が入っているかだな」
 勇太:「僕のスマホは、普通に電波入るけど……。普通の電話は?」
 オーナー:「……は、キャンセルでございますか。……はい。大変残念ですが、この天候では致し方ございませんね。……はい。それでは、またのご利用をお待ちしております。……はい」

 フロントにいるオーナーが、キャンセルの電話を受けている。
 ……ので、電話線は無事のようである。

 勇太:「水晶玉の通信だけ妨害されてるのかな?」

 と、今度はエレーナの水晶玉が光る。

 エレーナ:「はい、ご利用ありがとうございます。“エレーナの魔女宅”です」

 エレーナ、副業で『魔女の宅急便』をやっているのだが、どうやらそこの顧客からだそうだ。

 エレーナ:「……はい、かしこまりました。……はい、それでは後ほど……はい」

 通信を切ると、また別の所から着信がある。

 エレーナ:「おう、マルコ組のベッキーか。何の用よ?あ?……はあ!?借金来月まで待ってくれだ!?フザけんな!テメェの魔法石、全部差し押さえんぞ、コラ!!」
 勇太:「怖っ!?」
 オーナー:「エレーナ!お客様の前で、借金の取り立てをするな!」

 さすがにオーナーに怒られるエレーナ。
 しかし、エレーナの水晶玉通信は異常無いようだ。
 ということは……。

 マリア:「やはり、師匠に何かあったのだろうか?」
 勇太:「試しに、他の魔道士に連絡してみたら?それでダメなら、“魔の者”の仕業だよ」
 マリア:「うーむ……」
 勇太:「ほら、ルーシーとかどう?」
 マリア:「ルーシーか……」

 マリアは試しにルーシーと通信を取ってみた。
 すると……。

 ルーシー:「おおーっ!マリアンナ、久しぶり~!!」

 水晶玉の向こうで満面の笑みを浮かべるルーシーの姿があった。
 これが直面であったら、欧米人らしく、互いにハグを交わすところだろう。

 マリア:「この前、勇太と新幹線乗ったぞ!」

 と、相手がルーシーならではの会話をする。

 エレーナ:「新幹線乗ったのか?」
 勇太:「うん。上越新幹線」
 エレーナ:「上越新幹線?こりゃまたマイナーな新幹線に乗ったもんだぜ」
 勇太:「“魔の者”からの監視を逃れる為の作戦なの。だからしょうがない」
 エレーナ:「そういうもんか」
 勇太:「そういうもんだよ」
 マリア:「勇太、ルーシーが来日したら、また新幹線とロマンスカーに乗せて欲しいと言ってる」
 勇太:「小田急ロマンスカーね。いいよ」
 エレーナ:「コロナ前、乗ったなー?」
 勇太:「そうだね。あの時は50000系だったか。だけどもう廃車になったから、また別の車両に乗ることになりそうだ」
 エレーナ:「色々とバリエーションがあるんだろうから、他のにも乗せてやると喜ぶだろうな」
 勇太:「そうかね」
 エレーナ:「因みに『ロマンスカー』は日本語だから、英語には訳せないぜ。エキゾチックな響きが、またいいんじゃないか」
 勇太:「あれ、和製英語だったのか」

 しばらくルーシーと話していたマリアだったが、ようやく話が終わった。

 マリア:「See you!bye!」
 エレーナ:「……マリアンナの水晶玉じゃなく、イリーナ先生の水晶玉がヤバいんじゃないか?」
 勇太:「と、いうことは……」
 マリア:「師匠、大丈夫だろうか?」
 エレーナ:「グランドマスターは殺しても死なないのが特徴だから、大丈夫なんじゃね?実はしれっとチェックインしてたりして?」
 オーナー:「今日の宿泊者名簿には無いね」
 エレーナ:「魔界でしれっと会えるんじゃね?」
 マリア:「一応、師匠は前そう言ってた」
 エレーナ:「ほらな。そこまで心配しなくても大丈夫だぜ」
 オーナー:「その通りだよ。とにかく、今日はもう休んで、明日に備えた方がいい。隣のレストラン、明日は予定通り、モーニングを営業するそうだからね」
 クロ:「あそこのカラス共、生意気で嫌いだニャ」
 勇太:「まあ、ネコとカラスは縄張りが被ってるからねぇ……」

 野良猫とカラスが、ゴミ集積場で餌の取り合いをしているのは日常茶飯事。
 作者達、警備員もビルの裏庭に巣を作ったカラスに襲撃されて困ったものだが、いつの間にか住み着いた野良猫が撃退してくれて助かった。
 具体的には親ガラスが留守の間、巣に侵入したネコが卵と雛を食い漁ったのである。
 正法信徒たる作者に怨嫉すると罰が当たるのは、何も人間だけではないらしい。

