[7月22日21:30.天候:雨 東京都港区海岸 ゆりかもめ竹芝駅→東京港竹芝桟橋]
〔まもなく竹芝、竹芝。川崎重工東京本社前です。お出口は、左側です〕
私達を乗せた“ゆりかもめ”は、無事に竹芝駅に到着した。
この辺りまで来ると、帰宅ラッシュで混んでいる。
〔竹芝、竹芝。2番線は、新橋行きです〕
電車を降りて、エスカレーターに向かう。
愛原:「レインボーブリッジ、どうだった?」
リサ:「あのスピードなら、ネメシスに追い付かれそう」
愛原:「そこなんだ!」
“ゆりかもめ”の最高時速は60キロ。
レインボーブリッジは道路としても線形良いので、下層部を走る一般道でも、自動車はもっと高速で走る。
その為、高橋曰く、『サツのボーナス商戦っス』とのこと。
つまり、スピード違反の取り締まりをしやすいので、警察官も手柄を立てやすく、それがボーナスに反映されているという嫌味だろうか。
さすがは元暴走族だ。
愛原:「ネメシスってそんなに足が速いんだ」
リサ:「タイラント君がそう言ってた」
愛原:「まあ、日本にはいないと思うけど、もし襲って来たら、リサよろしくな?」
リサ:「ん、任せて!八つ裂き、肉塊、塵芥にする!」
愛原:「う、うん。実に頼もしい」
駅を出て竹芝客船ターミナルに向かう。
愛原:「それじゃ、乗船券を買ってくる」
私は予約番号の書かれたメモ帳を手に、窓口に向かった。
すぐには窓口に行けず、先客が終わるのを待つ必要があった。
窓口の上には、これから乗る客船、橘丸の案内があった。
2等船室はもちろん、1等船室でさえカーペットで雑魚寝のようだぞ?
まあ、1等の方が定員も少なくて、1人当たりのスペースは広く取られているんだろうけど。
果たして斉藤社長は、どこのクラスを予約してくれたんだろう?
まさか、禿頭……もとい、特等なんてことは無いよな?
写真で見る限り、シティホテルのツインルームみたいな部屋だぞ?
係員:「いらっしゃいませ」
愛原:「すいません。今日乗船で予約した者ですが……」
窓口が空き、そこに向かう。
私は予約番号を見せながら言った。
係員:「特1等4名様で御予約の愛原様ですね」
特1等!?
私は窓口の運賃表を見た。
それは特等の次に高い等級であった。
係員:「それでは運賃の方が……」
愛原:「す、すいません。カードで……」
係員:「はい、ありがとうございます」
う、うん、クレカが使えて良かった。
因みに購入したのは片道だけ。
往路はどういった形になるか、高橋と合流しないことには分からないからだ。
八丈島なら、これから乗る船だけでなく、飛行機もある。
しっかり領収証をもらって、後で斉藤社長に請求しないと……。
係員:「それではこちらの乗船票に必要事項を記入してください」
航空チケットのようなものが出されたと思ったら、半券部分に何か記入しないといけないらしい。
そこは航空チケットと違うか。
愛原:「ん?リサと斉藤さんは?」
霧崎:「お手洗いに行かれました」
ロビーのベンチに霧崎さんが1人でいた。
どうやら、荷物の見張りで残っているらしい。
愛原:「乗船票に名前とか、書かないとダメらしいんだ」
霧崎:「それでは私が御嬢様の分まで記入します」
愛原:「ああ、頼むよ」
斉藤さんが絡めば楚々としたメイドさんなのだが、それ以外だとシリアルキラーの様相を見せる。
記入台で私は自分のとリサのを記入した。
それにしても……。
本来は、連休前の夜なのだから、もっとターミナルは賑わってもいいはずだ。
しかし、今はこんなものなのかといったほどに空いている。
伊豆諸島は夏場が観光シーズンのはずだが、コロナ禍で海水浴場がオープンできないというのが大きいらしい。
ガラガラというわけではないのだが、しかし思ったよりも空いている。
私はつい、コロナ禍前のバスタ新宿みたいな感じを想像していただけに、そこは肩透かしといった感じである。
リサ:「先生」
愛原:「ああ、リサ。これ、乗船券な。船に乗る時に、係員にこの乗船券を渡すことになるから、これは1人ずつ持とう」
リサ:「はーい」
斉藤:「父はどこのクラスを予約しましたか?」
愛原:「特1等だそうだ」
斉藤:「ああ。あの2段ベッドの部屋ですね」
斉藤さんは窓口の上の写真を指さした。
確かに写真で見る限り、2段ベッドが左右に設置されていて、奥にテレビや椅子やテーブルが設置されているようだ。
