報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「“魔の者”との駆け引き」

2022-07-14 20:11:49 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月10日14:03.天候:雨 埼玉県さいたま市大宮区 JR大宮駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、大宮です。東北新幹線、山形新幹線、秋田新幹線、北海道新幹線、宇都宮線、埼京線、川越線、京浜東北線、東武アーバンパークラインとニューシャトルはお乗り換えです。お降りの際はお忘れ物の無いよう、お支度ください。大宮の次は、上野に止まります〕

 新幹線が新潟県を出る頃、雨が降り出してきた。
 しかも、今は雷付きだ。
 どうやら、“魔の者”に新幹線に乗ったことがバレたらしい。
 新幹線を止めんとばかりに雷を鳴らしてくるが、どうも海外から操作しているらしく、ネット回線と違ってインフラが貧弱なのか上手いこと雷を落とすことができないらしい。
 この事から、“魔の者”はやはり、日本国内に入ることができないようだ。

〔「大宮でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。大宮駅13番線に入ります。お出口は、右側です。お降りの際、お忘れ物の無いよう、ご注意ください。本日、傘のお忘れ物、多くなっております。よくお確かめください」〕

 列車は雨に濡れながら、大宮駅、新幹線上り副線ホームに入線した。
 本線ホームの14番線は、東北新幹線系統が使用する。

〔「ご乗車ありがとうございました。大宮ぁ、大宮です。車内にお忘れ物の無いよう、お降りください。13番線に到着の電車は、上越新幹線“とき”320号、東京行きです。次は、上野に止まります」〕

 勇太達はここで列車を降りた。
 停車時間が短い為か、エスカレーターに乗る頃には既に発車ベルが鳴り響いている。
 大宮駅の在来線ホームは全て発車メロディ(回送列車を除く)だが、新幹線ホームはベルである。

 勇太:「参ったなぁ……。あちこちに影響が出始めちゃってる」

 “魔の者”が下手な鉄砲を数撃っているせいで、地方の線区に影響が出始めていた。

 『上越線【運転見合わせ】 上越線は大雨の影響により、○○~××間で運転を見合わせています。運転再開のメドは立っていません』『吾妻線【運転見合わせ】 吾妻線は大雨の影響により、渋川~大前間で運転を見合わせております。【以下略】』『信越本線【遅延】 信越本線は大雨の影響により、高崎~横川間で遅れが発生しています』

 マリア:「京浜東北線は?」
 勇太:「通勤電車の方は大丈夫みたい」
 マリア:「油断はできないから、急ごう」
 勇太:「そうだね」

 2人は新幹線改札口を出ると、在来線コンコースに出た。
 中距離電車の方にも少なからず影響は出ているのか、発車標を見ると、『遅れ5分』とか『遅れ10分』とか出ている。
 そこまで長い距離を走るわけではない通勤電車、埼京線や京浜東北線の方には影響は無いみたいだが、川越線もそろそろヤバいかもしれない。
 そうなると、乗り入れをしている埼京線にも影響が出ることとなる。
 2人は急ぎ足で、京浜東北線のホームに向かった。

 勇太:「あれ?」

 京浜東北線のホームに降りると、雨が止んでいた。
 しかも、雲間から暑い夏の日差しが覗き始めている。

 勇太:「晴れたよ!?」
 マリア:「どうやら私達がこの駅で降りたものだから、『上京するわけではない』と安心したのかもしれないな。それか、打ち止めになったか」
 勇太:「そうなんだ」

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。1番線に停車中の電車は、14時19分発、快速、大船行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕

 とはいうものの、これから乗り換える京浜東北線。
 反対側の終点まで走り通す電車であるが、大丈夫だろうか?
 南浦和駅までは前の車両ほど混んでいるので、なるべく後ろの車両……最後尾の車両に乗り込んだ。

〔この電車は京浜東北線、快速、大船行きです〕
〔This is the Keihin-Tohoku line rapid service train for Ofuna.〕

 自動放送が流れた後、車掌が乗務員室と客室との間のドアを少しだけ開ける。

〔「ご案内致します。この電車は14時19分発、京浜東北線、南浦和、川口、王子、田端、上野、東京方面、根岸線直通、快速、大船行きです。発車までご乗車になり、お待ちください」〕

 スピーカーの音量を確認していたようだ。
 しかし、車掌がドアを閉めると同時に、せっかく顔を出していた太陽がまた厚い雲に覆われた。

 マリア:「ちっ、まだ監視してやがるのか」

 マリアは舌打ちした。
 どうやら、稲生達がこの電車に乗り換えたことに気づいたらしい。
 もちろん勇太達は蕨駅で降りるつもりだが、電車自体は都内へ向かうわけだから……。