[同日22:30.天候:雨 同ホテル3F]

 エレベーターで客室のフロアの3階に上がる。

 マリア:「それじゃ勇太、おやすみ。明日は7時起きね?」
 勇太:「う、うん。あのさ、マリア」
 マリア:「なに?部屋なら行かないよ」
 勇太:「そっかぁ……」
 マリア:「今は“魔の者”に集中監視されているところだし、師匠のことも心配だ。明日魔界に行くのに、今はイチャイチャできないよ」
 勇太:「そうだよね。ゴメン」
 マリア:「いいよ。落ち着いたら、またゆっくり……ね」
 勇太:「うん」
 マリア:「それじゃ、おやすみ」
 勇太:「おやすみ」

 マリアは鍵を開けて、自分の部屋に入った。
 中に入ると、鍵を掛ける。

 マリア:「今度はバスタブに浸かるか」

 魔界ではバスタブに浸かれるかどうか分からない。
 王都アルカディアシティ以外の地方の市町村では、宿屋に泊まる時、風呂付きは追加料金を支払わないといけないくらいだ。
 なので、今のうちに浸かっておこうと思った。
 もっとも、安いビジネスホテルのバスタブなので、けして広いことはないのだが。
 お湯と水を両方出して、バスタブに湯に張る。
 溜まるまでの間、マリアはテレビを点けて時間を潰すことにした。
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“大魔道師の弟子” 「ワンスターホテルの一夜」

2022-07-24 17:19:54 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月13日18:00.天候:雨 東京都江東区森下 ワンスターホテル3F客室]

 マリアの部屋の電話が鳴る。
 それでマリアは目を覚ました。
 起き上がって、ライティングデスクの上にある電話の受話器を取る。

 マリア:「Hello...?」
 勇太:「マリア、起きたかい?そろそろ夕食の時間だけど……」
 マリア:「Ah...あ、そうか」

 夕食の間まで昼寝していたことを忘れていた。
 今、もう夕食の時間だ。

 マリア:「分かった。ちょっと着替えて準備するから待ってて」

 そう言ってマリアは電話を切った。
 外から相変わらず雨の音が聞こえる。
 その事は特に気に留めもせず、バスルームに向かう。
 用を足したり、化粧直しをしたり、着替えたりしているうちに30分くらいは経つ。

 マリア:「お待たせ」

 マリアは部屋を出ると、隣の勇太の部屋のドアをノックした。

 勇太:「それじゃ、行こう」

 ホテルの中を移動するだけだというのに、ローブを羽織り、魔法の杖を持っているということは、あくまでも油断しないことの現れである。
 エレベーターに乗って、1階まで降りる。
 1階で降りると、目の前にロビーがあるのだが……。

 エレーナ:「あー、もう!サイアクだぜ!」

 と、フロントにいるエレーナが叫んでいた。

 勇太:「何があったの?」

 エレーナ:「おっ、稲生氏。“魔の者”の嫌がらせのせいで、キャンセル続出だぜ。とんだ営業妨害だぜ!」
 勇太:「あらま!」

 外は相変わらずの集中豪雨だ。
 交通機関にも影響が出ているだろうから、宿泊客のキャンセルが出てもおかしくはないが……。

 エレーナ:「こうなったら、オマエから更に料金徴収……」
 マリア:「誰が払うか!……“魔の者”のせいだって分かってるんだから、オマエがぶっ飛ばしに行けばいいだろう?」
 エレーナ:「フロントを放り出して、ぶっ飛ばしには行けないんだぜ」
 マリア:「後で行けばいいだろう。ほら勇太、行こう」
 勇太:「う、うん」

 2人はレストラン“マジックスター”に繋がる通路を進んだ。
 そのレストランは、エレーナの先輩が経営するレストランである。
 エレーナの所属するポーリン組は、魔法薬やそれに準じた料理を研究する部門であり、そこのOGであるキャサリンが魔法料理を出していた。
 もっとも、表向きには創作料理店ということになっている。

 使い魔:「いらっしゃいませー」

 店内に入ると、何組かの先客が既に食事を楽しんでいた。
 店員は全員、浅黒い肌をした女性ばかり。
 それもそのはず。
 キャサリンの使い魔はカラスである為、それを擬人化させると黒い肌の者となるわけだ。
 しかも全員が雌鳥である。
 尚、猫とカラスは基本的に相性が悪い為、このカラスの使い魔がホテル側に行くことは無いし、エレーナの使い魔の黒猫がレストランに行くことも無い。