斉藤:「特等じゃなくて申し訳ないです。父がケチったんですね。後で言っておきます」
愛原:「いや、いいよ!俺なんか2等でいいくらいだったのに!」
もし今回の目的が、ただ単に高橋を追い掛けるというだけだったら、そうしていただろう。
奮発しても、まるでブルートレインのB寝台車みたいな構造の特2等といったところか。
愛原:「それに、写真で見る限り、特等は2人部屋っぽいよ。俺達、4人だしな」
斉藤:「それもそうですね」
リサ:「先生、あそこでちょっと買い物してきていい?」
リサはターミナルに併設されているヤマザキショップを指さした。
バスタ新宿にあるのはファミマだが、ここはヤマザキショップらしい。
愛原:「ああ、いいよ」
他にも伊豆諸島のお土産なども扱ったアンテナショップもあるようだ。
愛原:「霧崎さん、ちょっと俺もトイレに行って来る」
霧崎:「どうぞ」
私はトイレに向かった。
表向きは用足しであるが、他にもある。
木村:「もしもし?」
愛原:「ああ、木村君?さっきメッセージくれたよね?」
木村:「あ、はい!」
高橋の友人の木村に電話した。
愛原:「何か情報が?」
木村:「はい。マサのヤツ、八丈島から別の島に渡ったらしいっス」
愛原:「それは青ヶ島かい?」
木村:「いえ、違います」
愛原:「違う?八丈島から、青ヶ島以外に何かあったっけ?八丈小島か?」
木村:「いえ、それとは全く違う別の島です」
私は木村君から初めて聞く島の名前を聞いた。
木村:「俺達も信じられなかったんスけど、どうネットとかで調べても、消去法的にその島しかないんス」
愛原:「そうなのか」
木村:「センセー、探偵じゃないスか。その辺はセンセーの御力で調べてもらって……」
愛原:「分かったよ。ありがとう」
私は電話を切った。
幸い離島なら、港を押さえれば大丈夫だ。
八丈島には空港もあるが、無名な小島に空港があるとは思えない。
つまり、高橋は八丈島のどこかの港からその島に船で渡ったのだ。
これまた幸いなことに、コロナ禍で、そもそも観光客自体が少ない。
ましてや、高橋が渡った島は観光地ではないだろう。
そこで聞き込み調査でもすれば、すぐに見つかると思った。
それにしても高橋、マジで一体何から逃げてるんだろうなぁ……?
〔まもなく竹芝、竹芝。川崎重工東京本社前です。お出口は、左側です〕
私達を乗せた“ゆりかもめ”は、無事に竹芝駅に到着した。
この辺りまで来ると、帰宅ラッシュで混んでいる。
〔竹芝、竹芝。2番線は、新橋行きです〕
電車を降りて、エスカレーターに向かう。
愛原:「レインボーブリッジ、どうだった?」
リサ:「あのスピードなら、ネメシスに追い付かれそう」
愛原:「そこなんだ!」
“ゆりかもめ”の最高時速は60キロ。
レインボーブリッジは道路としても線形良いので、下層部を走る一般道でも、自動車はもっと高速で走る。
その為、高橋曰く、『サツのボーナス商戦っス』とのこと。
つまり、スピード違反の取り締まりをしやすいので、警察官も手柄を立てやすく、それがボーナスに反映されているという嫌味だろうか。
さすがは元暴走族だ。
愛原:「ネメシスってそんなに足が速いんだ」
リサ:「タイラント君がそう言ってた」
愛原:「まあ、日本にはいないと思うけど、もし襲って来たら、リサよろしくな?」
リサ:「ん、任せて!八つ裂き、肉塊、塵芥にする!」
愛原:「う、うん。実に頼もしい」
駅を出て竹芝客船ターミナルに向かう。
愛原:「それじゃ、乗船券を買ってくる」
私は予約番号の書かれたメモ帳を手に、窓口に向かった。
すぐには窓口に行けず、先客が終わるのを待つ必要があった。
窓口の上には、これから乗る客船、橘丸の案内があった。
2等船室はもちろん、1等船室でさえカーペットで雑魚寝のようだぞ?
まあ、1等の方が定員も少なくて、1人当たりのスペースは広く取られているんだろうけど。
果たして斉藤社長は、どこのクラスを予約してくれたんだろう?
まさか、禿頭……もとい、特等なんてことは無いよな?
写真で見る限り、シティホテルのツインルームみたいな部屋だぞ?
係員:「いらっしゃいませ」
愛原:「すいません。今日乗船で予約した者ですが……」
窓口が空き、そこに向かう。
私は予約番号を見せながら言った。
係員:「特1等4名様で御予約の愛原様ですね」
特1等!?