[同日14:19.天候:雨 JR京浜東北線1417B電車10号車内]

 2番線に、次の折り返し電車が到着する。
 それを合図にするかのように、発車メロディが流れ始めた。
 2番線のとは違い、随分と大人しめな曲調である。
 さいたま市の市歌“希望(ゆめ)のまち”から取っているらしい。
 原曲自体は、もっと元気な歌なのであるが……。

〔1番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車は1回でドアを閉めることができた。
 駆け込み乗車は無かったということだ。
 駆け込もうとして失敗した客はいたかもしれないが。
 大宮駅の京浜東北線ホームには、まだホームドアが無い。
 なので、電車のドアが閉まり切れば、すぐに発車する。
 尚、設置準備はされているので、そのうち設置するつもりではあるようだ。

〔JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は京浜東北線、快速、大船行きです。停車駅は田端までの各駅と、上野、御徒町、秋葉原、神田、東京、浜松町、浜松町から先の各駅です。次はさいたま新都心、さいたま新都心。お出口は、右側です〕

 電車が上屋のある駅構内から外に出ると、再び降り出して来た大雨に当たった。
 雨が止んだからと、換気の為に窓を開けた乗客がいたが、これではまた閉めざるを得なかった。

 勇太:「まあ、僕達が降りたら、また止むよ」
 マリア:「そうだな」

 “魔の者”に、今日の旅の目的が帰省であると分からせれば良いのだ。
 だが結局、猜疑心の強い“魔の者”は、勇太達が蕨駅の外に出るまで、雷雨を降らせ続けたのである。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“大魔道師の弟子” 「“ときライナー”から“とき”へ」

2022-07-14 16:04:03 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月10日11:50.天候:曇 新潟県新潟市中央区花園 JR新潟駅]

 バスは北陸自動車道を降りると、新潟の市街地に向かった。
 街中に向かうに連れて車の量が増えて来るのは当たり前だとしても、何だかパトカーの姿が目立った。
 そういえば糸魚川駅でも、バスの横をパトカーがすれ違ったような気がする。
 マリアがそのことについて口にしようとすると、先に勇太の方が口を開いた。

 勇太:「今日は選挙の日だから、随分と警察が出てるね」
 マリア:「……大統領選?」
 勇太:「いや、違うよ。まあ、何だかそれ並に警戒が厳重だけれども……。参議院議員選挙。アメリカとかでは、上院に値する国会議員の選挙だね」
 マリア:「なるほど。上院議員の選挙ね。それでこんな警察が……」
 勇太:「いや、普段はそれでもそこまでいないんだけど、やっぱり安倍元総理が殺されたことが大きいんじゃないかなぁ?」
 マリア:「あ、そうか」
 勇太:「何しろ、選挙の応援演説の時に殺されたわけだからね」
 マリア:「そういうことね」

 バスは15分遅れで、終点の新潟駅前に到着した。
 新潟駅の万代口の方である。

 マリア:「遅れたみたいだけど、大丈夫?」
 勇太:「もう全然!想定内!」

 大した渋滞などは無かったが、ゲリラ豪雨による減速運転や、トイレ休憩で時間を取られたからだろうか。
 バスが到着したのは、駅前の通りであって、ロータリー内ではない。

 勇太:「ギリギリな方が、“魔の者”に隙を与えないからいいんです」
 マリア:「そういうことか」

 新潟市内も曇ってはいたが、こちらではまだ雨が降っていないようだ。
 路面が濡れていなかったからだ。
 “魔の者”も、少しは油断し始めただろうか。
 勇太達の目的地は知らないが、どうやら上京ではないみたいだぞ……と。

 マリア:「そろそろお昼の時間だけど……」
 勇太:「駅弁買って行こう」
 マリア:「それはいい!」

 2人は駅構内に入った。

 勇太:「それじゃ、キップを渡すね」

 勇太は持っていた新幹線のキップをマリアに渡した。
 事前に白馬駅で購入したものである。

 マリア:「ありがとう」

 改札口に入る前に、駅弁と土産を購入しておく。

 マリア:「ここでお土産を?」
 勇太:「そう。さっきまで、買うヒマ無かったからね」
 マリア:「それは確かに」

 また、買えたとしても、土産物店が無かった。

 勇太:「駅弁は何にする?」
 マリア:「私は肉系がいい」
 勇太:「そうかぁ……。僕はどうしようかな……」

 と、勇太、1つの駅弁にロックオン!