 使い魔:「こちらへどうぞ」
 勇太:「どうも」

 テーブル席に座って、メニューを開く。

 勇太:「マリア、どうする?」
 マリア:「オススメ料理にしよう」
 勇太:「『チキンステーキ 三色のハーブ添え』か」

 カラスの使い魔がいるのにチキン料理を出して良いのかと思うが、そもそもカラスだって他の鳥類を襲って食べたりするのだから問題なし。

 勇太:「飲み物はどうする?」
 マリア:「明日は魔界なんだから、酒はちょっと……」
 勇太:「一杯だけにしたら?」
 マリア:「一杯だけね」

 『店長のオススメ料理』を注文する勇太達。
 最初にグラスビールと赤のグラスワインが運ばれて来た。

 勇太:「それじゃ、明日に備えて乾杯」
 マリア:「乾杯」

 店内には、カウンター席の上にテレビが設置されている。
 そこでニュースをやっていた。

〔「速報です。先ほど東京23区東部全域に、大雨、雷、洪水警報が発令されました。東京23区東部全域に、大雨、雷、洪水警報が発令されました。荒川や江戸川など、河川が氾濫する恐れがあります。川の近くにお住いの方は、十分にご注意ください。また、落雷による停電なども想定されます。……〕

 勇太:「何だか凄いことになってるねぇ……」
 マリア:「“魔の者”が1番悪いんだけど、ここに滞在している私達が狙われてるわけだから、私達にも少しは責任あるなぁ……」
 勇太:「本当は、急いで魔界に行った方がいいだろうにね」
 マリア:「全くだよ」

 魔界の穴の使用料は、このホテルに宿泊することである。
 なので、チェックアウトするまで使用できない。

 勇太:「魔界はどうなってるんだろう?」
 マリア:「食べ終わったら、エレーナに聞けばいいよ。あと、ロビーに『アルカディアタイムス』とかあったし」
 勇太:「向こうも戦争で疲弊しているだろうに、新聞はちゃんとあるんだねぇ……」
 マリア:「そりゃそうだよ」

[同日20:00.天候:雨 同ホテル1Fロビー]

 食事を終えて、再びホテルに戻る。
 レストランはあくまで独立したテナントという扱いになっている為、外からも出入りできる。
 幸いにしてホテルの中からも行き来できるので、ホテルの外に出なくて済んだ。
 このレストランは、都合もう1度利用することになる。

 オーナー:「あっ、稲生さん、マリアさん、いらっしゃい」

 ロビーに行くと、オーナーがいた。
 レインコートを着て、土嚢を持っている。

 勇太:「オーナー、何をされてるんですか?」
 オーナー:「洪水警報が発令された上に、強風注意報まで出ましたからね。一応、土嚢を用意して、浸水しないように警戒してるんです」
 勇太:「あー、そういえば……」

 それまではただ単に雨が降る音だけが響いていたのだが、今では風の音や、それに煽られた雨がバチバチと窓ガラスに当たる音が聞こえて来た。
 まるで台風が直撃したかのようだ。

 マリア:「“魔の者”、ここまでやるか?」
 オーナー:「『ここまでしか』できないか、或いは『本当はもっとできる』のに、『あえてしない』のかと考えているところです」
 勇太:「あ、そういう考えもできますもんね」
 オーナー:「ええ。エレーナが昔、ニューヨークで“魔の者”と戦う前夜も嵐だったそうですし、それと状況が似てるんですよ」
 勇太:「そうなんですか。その時、エレーナはどうしていたんでしょう?」
 オーナー:「宿泊先のホテルで、じっとしていたらしいですね。こうやって“魔の者”が上空で待ち構えているのに、ホウキで空を飛んだりできませんから」
 勇太:「でしょうねぇ……」
 マリア:「ちょっと待って。アメリカは“魔の者”が堂々と居られるはずなのに、嵐を起こすだけだったのか?」
 オーナー:「上手いこと隠れていたので、“魔の者”が焙り出しをしようとしていたのではないかということです」
 勇太:「本当に火を起こして焙り出しをするのならともかく、逆に嵐じゃ、ずっと閉じこもっているだけだと思うんですけどね」
 オーナー:「ところが実際に近くに落雷が起きて、それで火災が起きたりしたそうですから、それが目的なのかもしれません」
 勇太:「何か、ズレてるなぁ……」
 マリア:「そこは人間とは違うってことなんだろうな」

 マリアはソファに座ると、マガジンラックの中から“アルカディアタイムス”や、魔界の情報誌を取り出して、今の魔界の状況について確認した。
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