私は窓口の運賃表を見た。
それは特等の次に高い等級であった。
係員:「それでは運賃の方が……」
愛原:「す、すいません。カードで……」
係員:「はい、ありがとうございます」
う、うん、クレカが使えて良かった。
因みに購入したのは片道だけ。
往路はどういった形になるか、高橋と合流しないことには分からないからだ。
八丈島なら、これから乗る船だけでなく、飛行機もある。
しっかり領収証をもらって、後で斉藤社長に請求しないと……。
係員:「それではこちらの乗船票に必要事項を記入してください」
航空チケットのようなものが出されたと思ったら、半券部分に何か記入しないといけないらしい。
そこは航空チケットと違うか。
愛原:「ん?リサと斉藤さんは?」
霧崎:「お手洗いに行かれました」
ロビーのベンチに霧崎さんが1人でいた。
どうやら、荷物の見張りで残っているらしい。
愛原:「乗船票に名前とか、書かないとダメらしいんだ」
霧崎:「それでは私が御嬢様の分まで記入します」
愛原:「ああ、頼むよ」
斉藤さんが絡めば楚々としたメイドさんなのだが、それ以外だとシリアルキラーの様相を見せる。
記入台で私は自分のとリサのを記入した。
それにしても……。
本来は、連休前の夜なのだから、もっとターミナルは賑わってもいいはずだ。
しかし、今はこんなものなのかといったほどに空いている。
伊豆諸島は夏場が観光シーズンのはずだが、コロナ禍で海水浴場がオープンできないというのが大きいらしい。
ガラガラというわけではないのだが、しかし思ったよりも空いている。
私はつい、コロナ禍前のバスタ新宿みたいな感じを想像していただけに、そこは肩透かしといった感じである。
リサ:「先生」
愛原:「ああ、リサ。これ、乗船券な。船に乗る時に、係員にこの乗船券を渡すことになるから、これは1人ずつ持とう」
リサ:「はーい」
斉藤:「父はどこのクラスを予約しましたか?」
愛原:「特1等だそうだ」
斉藤:「ああ。あの2段ベッドの部屋ですね」
斉藤さんは窓口の上の写真を指さした。
確かに写真で見る限り、2段ベッドが左右に設置されていて、奥にテレビや椅子やテーブルが設置されているようだ。
斉藤:「特等じゃなくて申し訳ないです。父がケチったんですね。後で言っておきます」
愛原:「いや、いいよ!俺なんか2等でいいくらいだったのに!」
もし今回の目的が、ただ単に高橋を追い掛けるというだけだったら、そうしていただろう。
奮発しても、まるでブルートレインのB寝台車みたいな構造の特2等といったところか。
愛原:「それに、写真で見る限り、特等は2人部屋っぽいよ。俺達、4人だしな」
斉藤:「それもそうですね」
リサ:「先生、あそこでちょっと買い物してきていい?」
リサはターミナルに併設されているヤマザキショップを指さした。
バスタ新宿にあるのはファミマだが、ここはヤマザキショップらしい。
愛原:「ああ、いいよ」
他にも伊豆諸島のお土産なども扱ったアンテナショップもあるようだ。
愛原:「霧崎さん、ちょっと俺もトイレに行って来る」
霧崎:「どうぞ」
私はトイレに向かった。
表向きは用足しであるが、他にもある。
木村:「もしもし?」
愛原:「ああ、木村君?さっきメッセージくれたよね?」
木村:「あ、はい!」
高橋の友人の木村に電話した。
愛原:「何か情報が?」
木村:「はい。マサのヤツ、八丈島から別の島に渡ったらしいっス」
愛原:「それは青ヶ島かい?」
木村:「いえ、違います」
愛原:「違う?八丈島から、青ヶ島以外に何かあったっけ?八丈小島か?」
木村:「いえ、それとは全く違う別の島です」
私は木村君から初めて聞く島の名前を聞いた。
木村:「俺達も信じられなかったんスけど、どうネットとかで調べても、消去法的にその島しかないんス」
愛原:「そうなのか」
木村:「センセー、探偵じゃないスか。その辺はセンセーの御力で調べてもらって……」
愛原:「分かったよ。ありがとう」
私は電話を切った。
幸い離島なら、港を押さえれば大丈夫だ。
八丈島には空港もあるが、無名な小島に空港があるとは思えない。
つまり、高橋は八丈島のどこかの港からその島に船で渡ったのだ。
これまた幸いなことに、コロナ禍で、そもそも観光客自体が少ない。
ましてや、高橋が渡った島は観光地ではないだろう。
そこで聞き込み調査でもすれば、すぐに見つかると思った。
それにしても高橋、マジで一体何から逃げてるんだろうなぁ……?
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