 勇太:「“SLばんえつ物語弁当”かぁ……」
 マリア:「今から乗るわけじゃないのに!?……ま、まさか、今から乗るの!?」
 勇太:「い、いや、乗らないよ。こ、これも“魔の者”の目を誤魔化す為だ!これを買うことで、今からそのSLに乗るかもしれないと欺いておくんだ!」
 マリア:「びっくりしたぁ……。せっかくの新幹線のチケットがムダになるところだった……」
 勇太:「そ、そんなことないよ。ハハハ……」

 マリアは“村上牛しぐれ弁当”購入した。

 マリア:「本当に色々あって面白い」
 勇太:「日本では食堂車は衰退してしまったけど、駅弁は盛り上がってるんだ」
 
 これは本当、外国とは逆である。
 外国の長距離列車では、未だに食堂車は連結されているが、しかし駅弁は無い(売店や車内販売でサンドイッチなどが買える程度)。
 これだけ駅弁が充実しているのは、日本くらいのものではないだろうか。
 しかもこれだけに飽き足らず、航空部門では空弁なるものもある。
 国際線では機内食があるので必要無いのだが、国内線では(クラスやプラン、航空会社にもよるが)機内食は基本的には無い為、空弁文化が発達しつつある。
 が、これも外国の空港には無い(やはりサンドイッチやカップ麺くらいしか無い)。

[同日12:20.天候:曇 同駅新幹線ホーム→上越新幹線320C列車10号車内]

 勇太:「何だか不思議な感じだなぁ……」

 勇太は在来線ホームの方を見て言った。
 新潟駅では在来線ホームの嵩上げが行われ、新幹線ホームと同じ高さとなった。
 その為、新幹線ホーム11番線と在来線ホーム5番線が繋がり、両者は乗り換え改札を行き来するだけで乗り換えが可能となった。
 もっとも、勇太達がいるのは13番線であるが。

 勇太:「在来線ホームが同じ目線にあるなんて……」

〔「お待たせ致しました。12時20分発、上越新幹線“とき”320号、東京行き、まもなく発車致します」〕

 2人は2人席に座り、駅弁に箸を付けていた。
 車両は北陸新幹線で運用されている物と同じ、E7系である。
 イリーナがいないので、今回は普通車指定席である。
 ホームから、発車ベルの音が聞こえて来た。
 新潟駅の在来線ホームはどうなのかは不明だが、新幹線ホームは電子ベルである。

〔13番線から、“とき”320号、東京行きが発車致します。次は、燕三条に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 マリア:「燕三条?さっき、バスで通らなかった?」
 勇太:「そう。通ったよ。で、バスの窓からも新幹線の高架橋が見えたでしょ?これからそこを通るんだよ」
 マリア:「少し戻る形?」
 勇太:「そう。“魔の者”を誤魔化すには、いいアイディアでしょ?」
 マリア:「はー、なるほど……」

 けたたましい客終合図のブザーも聞こえて来て、ドアが止まる。
 それから列車は、定刻通りに新潟駅を発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この列車は、上越新幹線“とき”号、東京行きです。次は、燕三条に止まります。……〕

 東北新幹線系統のものとは違う曲の車内チャイムが流れる。
 違うのはそれだけで、自動放送の声優は変わらない。

 勇太:「そうだ。母さんに、LINEを送っておこう。『今から新幹線に乗った』って」
 マリア:「大丈夫?“魔の者”にバレたりしない?」
 勇太:「だからこそ、好都合だよ。幸い僕の実家は埼玉にある。都内に入る前に降りることになるね。それを見た“魔の者”は、『何だ、上京じゃなかったのか』と安心してくれるよ。“魔の者”は、僕達が都内に行かれるのを警戒してるんでしょ?」
 マリア:「都内に行くこと自体はどうでもいいだろうけど、要はそこにある魔界の穴から、魔界に行かれることが不都合らしいね」
 勇太:「で、あるなら、尚更僕達が埼玉県内で下車して実家に向かうことは、何の問題視もしないはずだよ。ある意味、今日中にワンスターホテルに行けなくて良かったかもね」
 マリア:「勇太の実家に何日か泊まらせてもらえれば、尚更“魔の者”も油断するだろう。さすが勇太」

 マリアは笑みを浮かべて頷いた。

 勇太:「いやあ、何の何の」

 勇太は少し得意気になった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする