報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「安倍元首相暗殺の波紋」

2022-07-08 22:12:32 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月8日12:00.天候:晴 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 稲生勇太:「夏のお盆ねぇ……。帰省したいのはやまやまだけど、多分まだマリアと結婚できそうにないんだ……。まあ、決まったらまた連絡するよ」

 昼食の時間になり、勇太は屋敷東側2階の自室から、西側1階の大食堂へ向かった。
 その途中、手持ちのスマホに着信があり、画面を見ると母親の佳子からだった。
 電話に出ると、夏休み……お盆の帰省について聞かれた。

 勇太:「……うん、まあ、そうなんだけどね」

 『別に、結婚の報告ができるまで帰ってくるななんて、昭和時代の事は言わないから帰って来い』と言われたらしい。

 勇太:「先生もお忙しくて、なかなか屋敷に帰って来られないんだ。こういう時、基本、弟子達は拠点に待機していることになっているからね。……まあ、うちの先生は優しいから、『待機』の定義を、『日本国内』にしてくれたけどね。先生はロシア人だから、ロシアから見れば日本なんて小屋みたいなものだし」

 但し、ロシア領土のうち、何割が居住不可となっているかは【お察しください】。

 勇太:「……うん、分かったから。また分かったら、連絡するから。それじゃ」

 電話を切る頃、勇太は大食堂入口のドアの前まで来ていた。

 勇太:「全く……」

 そのドアを開けると、中からはローストビーフの匂いがした。
 どうやら、今日の昼食はローストビーフのサンドイッチらしい。

 勇太:「どうも、遅くなりまして。いやいや、悪いタイミングで母さんから電話……ん?」

 その時、マリアが食堂内にあるテレビに釘付けになっていた。

 勇太:「どうしたの、マリア?」
 マリア:「……大変なニュースが流れてる」
 勇太:「! まさか、ついにロシアが核兵器を使ったの!?」
 マリア:「いや、ロシアじゃない。日本だよ」
 勇太:「プーチン大統領が破れかぶれになって、日本に核ミサイルを発射した!?」
 マリア:「だから違うって。これを見て!」
 勇太:「ええ?」

 勇太もテレビを観る。

〔「……繰り返しお伝えしているように、今日午前11時半頃、奈良県の大和西大寺駅前で選挙演説をしていた自民党の安倍元総理が、演説中、男に背後から銃で撃たれ、心肺停止の状態です」〕

 勇太:「は!?」

〔「犯人と思われる男は、すぐその場で取り押さえられ、殺人未遂の現行犯で逮捕されました。尚、安倍元総理についての容体は不明です。……」〕

 勇太:「こ、これは一体……どういうこと?」

〔「繰り返し……」ザザ……「……県……で、自民……」ザザザ……」〕

 勇太:「な、何だ!?」

 急にテレビの映りが悪くなった。

 勇太:「何だよ、こんな時に?!」

 だが、砂嵐となった画面の向こうから、血文字で書かれた日本語が浮き上がった。

 『極東の島国に隠れていれば、安全だと思ったのかい』

 マリア:「“魔の者”……!!」
 勇太:「こ、これは……!?」

 血文字は消えて、また画面は先ほどのニュース映像に戻った。
 と、マリアの水晶玉が光る。

 マリア:「はい、マリアンナです」
 イリーナ:「あっ、私よ。今、ニュースとか観てる?」
 マリア:「日本の安倍元首相が暗殺されたそうですね?」
 イリーナ:「まだ死亡確認はされていないけど、私の予知では、恐らく……無理ね」
 マリア:「そのことですが、今しがた、“魔の者”からと思われる脅迫文が送りつけられました。文言は、『極東の島国に隠れていれば、安全だと思ったのかい』です」
 イリーナ:「フン。東日本大震災を引き起こした後と同じセリフを吐いたわけね。万単位の人間を一度に殺せる力を持っているくせに、元総理とはいえ、1人だけ殺して得意気になってるなんて、奴もだいぶ落ちぶれたものだわ」
 マリア:「“魔の者”の目的は何なのでしょう?はっきり言って私は、安倍元総理を殆ど知りません」
 イリーナ:「恐らく……目的は魔界の揺さぶりね」
 マリア:「魔界?……あっ!」
 イリーナ:「アルカディアの安倍春明首相は、秘密だけど、安倍晋三元総理の遠い親戚ということになってて、互いに面識があるわ。その親戚を“魔の者”に殺されて、しかも日本人達は誰も守ってくれなかったと知ったら、どうなるかしらね?」
 マリア:「日本政府に断固抗議しますか」
 イリーナ:「抗議だけなら、まだマシかもしれない。最悪、90年代のオカルトブームが再来することになるわよ。つまり……」
 マリア:「あちこちで魔界の穴が開き、魔界から侵入したモンスター達が日本国を恐怖に陥れる」
 イリーナ:「そういうこと」
 勇太:「東京中央学園が、再びオカルト学園と化すわけですか……」
 マリア:「私達は魔界に行った方が良いでしょうか?」
 イリーナ:「そうね……。まずは、静観しておいた方がいいわ。そうね……。まずは1週間。その間に、あなた達は東京へ移動しなさい」
 勇太:「東京ですか?」
 イリーナ:「東京にも、魔界の出入口はあるでしょう?」
 勇太&マリア:「ワンスターホテル!」
 イリーナ:「“魔の者”に動きを悟られないよう、いつもとは違うルートで上京した方がいいかもしれないわ」
 勇太:「なるほど。分かりました」
 マリア:「師匠はこちらに戻られないのですか?」
 イリーナ:「あいにくと、ロシア情勢が大変で、離れられそうにないのよ。ロシアにも魔界の穴はあるから、そこから魔界で合流できるかもしれないわね」
 勇太:「分かりました。それでは僕達は後日、ワンスターホテルに移動すればいいんですね?」
 イリーナ:「そう。費用に関しては、私のカードを自由に使っていいから」
 勇太:「分かりました」

 ここで、通話が切れる。

 勇太:「な、何だか大変なことになったね?」
 マリア:「ここへ来て、魔界の安倍首相の親戚が暗殺されるとは……」
 勇太:「魔界の安倍首相は、本当に日本を攻撃するでしょうか?」
 マリア:「師匠も言ってたけど、軽くて抗議、重くてワザと魔界の穴を開ける……かな」

 魔界の穴をわざとザル状態にすることにより、極悪不良妖怪がそこをすり抜けて人間界に侵出するのを黙認するのである。
 20世紀末のオカルトブームに多発していた不可解な殺人事件や行方不明事件が、令和の今、再び頻発するようになるのである。
 日蓮正宗においては創価学会が破門された時期であったが、今度はどこが破門されるのであろうか?

 勇太:「さすがにそれはマズい!」
 マリア:「ねぇ」
 勇太:「ちょ、ちょっと僕、白馬駅に行って、電車のキップを買って来ます」
 マリア:「私も行く。まずは、昼食を済ませてからだ」

 もっとも、喉を通りにくい昼食ではあったが。
コメント (5)
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